“GHz Interview12(後半)” DJ SHARPNEL / Sharpnel.net( SHARPNELSOUND )

INTERVIEW

日本を代表するハードコア・クリエイターでありJ-COREシーンのパイオニア「DJ SHARPNEL / Sharpnel.net」のインタビュー後半を公開!

後半部分では伝説的なイベント「GABBA DISCO」と「OTAKUSPEEDVIBE」やHARDTEKとの出会い、そしてリスナーの皆さんが気になっている現在の活動からVRへの完全移行に関してなどのお話をお聞きしました。
とても深みのある貴重なインタビューとなっており、SHARPNELSOUNDのファンは勿論、全クリエイター必見の内容です!

“GHz Interview12(前半)” DJ SHARPNEL / Sharpnel.net( SHARPNELSOUND )
http://ghz.tokyo/2016/12/20/sharpnelsound_ptone/

 


Q.
JEAさん達が主催されていたイベント「GABBA DISCO」はどんなコンセプトの元に開催されていたのでしょうか?

JEA.
GABBAをジャンルとして広めたいという思いから、当時GUHROOVYの店長に就任したCHUCKYや高速音楽隊シャープネルとして活動していたDJ急行とスタートしました。「こういう面白い音楽があるんだから皆で聴こうよ!」っていう。一緒に楽しめる人を増やせればと。イベントのフォーマットとして、DJは全員GABBAオンリーで、それと1DJ・1MCという形式でお願いしました。とにかくフロアとステージがコミュニケーションできるパーティ感を目指しました。

自分達がオランダのハードコアレイヴで経験した感動を日本にも伝えたくて、高速音楽隊でのライブスタイルでもそうですが、お客さんにブレイクでのクラップを強要して、オランダの空気感になるべく近づけるようにしました。オランダのハードコアイベントでもサブフロアで様々なスタイルのハードコアが聞けたように、GABBADISCOでも96年スタイルのROTTERDAM REC、MOKUMのハッピーガバから最新のニュースタイルサウンドまで、GABBAの派生ジャンルは全部おさえて盛り上がるようなイベントを目指していましたね。回転灯やレーザー、スモークなども自前で用意して力をいれたのものその辺から来ていますね。
コミケに来てくれているお客さんにクラブに来てほしかったので、CDの中にフライヤーを入れてみたり、夜じゃなくて昼間に開催したりしました。当時は昼のクラブイベントというのは殆どなかったので。GABBA DISCOの1回目は新宿のSpaceMという、歌舞伎町にあるビルの最上階にあるコスプレダンパ箱で開催しました。お立ち台もあって飲食物の持ち込みも出来る凄い良い箱でしたね。

Lemmy.
1回目は凄い盛り上がりだったよね。男子は殆ど半裸で写真が撮れない(笑)

JEA.
海外ゲストとしてはROB GEEを最初に招聘しましたね。あの時のROB GEEは凄く良かったです!また大体の人は半裸になってて(笑)
他にはオランダのハードコア野外フェスMysterylandに行って大変感動しまして、日本でこれをやるなら花やしきだなと(笑)。花やしきの屋上を借りようとしたら、屋上は危ないから…ということで園長の好意でホールを貸していただけて開催しました。「Mysteryland in 花やしき」っていう。遊園地で遊べてGABBAを聴けるっていうのは、ロジックは同じなんで(笑)

GABBA DISCOのフライヤーでイタリアのD-BOY RECORDSのガバっ子のイラストを勝手に使ってたんですが、それをD-BOY RECORDS主催のMC RAGEが知って「お前ら何勝手に使ってるんだよ!」と連絡が入りまして。「僕らはGABBA大好きなんで、是非ロゴデザインお願いします!」という事でD-BOY RECのデザイナーにロゴを作ってもらったりもしました。その縁でDigitalBoyとMC RAGEを日本に招聘してGABBADISCOに出演してもらいました。生で聞くFuck Macarenaも最高でしたね。

Q.
GABBA DISCOの後に開催された伝説的なイベント「OTAKUSPEEDVIBE」はどういった経緯で開催されたのでしょうか?

JEA.
そもそもの発端はTHE SPEED FREAKを呼ぶための企画だったんです。あと、恵比寿MILKでイベントをやりたいっていうのもありました。
HYPER RICHのSONIC DRAGOLGOさんがスピフリとドイツで会った時にお話をされたそうで「スピフリが日本に行きたいって言ってたよ」と話を振って貰って。僕はスピフリ来日をことごとく見逃していたので、やっとスピフリと近づけるチャンスがきたと(笑) それまでに3~4回は来日しているんですが受験やら何やらで日本でTHE SPEED FREAKのプレイを見れていなかったんです。
それで来日にあたってスピフリに要望を出したんです。95/96のSHOCKWAVEのセットでやってくれと。有難いことに容貌を引き受けて貰えて最高でしたね。一曲目からラムちゃんで。

オタスピのコンセプトとしては、僕の中ではTHE SPEED FREAK+MILK+日本国民、それともう一つ軸として関西に居たときに遊びに行っていたNO CARRIERっていうオフ会がありまして。NAMACOLANDっていう草の根BBSがあって、BlasterheadさんやC-TYPEさん、UTABIさんやHARRYさん他KAMISHIMOのクルーがいる結構ディープなBBSだったのですが、そのオフ会が難波CafeBlueで開催されていて。ゲームあり、Chiptuneあり、ハードコアありとその流れを持ってきたんです。
オタスピはその時僕が好きだったもの全てを持ち込んで完全再現したんです。

THE SPEED FREAK at OTAKUSPEEDVIBE VOL.1

Lemmy.
ゲームも持ち込んでね。スペースチャンネルを皆でプレイしたり。
よく覚えてるのがいつもクールなサイケアウツ1/2のお2人のテンションが高くなるほど、イベント自体に凄い緊張感があった。お客さんからのエネルギーも凄くて、ステージとフロアで戦うみたいな。オタスピが終わったら私達死ぬんじゃないかっていう位の達成感があった。

Q.
SHARPNEL SOUNDからTHE SPEED FREAKの作品をリリースしたり、リミックスを提供したりとJEAさんとTHE SPEED FREAKは長い付き合いをされていますが、始めて会った時の印象は覚えていますか?また、SPEED FREAKの知られていない以外な一面などありましたら教えてください

JEA.
初めて会ったときは、もう憧れすぎて逆にありきたりな話ししかできなかったですね。緊張しすぎて。当時僕が24位で、スピフリ先生が35歳だったんですが、今も印象はあまり変わってなくて、音に対してすごくストイックだし、仲間に対してはカジュアルだし、当時からオリジネーターの一人としてのオーラがありましたが、今なお第一線で居る事はひたすら尊敬ですね。ドイツの自宅にお邪魔した際にスピフリ先生の自宅のオーディオ鑑賞ルームを見せていただいたのですが、大量のDVDが壁一面に平積みされていて、完全にオタクの部屋でした。C-TYPE校長の部屋と同じ物を感じましたね。

Q.
OTAKUSPEEDVIBEは2013年に「OTAKUSPEEDVIBE RELOADED」として復活されましたが、再度OTAKUSPEEDVIBEを開催されたのは何故ですか?

JEA.
こちらはチェコのHARDTEKアーティストDr.LoOneyを招聘するためですね。彼のことは以前Frv100の頃からリリースを追っていたのですが突如音ゲー、アニメ、HARDTEKをミックスしたOHAYO!という凄い曲を出してきて。この人を見たい!ってなりまして、チェコ在住のTanukcihi君を通じて本人に連絡しました。RELOADEDの方は以前のオタスピと比較すると、結果的にサンプリングと高速BPMに寄った形になりましたが、以前のOSVと熱量は同じなんですよ。周りの方の見方は違って見えると思うけど。02年はアニメとハードコアをガチでぶつけるのは珍しかった。その後しばらくは日本のハードコアといえばアニメ+ハードコアという図式だったのが、シーンがオリジナル楽曲にシフトしてマジョリティとなっていく。アニソンクラブでもリミックスよりも原曲が求められる。そういうタイミングで、サンプリング+ハードコアが再び特異点になった。そういう時期に呼びたいアーティストが出てきて、タイミングが重なったなと。
逆に2006年とかにオタスピをやってたらよくあるイベントになってたと思います。

DR LOONEY Live @ OTAKUSPEEDVIBE RELOADED

Q.
SHARPNEL SOUNDは90年代から現在まで殆ど毎年コミックマーケットでCDを出されていますが、JEAさん達にとってコミケの存在というのは?

JEA.
何故コミケに作品を出すのかというと自分でブースを構えることによって実際に作品のやり取りができてお客さんと話が出来る、というのが大きいです。
僕等はGABBAシーンよりもコミケを含めた同人創作のシーンにスタンスをおいている、あくまで同人サークルなんです。自分としてもクリエイターという意識はなくて、同人作家って言われるとしっくりくる。
僕らにとっては夏と冬のコミケが主戦場という意識でやってましたね。イベントへの出演や主催も、コミケで遊びに来てくれる人にクラブに来て欲しいという所に力を入れてました。

Q.
アニメ以外にも多種多様なサンプリング素材を使われていますが、JEAさんのサンプリングミュージックに対する見解を聞かせてください。

JEA.
サンプリングミュージックにどこまで作家性があるのか難しいですよね。
庵野秀明さんはクエイターなのかサンプリング作家なのかっていうとサンプリング作家だと思っている。新しい概念を作り出すというよりも、彼が好きな物をマッシュアップして新しい要素を入れてあの形になったんだと思います。自分の好きな物を好きなように作りたいっていう気持ちと周囲のオリジナリティーを求める気持ちとのギャップがあると思いますが。音楽で言えば電気GROOVEの石野卓球さんもそうかなと。僕自身もANNを含めものすごい影響を受けています。
ハードコアでいえばTHE SPEED FREAKも庵野さんと同じように思います。フレンチコアのフォーマットに関してもRADIUMの作ったスタイルに彼の味付けを足してキャッチーにさせた。そういった事もあってスピフリに敵は多いけど、彼は天才ですよ。

フランスでは面白い法律があって。引用というものに対して引用から新しく生まれた物に創作性を求める法律が出来ているんです。それは文化的にやわらかい文化で。大体の物は過去の模倣からしか生まれないじゃないですか?模倣とサンプリングはどこに境界線上を引くべきかは難しくて、今の所日本だと模写やサンプリングは法律的には禁止されていますが、法解釈の中で引用っていう形態は許されている部分はあって、既存の言論に自分の意見を付け加えるのは引用として許されている。そのコンテキストを踏襲すればサンプリングも許される訳なんですが、サンプリングを許すことによって海賊版も許されるわけにはいけないので、その線引きが難しく日本は法律の引用を安全側によせていますよね。
そこのバランスを上手く運用できる社会になれば面白い表現は許されるし、庵野さんみたいに作品を成功させてやりたいことをやれる地位にまでいくっていうのもある。あの人がやりたいことが僕らのやりたいことだって伝わる。良い物を作りたいっていうのが大事ですよね。引用元にも想いが伝わるっていう。

Q.
プライベートな質問になってしまうのですが、お子さんが生まれた事はご自身の音楽活動などに何か影響を与えましたか?

JEA.
子供と接する時間は色んなインスピレーションを得られると共に、子供時代の自分と相対している感覚もあります。知識や経験という点では自分(親)の方が勝っているのは当然ですが、日々の成長速度はまったくかなわないですね。ライバル心ではないですが、新しい事にチャレンジする、物にしていくというモチベーションになりました。音楽に関しては、子供の中でのトレンドを素直に受け入れられるようになったと思います。子供の中で流行っているというのはものすごいエネルギーで、我々同世代が30人集まったとき同じ音楽に向き合ってないと思うのですが、子供は素でそういう状況に居ますね。たまたまレストランで隣の席になった子供と同じ歌を歌っている。過去に僕らが経験した細分化される前の音楽の姿が残っていると思います。

Youtubeのゲーム実況を介して、東方やニコニコのMAD文化にもフラットに接していて、僕たちが右往左往しながら清濁あわせもって経験してきたものを、短期間に並列に経験してるんだと思います。
Minecraftやマリオメーカー、開発言語のScratchやRaspberryPiを遊びとして楽しんでる子供にとって、ゲームも開発も全部フラットになっていて、そういう環境で育ったデジタルネイティブな子供たちがどういう社会を作るのかはとても興味がありますね。

Q.
2000年以降からビートマニアなどの音ゲーにハードコア・アーティストが参入された影響もあり、音ゲー主体のイベントも増えハードコアがダンスフロアから離れて行っているように見えますが、JEAさんはどう感じてますか?

JEA.
そもそも日本では極少数のハードコアファンがぽつぽつと局地的に存在したにすぎないので、随分環境はよくなったと思います。これはひとえにHARDCORE TANO*Cのクルーが育てた世界観だと思います。
現在のクラブイベントがコンサート的なイベントになっていると言われていますが、それって結局は二つ見方があって。クラブカルチャーの現場として捉えた時に楽曲を楽しむべきなのか、人を楽しむべきなのか、っていう。ヨーロッパでは楽曲で盛り上がっていると言われがちですが、結局の所は人で楽しんでる訳じゃないですか。個人のパーソナリティを媒介とした装置として、来ているお客さんの数を満たすことができるアイコンになっている。それは結果論なので、もしかしたら僕がそうなったかもしれないし、ブレイクコアでコアなことをやっている人がそうなったかもしれないし。

DJ文化に対してもそうですよね。繋ぐ繋がないとかも。結局テクノロジーじゃないですかね。皆が皆古典文学を読んでいる訳じゃないし。時代時代にあった文学は存在するわけで。
時代のコンテクストですよね。アーティストは先導する立場にいる人でもあると思うので、既存のコンテキストを踏まえつつ、ネクストコンテキストを作り上げていくっていう。世の中に無い物を世の中に居ない人に向かって作り続けるのは難しいですよね?
クラブカルチャーのあり方・かくあるべきは誰が定義しても「その人の定義」でしかない流動的なものなので、今の日本のハードコアシーンが本場の音を求めていないからといって、それをダンスフロアから離れたというのは違うかなと思いますね。

Q.
近年、SHARPNEL SOUNDはHARDTEKのリリースや楽曲製作をおこなわれていますが、HARDTEKの存在を知ったのはいつ頃からですか?HARDTEKはまだ日本ですと情報が少ないジャンルだと思うのですが、HARDTEKの定義というのは?

JEA.
2006年頃にELECTRO-VIOLENCEでレコードを買ったのが最初でした。アーティストとしてはMat Weasel Bustersから入りましたね。ELECTRO-VIOLENCEではHARDTEKをTRIBEとして紹介されていて。実はTRIBEと呼ぶのは日本だけみたいで、海外の人達はTRIBEと呼ばれるのは好まない。フリーテクノの起源から派生してTRIBEとして紹介されていたので解釈としては間違っていないとは思うのですが。

サウンド的にはベースのディケイに魅了されましたね。フレンチコアとは違った良さがある。サンプルもロシア民謡だったりとネタの使い方も面白いファニーな感じがある。
HARDTEKの定義は難しいんです。原産国はフランスで南フランスのトゥールズ辺りにHARDTEKのクリエイターが皆そこに住んでいる。発祥としてはミニマルテクノを45回転にして高速化させた所から始まっているみたいなんですが、音的に定義が中々言えない。
Fant4stikが来日した際のインタビューで、HARDTEKの思想として「ハードコアは恐怖と廃頽のイメージなので子供に悪い影響を与える。HARDTEKはアンチディストーションで子供にも楽しめる音楽なんだ」と定義していました。そこは僕もすごくシンパシーを感じた部分で、ハードコアにだって格好つけずにバカっぽく遊べる音楽があっていいんだと納得しました。

Q.
HARDTEKの今後の活動は全てVR(Virtual Reality)に以降されるとの事ですが、VRを意識されたのはいつ頃からでしょうか?

JEA.
僕が小学校の頃にVRブームがあって長年VRには執着していて。いつか自分の手でVRをコントロール出来る時代が来るのを憧れてましたね。5~6年前にも40~50万でVRのソリューションは出ていたんですが、まだまだ見える範囲も小さいし、産業用で誰もが見れるような状況ではなくて。
それが2014年になってOculusDK1、そしてDK2が出てきたときにこれはいよいよパーソナルVRの時代が来たな、と。昔バーチャルボーイってあったじゃないですか?あの当時に思い描いたものが現実になってきていますよね。

Q.
VRに以降されてからの活動というのを詳しく教えてください

JEA.
今後の活動とては基本的に時間と場所に制約が生まれる活動からは離れてネット空間を主体としたバーチャルに移行していきます。正直なところ、やろうと思えば即売会もライブ活動も続けていく事は出来るのですが、やり続けた先に発展していくとは思えなくて。時間的にリソースも限られているし、その片手間でVRもリアルも両方やろうとすると活動の密度としては全部が薄くなっちゃうじゃないですか。リリースも即売会もイベントも力がかけられないし。昔の曲だけでライブをやっていくのか?というと違うなと。

僕個人としてはVRに力を入れて行きたい。VRはまだそんなに大きくなっていない、これから大きくなるものじゃないですか。2014年にDK2を手にしてからVRにはコミットしているので、自分のやっている音楽の流れとVRのテクノロジーの流れを二つ合わせていける優位的なポジションにいるなと思っています。なので、あえてリアルワールドでの活動をやめますと宣言することで、自分に対して覚悟というか中途半端にやるならやめようという位置づけです。
VRなら日本だけでなく世界中をターゲットに出来る。即時性が無くてもいいし、あってもいい。自由度の高さと世界の広がりに魅力を感じています。
VRは遠い世界じゃなくてもっと身近な物になっていくと思います。

Q.
VRが一般的になることによってクラブなどの現場はどうなると思いますか?

JEA.
現場はレガシーなので無くなることはないと思います。
これからは、音ゲーと同じでVRでしか音楽を知らない人が出てくると思います。
僕らの次の世代。今の子供はTVじゃなくてYOUTUBEを見ていますよね?それって、僕等からするとYOUTUBEってあくまでTVのオルナタティブだった訳ですが子供にとってはメインになってますよね。
TVがなくならないのと同じで現場も無くならない。YOUTUBEなりネットメディアが進化していってVRと結びついて体験価値が高まる。VRでしか僕等を知らない世代も出てくる。なので今までに僕等のライブを見てくださった方はリアルでSHARPNELを見たことあるっていうレジェンドクラスタになるかもしれません(笑)

音楽をリリースする価値観っていうのも変わっていくと思います。サブスクリプションサービスやSoundcloudを見ていると、どんどん即時的な体験価値に変わっているように思います。例えば、YOUTUBEの生放送をやっている人はDVDを出さないじゃないですか?そういう感じかな。音楽をパッケージするのはポータブル性があるし、自分でコントロール出来るから価値があると思いますけど、僕自身は体験価値を提供する上でどういう価値交換のモデルがVRで実現できるのかを模索したい。

Q.
VRへの完全以降はいつ決心されたんですか?去年に過去のリリース作品を纏めた「SHARPNELSOUND CHRONICLE」をリリースされましたが、VR以降への伏線だったのでしょうか?

JEA.
いや、それは関係ありませんね。伏線をはっていったわけではないですが結果的にそうなったかもしれません。決心したのは今年の6月になってからですね。理由としてはDJ SHARPNELが商業的な場所で使われる名前になってきたので、サンプリングベースで活動すること上での線の引き方がコントロールできなくなってきて。
もう一つは「ワールドスーパーテック大戦」シリーズを主軸として近年はリリースしてきたのですが、昨年リリースした「ワールドスーパーテック大戦Quatrieme」でやりきったなと。毎回前の作品を超えていかないといけないのですが、今4枚目のラインナップを越えられる物を考えられない。同じ物を繰り返していくのはつまらないので。あとは自分自身の仕事の兼ね合いなどもあって、現実世界の活動終了を決意しました。

Q.
今後は音源をCDで発表されないのでしょうか?リリースの形態はどうなるのでしょうか?

JEA.
楽曲製作は続けていきますね。ライブはVRの方にシフトすべく、方法論をアメリカの企業と組んで模索しています。
今までの活動の違いでいうとフィジカルリリースはなくなりますね。
楽曲を集約したアルバム的な物は今の所なんとも言えないのですが、サンプリングを主軸としたハードコアな楽曲は、SHARPNEL SOUNDとしてはネットには出さないと。それは決めています。
そういった物はどういう形で今後出していくかは自分としても楽しみにしていこうかなと。今後はVRアーティストみたいな位置づけにいければいいなと思っています。同人というフォーマットにもいないので。

Q.
今後の同人音楽シーンはどうなると思いますか?

JEA.
コミケという場所と本やCDのフィジカルでのリリースは残っていくと思いますが、ネットやVRと隔離された世界のままではいないと思います。コミケをどうやってネットの世界にもっていくかっていうのは議論になっていて。色々な試みもおこなわれていますよね。Pxixvとかでもイベントをやっているじゃないですか?
コミケならではでの体験価値と、ネットでの体験価値は違いますし、現実世界でコミケを楽しくさせている要素をネットに持ってくるとなると、例えばネットでも並ばなくてはいけないとかね(笑)。最前列に来ると決済が出来てお話が出来るなどの制限をかけてあげると現実を再現すればコミケと同じになるかもしれません。
VRインフラみたいなのが整ってきたら自然とそういう感じになるのかなと。

Q.
JEAさんにとってファンの方というのはどんな存在なのでしょうか?

JEA.
自分と共感していただける人達、仲間意識という方が強いですね。
自分達の作品を、ゲームの中でプレイしていただいたり、CDとして買っていただいたりすることで、ファンの方が生み出したお金と交換しているのですが、楽曲はたまたま僕が作り出しただけで、気持ちの上では一緒に作っていると思っています。勝手にね。

引退しますという訳ではなくて、僕等のこれまでの活動の延長線上にVRを位置づけているので、一緒に楽しみましょうと。
現実の体験というのも感覚的に入力されて脳の中で感動となる訳じゃないですか。実際に色々なVRのコンテンツを体験しているんですが、今の所映像だけですが、そこで得られる感動は等価だと思っているんです。そういう意味でリアルワールドでのライブの価値とVRでの価値では、今のところリアルワールドでの価値のほうが高いと思いますが、これから数年たっていけばVRの体験の質が上がっていきます。
その時に僕らはこんなに面白いことやってるよという確信の元にやっています。昔から僕等を見ている人はわかっていただけると思いますよ。VRに行くんだって。

Q.
今までJEAさんが発表して来た楽曲で最も思い入れのある曲は?

JEA.
色々な経過を通してライブでずっとやっているBlueNoahかな。アルバムでは「悩殺ハードブレイク」が一番思い入れ深いですね。

Q.
JEAさんは20年に渡って音楽活動を続けられていますが、音楽活動を続けることによって得られた事であったり、やっていて良かったと思えた事や出来事はありますか?

JEA.
音楽活動をしていることが自分としてはナチュラルな状態で続けられているので、それは逆に言うと色んな人に色んな迷惑をかけながら自分勝手にやってきたということでもあるのかなと思います。そういう環境に恵まれていた事には感謝したいと思います。
長年音楽をやっていて良かったのは世界中だいたい何処に行ってもコンタクトできる人がいることですね。海外でライブの機会も増えてきて、ネット上で10年20年越しの知り合いと実際に会うという体験は毎回感慨深いものがあります。

Q.
3月にUKのフェスティバル「Bangface」に出演されるそうですが、今後の活動予定を教えてください。

JEA.
イギリスのブレイクコアアーティストShitmatが来日した際にBangfaceに出演させたい日本人リストに僕の名前をいれてくれていて、それですぐに行く事にしました。Shitmatとは10年以上前に来日したときに仲良くなって、MSN Messengerでコンタクトしながら楽曲の依頼とかも行っていました。その後音信不通になったりしてましたが、今回来日で元気に暴れていて良かったです。
Bangface当日は同じ時間帯でThe Speed FreakやRadium、The DJ Producer、Lenny Dee、Panaceaなんかもプレイしているので、現地での出演と同じくらい楽しみにしています。
http://www.bangface.com/events/weekender2017

4月23日には原宿Wall&Wallで開催されるUPSHIFTというイベントでDJ Sharpnel / Sharpnel.netとしてのファイナルステージを行います。Cyclik ControlのDustvoxx君が主催で、ゲストにFant4stik、FarTooLoudが出演します。
http://www.cyclik.jp/upshft1
SHARPNELSOUND作品デッドストックの蔵だしもできればと思っていますので、是非とも我々の現実世界からの旅立ちを見送りに来ていただければと思います。

Q.
最後に読者の方にメッセージをいただけますか?

JEA.
今現在はクラブシーン全体の歴史の中で一番面白いタイミングにいると思います。
過去の音楽をオールドスクールとして取り込み、クロスオーバーさせた新しい音楽が新しいテクノロジーの力で世界中と共有していける、夢みたいな環境がナチュラルに生活の中に広がっています。是非進化する音楽を体験しつづけてもらいたいなと思います。
近いうちにあなたの部屋にヘッドマウントディスプレイ経由で出演しますので、その時には是非VRのご用意をお願いします!あとそれから、ドンドンドーナツどーんと行こう!これですね。

インタビュー: GHz Stuff
※このインタビューは2016年10月22日に行われました。