em的に思う、何年経っても聴きたい美メロ10選

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今回のチャート企画は普段のGHz Blogで紹介しているハードでノイジーな物とは打って変わって、リスナーの心の琴線に触れる「美メロ」を特集!

Aphex Twin、Squarepusherといったアーティストによる鉄板の美メロ曲から意外なジャンルから選ばれた曲など、多種多様な美メロをピックアップしてくれたのはオルタナティヴ・ミュージックを集めるパーティ「MEOW!!!」元主宰であり、Glocal Pussysのメンバーとしても活動されているemさんによる間違いないセレクトにてお届け!
この春からの新生活やハードコア・ミュージックに少し疲れてきているリスナーの方々はこのチャートで紹介されている美メロで癒されてください!



em

https://twitter.com/em_meow
https://www.mixcloud.com/em_meow_303/

はじめに:
音楽の本ではないのですが、最近読んだ本が言うことには、リズムは「構造・理性」、メロディは「表現・感性」なのだそうです。

そこから考えると、今回いただいたテーマの「美メロ」は、表現として美しいと感じ、同時になにかしらの感性を揺さぶるものであると思われます。
では、表現が最大公約数的に美しいと評価されれば、それで良いのでしょうか。
いわゆる「泣ける」と言う特定の感情さえ揺さぶることに成功すれば、それは美メロなのでしょうか。

私はそれらも含みつつ、しかしそれに限定しないかたちで美メロと感じるものをセレクトしてみます。
このチャートでは、各楽曲にDJをするときにどんな場面でかけるか、というイメージなども含めていますので、ご参考となれば。
以降、敬称略。

1:4 bit 9d api+e+6b [126.26]/Aphex Twin
https://www.amazon.co.jp/bit-9d-api-126-26/dp/B00NEM5V1O

★このフレーズだけでご飯が進む度:100%
★かけたいフロアイメージ:ものすごく音響が良い野外環境で、テクノセットするとき

Aphex Twinの曲は美メロが多すぎるので、それだけでチャートを作れてしまいますが、彼が作る曲の中で、こういう美しさはなかった!という驚きのある曲として、これを挙げます。

まず、曲の冒頭からして不穏な音の重なりは美メロどころか気持ち悪く、各小節で気持ち悪さの限界を感じるほど。そのギリギリのところを、16小節単位で音の重なりを変化させて、「美しい」と感じるように方向性を変えていく構成が素晴らしいです。

特に、2:24〜2:40のシンセフレーズは、ここに至るまで聴いてて良かった!と思える空間的な厚みを出しており、正直ここのフレーズだけで優勝してる感じ。
Come To Daddy E.P.に入ってる「Flim」のような陰鬱を含むメロディではなく、ひたすらに暖かいメロディラインになっているあたりに、Aphex Twinは曲を作るごとに進化していると感じています。

シンセを使ってDTMをしている方は、2:24以降を聞き倒して、なぜ美しいのかを分析してみるのも良いと思います。

2:Sarcacid, Pt. 2 / Squarepusher

★夕暮れを思い出す度:100%
★かけたいフロアイメージ:フロアよりMIXで使いたい

Squarepusherで美メロを1曲挙げるなら、これかな、と。
Ultravisitor、A Journey To Reedham、Iambic 9 Poetryなどは既に語られすぎた感じもあるので、SquarepusherにおけるFlimみたいな曲ってなんだろう?となるとこういう曲だと思います。

「Burningn’n Tree」自体があんまり話題に上がらないアルバムという気がするので、この機会にいろんな人に聞いてみて欲しいですね。

曲調そのものはミニマルミュージックとも言える非常に抑えた展開で、後半になってもそのテンションは変わりません。
リアルタイムで聴いていた曲ではありませんが、この曲を聴くたびに小学生の頃、10月だか11月だかの季節に川辺で独り遊んでいて、そろそろ帰らないとなー、という気持ちを思い出します。そういう意味で、感性に訴える名曲と感じています。

Iambic 9 Poetryについて語ると11曲になってしまうのであまり話しませんが、健康胎児さんによるチップなRemixも、機会があればぜひ聴いてみてください。フロアでかけるなら、私は胎児さんのトラックを使う傾向にあります。原曲はゲイン上げ太郎になるのでちょっとキツいため、DAWで少し太らせてあげた方がフロアに耐えうる感じです。フロアの環境は、繊細な構造の曲には厳しい……。

3:Mountain Island Boner / μ-Ziq

★手術するときこれで落ち着きたい度:100%
★かけたいフロアイメージ:プライベートビーチの昼。

µ-ZiqもAphex TwinのOnのRemixなど含めると良いメロディ多過ぎてこれだけでチャート作れてしまうので、1曲のみにさせて下さい。

この曲を含むアルバムが出た当時、ノイローゼ的なアレを発症してしまい、かなりキツい日々を送っていたのですが、この曲の鮮やかな色彩と、ダブステップ寄りなビートを、あくまでもメロディを活かすためのリズムとして、軽やかに組み合わせている構成に感動したことを昨日のことのように覚えています。
メール経由でインタビューさせて頂いたのも、良い経験です。
https://qetic.jp/interview/m-ziq/106105/

過去に新島のWAXというビーチパーティでこの曲をかけたことがありましたが、目の前に何も障害物の無い海を眺めながら、このメロディに浸ることができたのはとても幸せな時間でした。

新島WAXのサイト:https://www.wax2005.com/

4:A Blast Of Loser – 9406 Version / Mungolian Jetset

★家に帰れなくなる度:100%
★かけたいフロアイメージ:夜中2:45-4:00までの野外

「We Gave It All Away…And Now We Are Taking It Back」というリミックス集(タイトル長い…)に入っている曲。
チルな美メロと言うことで、これを挙げてみます。

Mungolian Jetsetは来日タイミングに全く立ち会えず、見たいアーティストのベスト3に入るぐらい好きで、DJでもよく候補に入れたりかけたりしています。
同じリミックス集に入っている「Ocean 0304 – Cruusin With The Henleys Mix」も涙腺をグッと刺激するチルトラックで好きなのですが、ディスコダブの視点で見て、適度にクールダウンしつつ腰が動く感じ、でも心が暖かくなる、という感性の動かしっぷりの凄さで、この曲にしました。
詳しくは、みんな大好きDiscogsを参照。
https://www.discogs.com/Mungolian-Jetset-We-Gave-It-All-Away-And-Now-We-Are-Taking-It-Back/master/279671

5:Planet TH / The Flashbulb

★メロというかハーモニーなのでは?度:100%
★かけたいフロアイメージ:IDMにも疾走感があることを伝えたいとき

Flashbulbの曲を挙げておいて「Lawn Wake I」じゃないの!?と言うお叱りも聞こえてきそうですが、今回はあくまでも「美メロ」特集ということでこれにしました。

先の「A Blast Of Loser」もそうなんですが、ミニマルな形で美しい展開を作るのは、シンプルが故に難しいことだと考えています。
そういう意味では、メロディらしい部分は1:42からようやく入ってくるにも関わらず、疾走感あるシンセドローンとホワイトノイズ、それらにマッチするように帯域を変えたドラムパターンでその空気を作り、違和感なく重要なメロディラインを落とし込むこの曲は凄い。
3分の曲でこういう構成なので、聞き惚れてしまい繋ぐ時間がごくわずかになるのはよくあることです。

ちなみに「Lucid Bass I」のメロディは、Gil Scott Heronの「We almost Lost Detroit」のイントロが元ネタと言う分かりがありました。
ブレイクコアの元ネタは、いろんなのがあって楽しい。
https://youtu.be/cpNUqNe0U5g

6:Childhood Memories / Kei Toriki
http://www.otherman-records.com/releases/OTMN076

★こんな曲に会えて嬉しい度:100%
★かけたいフロアイメージ;ここ一番の決め曲

GHzにも鼎談を掲載いただいた「YabaiKore!」の企画で行った、「天下一アーメン武道会」一回目で優勝を果たしたKei Toriki。
正直な話、一回目の企画時点で、こんなに規格外のメロディセンスを持った人が登場するとは……と言う気持ちでした。
この曲を聴いたとき、世代的に「あっこのサンプルは!」と気になったりドラムパターンの妙にアガったりする部分もあり、それでいてトータルでのメロディの良さ、ノスタルジックだけど新しい感覚は、world’s end girlfriendクラスの凄味を持つ人だと思っています。

7:Singing Under The Rainbow / world’s end girlfriend

★これを自分のチャートに入れていいのか度:100%
★かけたいフロアイメージ:ご本人のライブセットがない場所でこっそり…

ザ・美メロということで。
このメロディで、あのキックとエフェクトというのがヤバすぎるのですが、もうストリングス入れただけで優勝かなってぐらいの強さ。
美しいメロディ+ブレイクコア的アプローチのキックの構成を持つ曲はいろいろありつつ、この方を含むROMZのアーティストはそのメロディセンスが非常に独特。
退廃的だけど廃れない輝きがある曲です。

8:この世は不思議 / 冨田ラボ feat. 原由子, 横山剣, 椎名林檎, さかいゆう

★スティービー・某に似ているはNGワー度:100%
★かけたいフロアイメージ:ショーケースの曲間SEや、パーティの終わりに

ポップスやバンドの音楽については物凄く疎いほうで、富田ラボ自体も名前は知ってるのだが……と言うレベルでした。
当時椎名林檎に関する動画を探していた過程で、Youtubeのプロモレコメンドからこの曲を知り、まんまと購入しました。
Victorのマーケ担当がとても有能だなーと感じましたし、そういう形の広告は大歓迎です。

坂本慎太郎作詞、そしてこのヴォーカル陣という、資本と才能の暴力を用いた超一級のポップミュージック。
家で聴いて良し、ラウンジに良し、野外に良しと、かけどころを選ばないバランスの良さが素晴らしい。

9:Dera Sor(cay taylan rmx) / Orient Expressions

★エキゾだけどモダンなムー度:100%
★かけたいフロアイメージ:一杯700円ぐらいする、ちょい高めのクラブのラウンジ

真っ当なディープハウスのテイストと、エキゾなメロディライン・ヴォーカルが聞き飽きない一曲。ゴリゴリに民族調なわけではなく、ラウンジセットにしれっと盛り込みたい丁度良い構成が素晴らしい。
トルコのDoublemoon Recordsというレーベルのコンピ「Doublemoon Remixed」ラストの曲として、しっとり締める空気が真夜中だなーという感じです。
(ドイツにも同名のレーベルがあるそうですが、違うものです。 .trドメインの方)
http://www.doublemoon.com.tr/

余談ですが、このコンピにはDJ Ruptureも参加しています。あなた、なんでこんなところに……。
Filastineとかお好きな方には、このレーベルおすすめです。

10:おうちに帰りたい:アクア (雨宮天), めぐみん (高橋李依), ダクネス (茅野愛衣)

★こんなところにヤバイ曲があった度〜!:100%
★かけたいフロアイメージ:朝方のグッダグダなフロア

今年からアニメやドラマを見る機会が増えたのですが、ダントツでぶっ飛ばされたのがこの曲。
「この素晴らしい世界に祝福を!2」自体も大変面白くて脳が溶けるコメディでした。

TV放映の作品で使われる音楽において、音圧パツパツでうるせー!となる曲や、叙情的にしたいのは分かるけどそれはちょっとサムいと感じる曲がある中、この曲は正統カントリーなところが大変良かったです。
ド直球な夕焼けチャイムソングなので、作品を知らなくても楽しく聴けるところも良い。

改めてこの曲のレーベルを見たら日本コロムビアで、いろんな意味で切ない気持ちになりました。


em プロフィール:
WARP Recordsを中心にレフトフィールドな音楽をかけ倒すパーティ「MEOW!!!」元主宰。
10年ほどに渡り、国内のIDM、ブレイクコア、エレクトロニカを混ぜ倒すパーティをオーガナイズしたり、DJとして「こういう音楽って楽しくない?」と、ご提案をして参りました。
選曲は続くよ、どこまでも。

■これまでやってきたこと:
。2007年〜2016年:MEOW!!!主宰(一時休止期間挟む。現在は完全脱退。)
・2010-2014年:Webマガジン「Qetic」ブロガー (emeowとして執筆)
・2012年 Plaid 来日パーティ@WWW サブフロアオーガナイズ
・Club Museum(UNIT開催時) オープニングアクト・サブフロアオーガナイズ
当時のゲストアクト:DMX Krew,Luke Vibert,Surgeon…etc
・2012-2014年:Glocal Pussysメンバー(セクシー×グローカルなDJユニット)
・2015年:ヤバイコアリリパ オーガナイズメンバー兼天一アーメン等当日企画サポート
・2015年〜:marginal disKoとして始動(uenos airesとの電流爆破系B2Bユニット)
・2016年:DJ Shitmat 来日ツアー東京公演@BE-WAVE オーガナイズ
・2017年〜Glocal Pussysメンバー再起動。ソロ、B2B、グループと色々な形でDJを継続予定。