THIS IS DARKSIDE OF DRUM & BASS #3 ~OUTSIDE~

THIS IS DARKSIDE OF DRUM & BASS

はい、という訳であっという間に最終回となりました。今回はDark DnB周辺の音楽について少し語りたいと思います。
第一回ではヒストリーのお話をしましたが、この順序どおりにDARK DnBを聴くようになったという人は、むしろそんなに多くないかもしれません。
個人的な話ですが私は友人に『Kryptic Minds & Leon Switch – Black Out Vol. 1&2』のCDを聴かせてもらってその時に受けた衝撃がきっかけでこの道を志すようになりましたが、
それ以前はダークなBreakcoreやPsyTranceを聴いていて、Drum & Bassはそんなには聞いていませんでした。
Dark DnBとの出会いに、『これ以上「重い」「ダーク」「激しい」を表現できるエレクトロニックミュージックは他に無い!自分ははこういう音楽をやりたかったんだ!』と思ったのです。
現在ならば、それまでずっとHardcore Technoを聞いていたけどCrossbreedを経てDnBに興味を持った人がいるかもしれません。
逆にSinisterSoulsやBroken Noteの影響でDubstepに興味を持った人もいるかもしれません。
DnBの中で最も特殊でかつアンダーグラウンドな故に、その枠に収まらない多彩な音楽性を持っているのも魅力のひとつ。
今回は是非そのDark DnBの他ジャンルとの繋がりの広さを知って頂きたいと思います。


 

Deep,Minimal DnB / Halfstep

音楽の”ダークさ”にもいろいろと種類と質があります。
Darkstepのダークには激しさが伴うのに対してDeep DnBは文字通り深さ、じわじわとした闇の性質を持ちます。
Halfstepとは、半分のBPMのノリで聞こえるドラムンベースで、例えば180BPMの曲なのに90BPMのHipHopのように聴こえたりします。
Amitというアーティストがその音楽の先駆者で、他多くのプロデューサーもこのスタイルの曲を作っています。
音数が少ないし没入感があるので、むしろ純粋にダークを表現しているのはDarkstepよりこっちじゃないかと言われるとちょっと言い返せないかもしれません!

Dub Phizix and Skeptical feat Strategy – Marka – Exit Records

ハーフのリズムだから表現できるドープさ。このほかExit Recordsにはとても実験的でおもしろいDnBが多くリリースされています。

Dubstep

もはや知らない人はいないBass Musicの代表的なジャンルです。実はDarkstep界隈とは良くも悪くも、切っても切れない間柄なのです。
音楽的にDnBとの主な違いはBPM。DnBの技術はそのままDubstepに応用できるので、多くのDnBプロデューサーは音楽的好奇心からDubstepも作るようになりました。
その過程でDarkstepプロデューサーでなければ作れないようなへヴィで素晴らしいDubstepもたくさん生まれたのですが、
北米系Hard Dubstep(いわゆるBrostep)ブームの直撃を受けてしまったアメリカ出身のプロデューサーは徐々にDnBの方を作らなくなっていきました。
現在では、EwunはKill The Noiseに、Evol IntentのNickはBro Safariに、SporはFeed Meにというように名義を変えてEDMのトップアーティストとなってしまったプロデューサもいます。

Current Value feat. Underhill – User Error

スネアの音がCurrent ValueならではのDubstep。CV、Machinecode名義両方で多くのDubstepトラックも作っています。

Bratkilla – The Marching Dead

度々、DarkstepやCrossbreedシーンでも名前を見かけるBratkilla。
邪悪なかんじのDubstepを”Deathstep”と称して数多くのリリースを重ねました。

Breakcore / IDM

BreakcoreはDarkstepと非常に親和性が高くも全く異なるエレクトロニックミュージック。DnBがDJがプレイすることを目的に、一定の形式に則って作られていることに対してBreakcoreはそのフォームは自由、BPMも特に速ければ制限無くOK。ということでDJ向けの曲は少ないのですが、その技術力を活かしてDarkstepシーンに殴り込みをかけるBreakcoreアーティストもいます。
Breakcoreの中でもダーク系、Bong-RaやEnd.user,Gore-Tech, SA†ANなどの曲はDarkstepのDJにもよくプレイされています。
Breakcoreに近い特にビートが速くて激烈なIDMやElectronicaもDarkstepと親和性はあります。ビートメイキングの型破りな発想/自由さ等、多く共通するところがあるでしょう。
実際、Current Valueは影響を受けたアーティストに”Somatic Responses”の名前を挙げていますし、DJ HIdden、Limewaxは変名義でElectoronicaを作ったりしています。

FFF – Dreamstate

PRSPCTのサブレーベルRVLTには数多くのBreakcoreアーティストが所属しています。

Aphex Twin – Come To Daddy (official video) 1080p HD

説明不要の超有名曲ですがよく聴くととてもDarkstep的。

Hardcore Techno

そもそもBreakbeat HardcoreのムーブメントがJungleとOldscool Happy Hardcoreに枝分かれしたといわれているので現在のDrum & BassとHardcore Technoは分家の親戚同士だったという見方もできます。
まあ速いテンポのクラブミュージックというと、大体このどちらかでしょう。
お互いのジャンルがおのずとお互いの技術を使い、進化し続けてきたわけですが近年はっきりとシーンが交錯したのがCrossbreedのムーブメントだったというわけです。
Darkstepシーンの受けた影響に関しては第1回の記事で書きましたが、Hardcoreシーンに与えた影響もものすごいものでした。
4つ打ちのキック中心で構成されるトラックに、スネアでアクセントをつけるという概念はHardcoreのプロデューサーにとっても画期的なものでしたが、
あまりに多くのプロデューサーがスネアをスカンスカン打つようになったのでこちらのシーンでも辟易するファンや反発するプロデューサーも多くいました。
現在ではDnBのBPM帯を大きく超えた、BreakcoreやSpeedcoreからアプローチしたCrossbreedと呼ばれる音楽も存在するため、
もはや今後CrossbreedはDnBを離れてHardcoreのサブジャンルとなっていくのかもしれません。

Angerfist – Buckle Up And Kill (HQ Official)

HardcoreシーンにCrossbreedが一気に広まったのはGabbaシーンの立役者、Angerfistの参入から。

Hellfish & Producer ~ Toilet Wars (Bastard Sonz of Rave)

やはりCrossbreed以前にもDnBの要素を取り入れたHardcoreは多くありました。
これはどっちかというとBreakcore的。

Metal

もはや電子音楽ではなくなってしまいました。一般的に激しい音楽の代名詞といえばHeavy Metalです。
私も電子音楽に出会う以前はDeath Metal,Doom Metal, Black Metal, Grindcore, Metalcore等ばかり聴いてましたし、そういう人間だからこそ今この音楽で活動しているわけですし、海外の多くのプロデューサーも多くは幼少期にMetalを愛聴して音楽的な影響を受けています。MetalのギターリフやデスヴォイスをサンプリングしたDarkstepは多く存在しますがZardonicはその手法を用いた音楽(Dubstep,Drumstep含めて)”BassMetal”と称していました。またHeavy Metalの名曲をサンプリングして作られたトラックやブートレグ・リミックスも界隈に数多く存在します。

Concord Dawn – Raining Blood

Slayerの名曲のサンプリング、ブートリミックスはそれこそいろんなプロデューサーが行っていました。
CounterstrikeやHallucinator以前にはこんな曲も。

OUTRODUCTION

というわけで全3回の記事はこれにて終了でございます。
この道のDJ/トラックメイカーをはじめて結構経ちますが今回文字を起こして、溜めていた世に伝えたいことはかなり書ききれた気がします。
ここまでお付き合い頂いた読者の皆様、本当にどうもありがとうございます!
Dark DnBの底の深さと幅の広さを知って欲しいのと、この記事を読んで興味を持ってくれる人がいたらうれしいなあ
(欲を言うと国内でトラックメーカー増えて欲しいなあ)という希望を込めて、締めくくらせて頂きたいと思います。
最後に全3回の特集を総括するDJ Mixを収録させて頂いたのでどうぞお楽しみください。


 

THIS IS DARKSIDE OF DRUM & BASS mixed by 3×6

Track List

01.Konflict – Messiah (Noisia Remix)
02.Kryptic Minds & Leon Switch – More Like You (Unknown Error Remix)
03.SPL- Denied
04.Spor – Haunt Me
05.Gein – We Don’t Know
06.The Limewax – Arsch Noisyum
07.Current Value – Faith
08.Peter Kurten – 13 Soldiers
09.Hedj – Lifeline
10.Dj Hidden – You Are Not Real
11.Current Value & Donny – Drill
12.Broken Note – Channel Zero
13.Machine Code – Machine Freak
14.Katharsys – Guidance
15.Proket – Norilsk
16.Cooh – Duuure
17.Dub Elements & Erre – Popim
18.Switch Technique – Intelligence
19.The Outside Agency – Prepare to Die
20.Sinister Souls feat eRRe – Tuh Tuh Duh
21.Gancher & Ruin – Total Recall
22.Hallucinator – Raise Your Middle Finger
23.Evol Intent – Dead On Arrival
24.Counterstrike & KC – Extreme Mutilation
25.Black Sun Empire – Bitemark (Zardonic Remix)
26.Forbidden Society & Dub Elements – Set it Off
27.Nanotek – Never Say Die
28.Limewax – Agent Orange
29.Donny – Symptomless Coma (Current Value Remix)
30.Lucio de Rimanez – Crash Bang Wallop
31.Technical Itch – Pressure Drop
32.Panacea – Chartbreaka
33.Concord Dawn – Morning Light


 

WRITER PROFILE
Drum & Bass のプロデューサーにして日本唯一のHardcore DnB パーティー、“Sprout”のオーガナイザー。メタルコアバンドのヴォーカリストとして音楽活動をしていたが2004年からDrum & Bassの地に足を着け,現在の”3×6”の名義でプロデュース/DJ業を開始する。オリジナルトラックにはアニメやゲームからの サンプリングを使用したものが多く、ナードとドープの狭間の独特の世界観を持っている。海外のDarkstep/Crossbreedのアーティストとも親交があり、過去にCurrent Value, Counterstrike, DJ HIdden, Forbidden Societyといったトッププロデューサーを日本へ招聘、自身のパーティーに出演させるなどしている。近年の活動としては新たにレーベル”ICONOCLAST RECORDINGS”を始動。国内若手プロデューサを集めたコンピレーションアルバムや自身のEPをリリース、今後もレーベルを通してアンダーグラウンドダークミュージックシーンの発展に貢献していくだろう。

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アイキャッチ作: yuqwe.