The Bug – Pressure / Pressure Versions

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自身主宰レーベル「Pressure」から定期的に上質で最先端な作品をリリースし、ベースミュージックからポスト・メタル、ドローン、アンビエント・シーンでも高い評価を受ける鬼才Kevin MartinがThe Bugとして2003年に発表した名盤アルバムが未発表曲を追加収録して再発!

今年に入ってからはKevin Richard Martin名義でのドローン/アンビエントに特化した作品の発表や、先月はKing Midas SoundとしてもEPを発表し、彼の優れた作曲家/サウンドデザイナーとしての側面を改めてリスナー達は感じていた所でしたが、ここに来て、The Bugのハードコア・サイドも再び呼び覚ましてくれました。
2003年にAphex Twin主宰のRephlexからリリースされ、アメリカではKid606のTigerbeat6、日本ではP-Vine Recordsから国内版も発表されていたThe Bugの2ndアルバムにして名盤『Pressure』がデジタルで復刻。Daddy Freddy、Roger Robinson、Paul St. Hilaire、Wayne Lonesomeといったレゲエ・ディージェイ/ボーカリストが参加しており、Techno Animalで開拓したドラムンベースとイルビエントをポスト・パンクとダブで煮込んだ様な過剰なサウンドをルーディーなダンスホール・スタイルにアップデートさせた攻撃的なリディムをメインとした革命的な内容で、その後のポスト・ラガムーブメントの火付け役ともなった1枚です。

2001年にMo’Waxがリリースしたコンピレーション『Now Thing』を筆頭に、New Flesh、Stereotyp、Al-Haca Soundsystem、DJ Vadim、DJ/ruptureといったアーティスト達がダンスホールを再構築する動きを見せ、DJ ScudとI-SoundはAmbushとFull Wattsからダンスホールを軸にノイズとブレイクコアをミックスさせたアヴァンギャルながらもサウンドシステムを意識した作品を作っていた頃、Kevin MartinはRazor Xからハーシュなダンスホールをリリースし続け、それら一連の動きの集大成とも言えるのが今作の『Pressure』であると思われます。良くも悪くも、『Pressure』のインパクトは大きく、その後数年に渡ってThe Bugに一定のイメージを持たせ、多くのフォロワーも生み出しましたが、人々にダンスホールへの関心を持たせた功績は非常に大きいでしょう。当時の若い世代だけではなく、大御所アーティスト達にも大きな影響を与えていたと思われ、Tigerbeat6のサブレーベル「Shockout」は勿論、Modeselektor、Phon.o、King Cannibalといったデジタル・ダンスホール・スタイルの原型にも繋がっています。そして、The Bugが三年後に発表した3rdアルバム『London Zoo』では、ハードコアなダンスホールだけではなく、グライムを大幅に取り込み、再び自身のシグネイチャー・サウンドをアップデートさせ、過去の焼き回しだけではない新しい傑作を再び作り上げているのも流石であります。

今回、同時発売された『Pressure』のヴァージョン(インスト版)を集めた『Pressure Versions』を聴くと、本質的な部分は昔から変わらず、当時からThe Bugのコアなサウンドは完成していたのが解ります。今とは違った荒々しいトラックからは、ジャマイカのダーティーでセクシャルなダンスホールのバイブスと、イギリスの根深いベース・カルチャーとインダストリアルやパンクの影響がダイレクトに感じられ、様々な文化やスタイルが交じり合う現代に非常にマッチしている様です。
これから先もずっと愛される名盤であり、多くの人を興奮させていく素晴らしい作品です。