ハードコア・パンク、インダストリアル、ヒップホップにブレイクビーツ・ハードコアやハードコア・テクノといったレイヴ・ミュージックの音楽性と思想を融合させた「デジタルハードコア」。その誕生から30年以上が経った現在、ジャンルが持つ可能性は再び大きく広がり始めています。
デジタルハードコアのサウンドと概念はAlec Empire率いるレーベル「Digital Hardcore Recordings(以下DHR)」に所属するアーティスト達によって形作られ、90年代半ばから2000年代初頭にかけて世界的な音楽ムーブメントへと発展しました。その後、デジタルハードコアに影響を受けたアーティストがさらに多様な音楽的要素や独自の解釈を取り入れ、その精神性とサウンドはブレイクコアをはじめとする音楽へと受け継がれていきました。
2000年代以降、デジタルハードコアは以前ほど大きな注目を集める機会が減っていきましたが、2020年代に突入後、新世代のアーティスト達が牽引する形で再び活発な動きを見せ始めています。
ここで取り上げるデジタルハードコアとはDHRが提示し、発展させてきたサウンドと思想を出発点としながらも、その枠組みにとらわれず根底に流れる精神性を共有しながら現代ならではの解釈と手法によって新たな表現を生み出している音楽です。デジタルハードコアの原点と深く結びつきながらも、かつてないほど自由な形で発展を続ける現代のシーンから、今こそ注目したいアーティストをピックアップしてご紹介します。
GATERROR – THE ONLY GOOD RAVER IS A DEAD RAVER
90年代のデジタルハードコアやスピードコアが持っていた粗削りな音質や原始的な衝動を現代にそのまま蘇らせたかのような新世代のエクストリーム・サウンドでUSレイヴ・シーンからパワーバイオレンス、ブレイクコア界隈までを巻き込み、熱狂的な支持を集めているGATERROR。
破壊衝動をそのままガバキックとノイズに込め、一切の妥協なく叩き込むその楽曲には他の追随を許さないほどの生々しさが宿り、聴き手を圧倒します。時には流血を伴うほど身体を酷使するライブ・パフォーマンスもその音楽と同様に観客へ強烈な衝撃を与えており、異例の頻度でライブを重ねています。
昨年リリースされた1stアルバムである本作には、GATERRORの音楽的ルーツと根源的な衝動が凝縮されており、正真正銘のデジタルハードコアの最新形態と呼ぶにふさわしい作品です。12月に開催されるMURDER CHANNELの22周年記念イベントではCoakiraとのライブ・セッションとソロ・パフォーマンスが決定しているので、是非ともフロアで彼女の剥き出しのサウンドを体感してください。
BIJŪ(美獣) – HAKKEN TAG TOURNAMENT
この投稿をInstagramで見る
NOZOMI(Vo)、星ひでき(Vo. Prog)、セリヌンティウス藤澤(Vo. Artwork)からなるデジタルハードコア・コレクティブ「BIJŪ(美獣)」の1stアルバム。今年4月のリリース直後からその独創的な音楽性で注目を集め、早くもアンダーグラウンドの枠を越える勢いを見せています。
デジタルハードコア特有のノイズやディストーションを単なる音響的な表現にとどめず、その根底にある感覚や精神性を楽曲の内部に取り込み、ハードコア・ガバや90’sレイヴ・サウンドを軸としたダンサブルなスタイルを展開。作曲からアレンジ、楽曲構成に至るまで卓越した能力を発揮しており、その確かな音楽的技量によってジャンルの枠を越えて幅広いリスナーから支持されるポピュラリティも兼ね備えています。
2020年代のデジタルハードコアを体現すると同時に、その先の未来まで見据えた日本独自の音楽文化や感性から生まれたサウンドは海外でも大きな存在感を放っていくことでしょう。
Deli Girls – Losing State
政治的なメッセージを前面に押し出す徹底した活動姿勢とトラップやハイパーポップを大胆に解体/再構築する現代的な感性を融合させ、現代アメリカの社会が抱える矛盾や緊張を生々しく映し出すDeli Girls。
EC8ORやLolita Stormに通じるガレージ・パンク的な荒々しさと衝動をサウンドに宿しながら、何よりも政治的な主張を活動の中心に据えるその姿勢はDHRが掲げてきた思想をさらに徹底して実践しています。作品ごとに大胆な音楽的変化を遂げ、既存のスタイルにとどまることなく常に新たな表現を模索し続ける姿勢も刺激的です。
本作はIndustrial Strength Recordsからリリースされ、Lenny Deeによるリミックスも収録。これまで以上にバンド・サウンドに特化し、剥き出しの衝動と荒々しさを増幅させ、ハードコア・テクノの要素も大胆に取り入れた意欲作です。
Nevis Taiga – The Degrader
DHRからの影響を驚くほど真正面から打ち出した作品で、熱心なデジタルハードコア・ヘッズから高い評価を集めているNevis Taiga。
DHRへの愛情があふれるオマージュ満載の作品は単なる模倣にとどまらず、その音楽性や精神性への深い理解と共感を独自のアプローチで表現しており、そこには彼ならではの創造性と探求心が感じられます。DHRのスタイルを徹底的に追求しながらも、その表現方法には現代ならではの感覚があり、デジタルハードコアの新旧世代を結びつける役割も果たしています。
本作ではBloody Fist Recordsへのオマージュも捧げられており、スピードコアやオーストラリアン・ハードコアのファンにも推薦したい一枚です。
GATERROR出演イベントはコチラ⇩
