サイケアウツG 新作EP『Pilling』の発売を記念して先週から始まったサイケアウツG特集の第二弾となる今回は大橋アキラ氏のインタビューを公開!
『Pilling』のコンセプトや楽曲制作に関してなど、未だ謎の多いサイケアウツGのサウンドと世界観の謎に迫るとても貴重な内容のインタビューとなりました!
このインタビューと共に以前、大橋アキラ氏がGHz Blogに提供してくれたチャート記事も合わせて是非ご必読を!
What’s your favorite thing of all time? PT.4 by 大橋アキラ (Cycheouts G)
http://ghz.tokyo/2015/03/19/whats-your-favorite-thing-of-all-time-pt-4-by-cycheouts-ghost/
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CD+Tシャツ・セットにはサイケアウツGの新曲がダウンロード出来るDLコード付き!
サイケアウツG
https://twitter.com/cycheg
https://soundcloud.com/cycheouts-ghost
国内最強を誇る打ち込み天皇山サイケアウツG。
Mr.ディラックこと大橋アキラにより、90年代中盤に初期”サイケアウツ”を結成。TV、ヴィデオ・ゲームなどのあらゆる粒子化された情報とアーメン・ビートを、大胆かつ緻密なプログラミングスキルで新たなダンスミュージックとして提示。PE並のハチャメチャなライヴ・パフォーマンスとミックスし、90年代後半のアンダーグランドを一世風靡し、FUJI ROCK FESTIVALでのパフォーマンスは今もなお語り継がれる事になる。00年前後で突如地下に潜るが、2004年”サイケアウツ・ゴースト”として蘇り、”Vikalpa/分別”をROMZよりリリース。以前までの派手なサンプリングは影を潜めるが、その細部に込められたメッセージは健在。日本においていち早くダブステップ、グライムを取り入れ、得意の畸形アーメン・ビートと併せた作風はまさにオリジナルで、ドイツのレーベル”Suburban Trash”からの熱いラブコールを受け、後にアナログ2枚組みでライセンス・リリースされる。
2005年には、2ndアルバム”SIMSTIM/擬験”をリリース。前作を上回る最高の強度を持ったワル音楽に昇華させる。2006年には日本のダブステップ・アーティストの代表GOTH-TRADとスプリット盤12inch”BEAT ADDITIVES VS MADRAVE”をリリース。2009年にリリースした3rdアルバム”Prapañca [戯論]”では、ベースライン・ハウス/ハウスにダブステップ、ジャングルを巧みにミックスした超一級のダンストラックを披露した。Adrian Sherwood、Meat Beat Manifest、The Bug、DJ Zinc、Soundmurderer、Bizzy B、N-Type、Skream、Kode9…な ど、海外の実力派アーティストと共にイヴェント・ブッキングされ、ドッカリかつガッツリと必ずフロアをロックし、リミックス・ワークにおいてはWagdug Futuristic Unity、ビッグポルノ(小籔千豊&レイザーラモン)、Kid606、裸絵札、Yoco Organ、FFFへのリミックス提供で新旧問わず多くのリスナーを獲得している。
2010年4月にDJ TUTTLEと共にレーベル「NODE」を立ち上げ、コンピレーションCDをリリース。2014年には4thアルバム”反対人間 / Opposite Human”を2枚組CDとしてリリース。そして、2018年12月26日に待望の新作” Pilling “のリリースが決定。
Q.
新作EP『Pilling』にコンセプトやテーマなどはありますか?
タイトル『Pilling』にはどういった意味が込められているのでしょうか?
作品制作期の日常生活で、かなりの比重をしめていたのが、
「哲学探究」ウィトゲンシュタイン著 「自明性の喪失」ブランケンブルク著 (書籍)
「ゴーシャラブチンスキー」 (ファッション)
「ご注文はうさぎですか?」 「夏目友人帳」 (アニメ)
で、これらの意味するところがコンセプトというか、これらを、音へ翻訳したのがこの作品です。
Pilling(毛玉、毛羽立ち)ですが、毛玉取りや、メルトンのブラッシングにはまっている時期がありまして、上記の書籍を通して、毛玉や毛羽立ちに接してみると、中々興味深かったので、タイトルにしました。
Q.
今作ではノイズが楽曲の中で多く使われていて印象的ですが、ノイズにはどの様な役割が与えられているのでしょうか?
ダンスミュージックにノイズをミックスするという手法には何かしらの思想的な部分も反映されていますか?
一般的な楽器と同じような役割です。最初に手にしたのが、ピアノやギターではなく、ノイズと言われる様なものだったわけで、扱い慣れているし、単純に好みの音だから良く使用しています。というわけで、その様な音を使って、ダンスミュージックを作っているだけなので、何かしらの思想的な部分は無いです。「何かしら」が有るとすれば、そこから聴こえてくるものが、その「何かしら」です。
Q.
「Kaos Future Zero」と「200.10.80」では、久々にアグレッシブなドラムンベース・チューンを披露されていますが、アグレッシブな楽曲を作る時に意識されている事は何かありますか?
楽曲の制作方法は、日常の中、出逢ってくるものや、忘却の淵からたまに浮き上がってくるものを、音に翻訳する作業になります。ですから、アグレッシブに聴こえる曲が出来た場合、日常がアグレッシブで、浮き上がってきたものが、とんでもないものだったのでしょう。今作に関しては、コンセプトの欄に挙げたものが、ほぼ原本ですし、2時間ドラマばかり観ていると、T.sus になります。簡単に言うと、その時点での、世界との、かかわり方です。
Q.
「Adam 2018」で聴けるサイケアウツ印の音頭的なスウィングするアーメン・ブレイクはどうやって生まれたのですか?
「アーメンを3連符で打ってみようと思った」、と言ってしまえばそれまでなのですが、この曲のサンプルである、アダムアントがそうですし、80sでかっこ良いと思う曲に3連符が多かったから、身体に染み付いていたのかもしれません。そのころは3連符なんて概念は知りませんでしたし、後に Roland W-30 をいじってる時に気づいて、アーメンでやってみた、といった感じです。
Q.
サイケアウツは90年代からジャングルとドラムンベースを作っており、日本のドラムンベース・シーンにおいて重要な存在であると思います。
近年オールドスクールなドラムンベースやジャンプアップが再評価されていますが、大橋さんにとってドラムンベース/ジャンプアップの魅力とは何でしょうか?
実は、ドラムンやジャンプアップは、そんなに聴いてなくて、どちらかといえば、ジャングルなので、それも含めてドラムンとします。それで魅力ですが、音と音の関係性、間柄、距離感、音と背地の関係の塩梅が、私にとってしっくりくる感じです。90s というのも重要です。40~50Hz のベース音にアーメンが乗っかって、その奥に無音の地が見え隠れするところが好きです。
Q.
「Aleph Machine」と「Feeling」では洗練されたハウスを披露されていますが、ハウスを作る際に最も重要な部分とは何でしょうか?
そんな大層な事はわかりませんが、個人的に気をつけているところは、キックドラムです。BPM125 位でキックとオープンハイハットだけで成り立てば成功ですが、中々出来ない。音と背地の関係がうまくいってる曲だと、キックだけでもカッコ良いのが有ったりしますが、難しいですね。
Q.
現在使用されている機材を教えてください。
Cubase 5 WaveLab ReCycle HALion Massive minimoogV Waves 今作は、VST オンリーです 。
KRK VXT4 SENNHEISER HD280 PRO AKG K240 STUDIO 外部はこれだけです。
Q.
楽曲を作る時は何から始められますか?
サイケアウツの楽曲はクラブにおいて存分に威力を発揮しますが、楽曲製作時にDJユース的である事や、クラブでの鳴りといった外部の事はどれ位意識されるのでしょうか?
ドラム音の選択、組み立てから始めます。ちゃんとしたDJが出来ないのでDJユース的というものがわからなかったりします。だから、たぶん使いにくいと思いますよ。鳴りはその場所で鳴らしてみないとわからないので意識はしません。モニタースピーカーやヘッドフォンで、それなりの奥行きや高さが有れば、大丈夫だと思っています。
Q.
サイケアウツの楽曲は圧倒的に音が良く、どんな環境で再生されても楽曲の本質を感じられる様になっていると思います。
大橋さんにとって良い音の定義とは何でしょうか?
固定された定義は無いです。音と何かとの関係性、音、本体ではなく、それらの間を聴くことが大事だと思います。ですから空間性や時間性、歴史や文化も絡んできますから、つねに流動性がある定義になります。「あか抜けて、張りがあって、艶っぽい」という「いき」の定義が、音にもぴったりかもしれません。が、何はともあれ、「良い音だな~」と呟いてしまった音が「良い音」でしょう。
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次回のサイケアウツG特集はチャート記事の第二弾!世代もジャンルも違う様々なアーティスト達が選んだサイケアウツG/サイケアウツの名曲をご紹介!