『ドロヘドロ』オリジナル・サウンドトラックの発売を記念して、
参加アーティストのインタビュー&MIXを公開中!
第三回目は、サントラの1曲目を飾ってくれたUKの激重インダストリアル・ドゥームバンド「khost」によるインタビューとMIXをお届けいたします!
khostは80年代から数々のバンドで活躍してきたAndy Swan(ギター、ボーカル)とDamian Bennett(ベース)の2人によって2013年に結成。
Andy SwanはJustin K Broadrick(GODFLESH/JEUS/TECHNO ANIMAL)との「Atrocity Exhibition」、「Smear Campaign」や、ソロでは「Mesh」名義で活動を開始。2010年にはシューゲイザー/ポストロック・バンド「Iroha」でも音源をリリースしています。
Damian Bennettはインダストリアル・デスメタルバンド「Deathless」での活動や「Carthage」名義でのソロプロジェクト、「Techno Animal」や「16-17」の音源やライブに参加。両者共に20年以上に渡ってUKを拠点に活動を続けています。
khostとしては、2014年にインダストリアル・シーンの大手レーベル「Cold Spring」から1stアルバム「Copper Lock Hell」を発表。
超絶ヘヴィーなインダストリアルサウンドと地獄の底から聴こえてくるような邪悪なボーカル、無慈悲に打ち込まれる激鉄ビートが炸裂する強烈な楽曲は、世界中のエクストリーム・ミュージック愛好家達を悶絶させました。
GODFLESH、CONANとのツアーを経て発表された2ndアルバム「Corrosive Shroud」では更に深みと厚みを増し、
多くのメタル系サイトの年間ベストに入り好評を得ました。
今回提供してくれたMIXでは、Throbbing Gristle、Wire、Suicideなどのバンドの音源からLorn、ENAなどのベースミュージック系アーティストの音源まで、khostのお気に入りのアーティスト達の音源を中心とした内容となっており、khostの未発表リミックス音源も収録した素晴らしいMIXを製作してくれました。
彼らのサウンドの核となる部分が何処から来ているのかが垣間見れる貴重なMIXとなっています。
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インタビューでは、khostの作品のコンセプトやドロヘドロ・サントラに提供してくれた楽曲の解説、そして80年代のUKアンダーグラウンドシーンやインダストリアル・ミュージックに関する事までたくさんの貴重なお話をお聞きしました。
AS: Andy Swan (ボーカル&ギター)
DB: Damian Bennett (ベース)
Q1.
貴方の出身地は? 現在はどこを拠点に活動されていますか?
DB:マンチェスター
AS: バーミンガム
Q2.
音楽に興味を持ったのはいつ頃からでしょうか? 貴方がもっとも影響を受けたアーティストは?
DB: ロック音楽を聞いて育った。例えば1977年にAlice Cooperのライブとか見に行ったりね。
パンクが生まれた頃に、パンクの派生的音楽として生まれたBansheesやThe Cureとかも含めてロック音楽がどれも好きだった。
EnoとFrippはずっと好きで聞いてて、その後は 結成当初のSWANSやBlack Flagや、80年代のヘヴィーメタル全般も聞いてた。
その後は、あの最高にかっこいいEarth Crisisに代表されるようなハードコアバンドを聞いてた。
AS: その価値を理解するにはまだ若すぎたとは思うけれども、当初のパンクの時代をよく覚えているよ。
1979年から84年の間の音楽が衝撃的だった。Throbbing Gristle、Cabaret Voltaireのようなバンドが実験的な流れを新しい次のレベルへと発展させてた頃だ。
Q3.
いつ頃から音楽活動を開始されましたか? 最初に買った機材は?
DB:高校時代にバンドをやっててJoy DivisionやGang of Fourのカバーや自分らのオリジナル曲を演奏したりしてた。1980年頃のことだ。
その頃、The Birthday Party、Laughing Clowns、The Saintsあたりのライブを見て、同時に影響も受けた。
ビルダーの仕事をして、そこで初めてのベースをゲットした。その後、Sodom、 WireやLed Zeppelin等からインスピレーションを受けたツーピース(ベース、ドラム編成)のアシッドロック•メタルのStormというバンドを結成し、かなりの数のライブをした。
AS: 11歳か12歳の誕生日プレゼントにギターをもらった。14歳くらいの時、モノのRoland SH-09を手に入れた。はじめて本当に音楽的な音を作ったのは、TGに影響された過激な電子音を作り始めた頃だった。
Q4.
Andy氏は80年代初頭からJustin Broadrick(GODFLESH)と「Atrocity Exhibition」、「Smear Campaign」や「FINAL」として活動していたそうですが、Justinとはどこで出会いましたか?
当時の作品のリリースフォーマットはカセットテープだったそうですが、どのようにしてレコーディングから製作、流通と販売をおこなっていたのでしょうか?
AS:15歳くらいの頃にJustinと知り合った。
バーミンガムのマーケットの中に、Joy DivisionやCabaret Voltaire、Killing Jokeなんかの海賊版テープを売っている露店があって、僕はそこでよくテープを買いに行ってたんだけど、Justinもその露店によく来てて、ある日音楽の好みが似てる事を発見した。
その露店のオーナーは(彼は僕らよりも少し年上だった)はTGとWhitehouseの大ファンだったから、TG周辺の過激な電子音楽のテープを彼から買ったり借りたりするようになった。当然ながら、その流れでバンドを結成したいと思うようになって、Justinと僕はレコーディングを始めた。
Finalとして活動するもっと前の時期からAtrocity ExhibitionやSmear Campaignといった名前で活動してた。全てがDIY。レコーディングは全部カセットテープで録音し、そのままのフォーマットでほぼ毎週リリースした。アートワークは手作りで、地元の図書館でコピーしてた。自分たちで作ったテープは、当時のファンジン・シーンやテープ交換を通して知り合った人々に送った。
Q5.
Khostとしての活動はいつから開始されていますか? Khostはどういったコンセプトの元に活動されていますか? 音源ではどの様な事を歌っているのでしょうか?
AS: khostは2年半前にスタートした。当初はトラックを何個か思いつきでレコーディングするだけで、特に何の目的も無くやってた。ある日、Cold Springが連絡してきて、アルバムの話を持ちかけてくれた。その頃、khostとしてライブをしてほしいとのオファーがあって、僕はすぐにDamianに連絡をとった。同じ界隈で活動してたし、彼がTransitionalとライブしてたのも見てたから、彼を巻き込むのは全然自然な流れだった。以来、彼はkhostの正規のメンバーになった。khostの素材のサブシークエントにアイデアの段階から参加している。
khostの歌詞に関しては…、そもそもこれが適切な語彙かどうかわからないけれども…、グノーシスの呪文、祈り、攻撃や抑制へのシュプレヒコールや声明の混合物だと思うんだ。Isidore Lucien DucasseやWilliam Burroughsの本からのインスピレーションも大きい。
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Q6.
Khostのヘヴィーで重いサウンドはどうやって作られているのですか? 使用機材(ギター、ベース、エフェクター、etc)を教えてください。 ドラムの打ち込みはどのようにして作っていますか?
DB: 僕が作ってる部分に関しては、古いエフェクトを使ってる。中でもBossのが一番だ。他には、4トラックテープマシーンも使ってる。カセットテープ特有のコンプされたサウンドが好きなんだ。理想のアンプセットを作るためにいろいろ混ぜてる。
AS: 7弦ギターを、猛烈にダウンチューニングしてる。殆どベースギターのレベルだ。僕も古いエフェクトが好きだ。クラックルノイズとヒスノイズが音色に加わるから古いエフェクターを使っている。ドラムは、サンプルと実際の演奏の録音を混ぜてる。
Q7.
Andy氏のもう一つのバンド「Iroha」ではKhostとはまったく違ったエモーショナルなメロディと機械的では無いバンドとしてのグルーブを全面に出した作品を作られていますが、Irohaはどのようなコンセプトで楽曲製作をされていますか? まったく違ったように見えるKhostとIrohaですがどこか共通点はありますか?
AS: 僕は常にNew Orderや90年代のシューゲイズものが大好きだ。Irohaのコンセプトは、例えばNew OrderのメロディーにMy Bloody Valentineみたいなギターをのせる事なんだ。khostで言えば、もっと実験的なサウンドといったところ。(例えばWireが、テンポが早くて短いトラックを全く別の素材にのせて制作するのが好きなんだ)だけど、メロディー無しで、もっとヘヴィーにしたいんだ。確かに『いくつかの』メロディーはkhostに合うけれども、これらは特定のメロディーと言うよりは、あるテクスチャーに追加する事によってできたサンプルやサウンドになりがちだ。
Q8.
Khostの楽曲をHard Drum&Bassアーティストの「Hostage」がリミックスしていますが、彼を起用したのは何故ですか?
DB: 僕はDrum&Bassがかなり好きで、HYPERLINKやfriedmylittlebrainや他の媒体の中で記事を書いたりしながらDrum&Bassに関わってきた。
Hostageにも似たような関わり方をしていて、彼がaVaというラウドバンドをやってた事で更に意気投合した。
Q9.
貴方達は80年代からUKで音楽活動をされていますが、当時のUKの音楽シーンを振り返ってどのように思いますか?80年代初頭はインダストリアルミュージックやアヴァンギャルドミュージックといったジャンルのシーンが形成されていく時期だったと思うのですが、その時期に実際に音楽シーンに参加していた当事者として、そういった(インダストリアルやアヴァンギャルド)シーンの動きは貴方にとって刺激的でしたか?
DB: 僕はとにかく音楽好きだ。Heathen Earthが出てきた時、よく聞いていたけどサウンドがどこから来るのか解らなくなり、そこにいたいと思うか解らない程、僕の耳にはかなり恐ろしく聞こえた。催眠誘導的なセッションから引き起こされるサウンドの使い方に魅了されたことによって、多分サンプリングを初めて理解したんだと思う。YOBというバンドが最近同じようなことを、物凄いエフェクトを使ってやってるのは面白いと思う。TGの中では20JazzFunkGreatsが好きだ。
UKシーンから遠ざかって、Severed Heads、SPK、NO (後のエレクトロニック音楽とメタルギターに影響を及ぼした80年代の重要なバンド)、 Hunters & Collectorsやその他のたくさんのアンダーグラウンドバンドを地元のライブシーンで見るのに没頭していた。80年代初頭、ENやDAFをよく聞いてて、しかも彼らのライブでの表現方法に魅了されていた。Voivod and laterや Type O Negative等のアーティストに多大な影響を及ぼしたように、インダストリアルなサウンドがヘビーメタルに融合するのが好きだった。Type O Negativeのライブは、おんぼろのトラックがスローモーションで自分の車に突撃してくるかのようだった。
AS: 70年代後半から80年代後半の時期はとてもインスピレーションに富んだ時であり、僕の音楽の今ある姿を形作った。あの頃は直感的な会話で、物事が成り立つ時代だった。僕の好きな音楽はいつでもこの時代のものだった。特にTGからは相当な影響を受けたよ。
Q10.
貴方達が活動を始めた頃はどんなアーティスト、バンド達と共演したり交流がありましたか?
DB: 僕が交流があったのは、Storm、Deathless、Gauge、16-17、Cortex、Techno Animal。あと、ちょっとだけTransitionalのライブに参加したりAnne McCueにベースで参加して、 97年からは個人的にcarthageというプロジェクトをやっている。khostのライブビジュアルやAvici(Hostage Remix)のビデオは、すごく才能のあるDJ (vimeo.com/discordance)が手がけてて、権利も彼が所有している。彼とはcarthage以外にもたくさんのライブを一緒にやった。
AS: 僕は今でもNic Bullen(Napalm Deathのオリジナルメンバー)と交流がある。1983年リーズでKilling jokeのイベントに行く途中の電車の中で知り合ったDave Cochrane (Jesu、Terminal Cheesecake、Transitional、Head of David) とStephen Burroughs (Head of David, Tunnels of Ah) 達とは全員、10代の頃からの知り合い。Nicがfinalをやっていた頃、しょっちゅう一緒にレコーディングをしてた。
Q11.
UKはインダストリアルミュージックの発祥の地でもあると思います。現在では多くのジャンルに影響を与えており、インダストリアルの要素を持ったテクノやベースミュージックを作る若いアーティスト達がUKから生まれてきています。 UKという国とインダストリアルというジャンルは密接な関係があるように思います。 何故多くのインダストリアルな音楽がUKから生まれると思いますか?
DB: 90年代前半、ロンドンのハックニーに住んでた。TG HQから、さほど遠くなくてローカルなバイブが本当に皮膚の下にまで感じられるとこ。治安が悪くて、大きなナイフを路上のあちこちで見かけた。建物や冷たい雰囲気感が殺伐としてた。14世紀にヨーロッパで流行った黒死病で亡くなった人々を大量埋葬したピットが近くにあったからかも知れないんだけど。良くも悪くも、この地域ではスクワットカルチャー(廃墟)が浸透していた。君の質問は、『Corrosive Shroud』という作品にも関わることなんだけれども、仕事に通うのを諦めて、破産して田舎にでも住まない限り、自然からかけ離れてて古くて再建されたビルに住む事になるんだ。もしかしたらそれはドロヘドロで言うところの『ホール』なのかもしれない。このテーマは、僕がインダストリアルのヴァイブがどのように繁栄していくかを考えることと深く結びついている。醜くバイオレントになるか、角張った夢のようなおぼろげなものとなるか。ちなみに、僕がインダストリアルと言うと、Ruffhouse、Clarity、Ben Frost、Scott Walker等の音楽からDavid Lynchの映画にまで至る。
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Q12.
「DOROHEDORO」にはどんな印象を受けましたか?コミックを読んで印象的だったキャラクターやストーリーはありますか?
今回貴方が提供してくださった楽曲にはどんなイメージ(テーマ)がありますか?
DB: アートワークはとにかく素晴らしかった。作品自体は恐ろしかったけど、僕たちの身の回りにある日常的なオブジェクトがたくさん使用されていて、より痛切な感じや、奇妙な感じがした。キャラクターは生き生きしてて息をのんだ。今にも匂いが漂ってきて、触れそうだと思ったくらいに生々しかった。キャラクターは全員一人残らず好きだった。皆、力強くて勢いがある。続きを読むのが楽しみだ。
日本のアニメがすごく好きなんだけど、個人的には僕と僕の息子は、「もののけ姫」と「風立ちぬ」がすごく好きだ。日本のホラーについて言うと、例えば「オーディション」、これはもっと評価されるべきものだし、とても影響力があると思う。
提供したkhostのトラックは、『都会に住んでいて、まだ自分の個性を隠している。だけど、信頼した瞬間、一気に自分を出す』そんなイメージだよ。
AS: 「ドロへドロ」は恥ずかしながら初めて読む日本のコミックなんだ。ページから飛び出てきそうな恐怖と不安の感覚がすごくよかったし、イラストはかなり印象的だった。読み手があっけなく病んでしまうように描いているのかとすら思ったけど、そこにもとても惹き付けられた。
Redacted Recalcitrant Repressedの『Replace Me』のリフレインは、僕にとってのカイマンが感じている事の投影なんだ。
Q13.
素晴らしいMIXも提供してくださりましたが、ENAやCorruptedといった日本人の音源も収録されており驚きました。日本の音楽にも興味はありますか?
DB: 子供の頃からずっと日本文化に興味があって、個人的にいろいろと調べてきたんだけど、特にアートには深い関心があった。
幸運なことに90年代にはZENI GEVAやKK Nullと同じイベントで共演したことがあった。Wombにもいつか行ってみたい。リキッドルームのJeff Millsのアルバムは歴史に残るものと言っても過言ではない。運良く、ステージ上で彼を見たことがあるんだ。
あと、日本のメタルがとても好きだ。個人的には80年代のヴァイブが戻ってくればいいなあと思っている。Big Halls、Big Kits、No IronyやSignも好きだ。5、6年前くらい前に見たCorruptedのライブも素晴らしかった。starROも好きだ、彼は横浜出身だよね? もちろんGoth-Tradもずっと尊敬してる。境界線のない音楽だ。ExitやSamurai/HoroのようなD&Bレーベルが、日本のアートやサウンドを称賛し、それらを取り入れたということも素晴らしいと思う。dBridgeを聞けばわかるよ。彼の起源が元々、日本のサウンドにあるということも知ってる。Enaの作品も素晴らしいし、ライブもすごい。Commixでもそうだ。Photekやその他のたくさんの現存のミニマルD&Bアーティストも同じだ。そして、自然とエレクトロニカに融合していくんだ。
AS: 僕はCorruptedの大ファンなんだ。Begottenedの音源もすごいから、彼らも注目しているよ。
Q14.
今後のリリース予定を教えてください。 Khostの新しい作品の予定は?最後に日本のリスナーへメッセージをください。
DB: 次のアルバムはほぼ完成している。
リミックスEPがもうすぐリリースされる予定で、5月にイスラエルでツアーがある。Necrobiaによるリミックス曲のビデオが完成しているからリリース後にオンラインで公開予定だ。
AS: 新しいアルバムは、様々な場所でレコーディングされた。古い倉庫、廃工場や廃墟を利用して、色んな部分をレコーディングし、そこからトラック制作してアルバムを完成させた。
新しいレコーディングは、まるでそれ自身に生命が吹き込まれているかのようで、最初のアルバム2枚ありきで制作するには、もはやコントロールできないくらいだった。
このプロジェクトに参加させてもらうことをとても感謝している。日本でもいつか公演したいと思っている。個人的には、このインタビューをしてくれた君に会えるのを楽しみにしてる。
khost
https://khostband.bandcamp.com/
https://www.facebook.com/khostband/
インタビュー/文:GHz Staff 翻訳:Kyoka