活動終了までのカウントダウンが始まったインダストリアル・メタルのパイオニア「Godflesh」。間もなくリリースされるニューアルバム『Decay』にあわせて、今回はあえてGodfleshではなく、Justin K Broadrickのソロプロジェクト「JK Flesh」にフォーカス。
2012年にスタートしたJK Fleshはインダストリアルという音楽をさらに掘り下げながら、Justin K Broadrickの音楽的原体験と根源的な衝動をサウンドへと昇華してきました。主にテクノ・シーンから高い支持を集めるJK Fleshですが、これまで残してきた作品には数多くのジャンルを独自に解釈し、自らの音楽へと変換してきたJustin K Broadrickという音楽家の本質が感じられます。その意味でも、JK Fleshは彼自身の音楽的遍歴を記録し続けるドキュメンタリーのようなプロジェクトといえるでしょう。
Godfleshの核となる要素を別角度から抽出・増幅したJK Fleshを知ることで、Godfleshの音楽もまた違った角度から見えてくるはず。GHzが推薦するJK Fleshの作品をチェックしながら、ニューアルバム『Decay』のリリースに備えましょう!
Posthuman+
2012年に3BY3から発表された記念すべきJK Fleshの初作品。ダブステップから影響を受けたビートとベースを軸としたトラックに、Godfleshを彷彿とさせるボーカル&ギターを重ねた異種混合のスタイルを披露。90年代からTech Level 2名義でドラムンベースのレコードをリリースするなど、UKダンスミュージックをリアルタイムで体験し、自身の音楽へと取り込んできたJustin K Broadrickだからこそ、ダブステップも表面的な引用ではなく、その構造まで深く理解していることが伝わってきます。
ダブステップを経由しながらポスト・ドゥームとも呼べる独自のサウンドを構築しており、JK Fleshの初作品にしてこのプロジェクトの根幹を鮮明に映し出した名作です。
Nothing Is Free
2015年に自身主宰レーベル「Avalanche Recordings」のBandcampで公開されたアルバム。2013年から2015年にかけて制作された楽曲で構成され、Techno Animal期を連想させる重量感に満ちたダウンテンポやインダストリアル・ダブを主体とした内容。2016年にはインダストリアル・テクノの名門レーベル「Downwards」からレコード化され、Surgeonによるリミックスも収録されました。
JK Fleshが後にテクノへと接近していく過渡期を捉えた作品であると同時に、Justin K Broadrickの音楽的美学が色濃く表れた一枚。GodfleshにもJK Fleshにも共通して言えることですが、スロウなテンポと重く反復するビートが生み出す圧倒的な重量感と陶酔感の中にこそ、Justin K Broadrickが長年追い求めてきたものがあるのでしょう。
Wasplike EP
AnD、Ryuji Takeuchi、ANFSといったアーティストのレコードをリリースしてきたインダストリアル・テクノ系レーベル「Inner Surface Music」から発表された4曲入りEP。JK Fleshのテクノ・スタイルを確立した重要作であり、バーミンガム・テクノの根源的な精神が息づく一枚。JK Fleshならではのリース・ベースを巧みに取り入れたトラックや、ダブが持つ幻覚的な感覚をインダストリアルな質感と融合させた楽曲など、まさにUKならではのサウンドを展開。
アウトプットとしては明確にダンスフロアへと向けられていますが、その深部には反ダンス的で内省的な感覚が潜んでおり、この相反する要素の共存こそがJK Fleshのテクノ・トラックを唯一無二のものにし、ジャンルを越えてさまざまなリスナーを惹きつける理由なのでしょう。
In Your Pit EP
30年以上にわたり共作を重ねてきた盟友Kevin Martinのレーベル「Pressure」からリリースされたEP。JK Fleshが提唱する「Slow Motion Industrial Dread Techno」を具現化した麻薬的な快楽をもたらす危険な作品。Godfleshでも追求されてきたリフとビートの反復、圧倒的な音の重量、そしてその先に生まれる全身を揺さぶるカタルシス、それらをダンスミュージックのフォーマットへと落とし込み、新たな形として提示した発明的な一枚です。
Godfleshにおけるダブへのアプローチとも深くつながっており、Godfleshの根底にある音楽的美学を別角度から浮かび上がらせた作品ではないでしょうか。本作で提示されたアイデアをさらに突き詰めたアルバム『Sewer Bait』も必聴です。
Light Bringer
長年にわたりインダストリアル・テクノの最前線で活動してきたユニット「Orphx」とのライブセッションを作品化。インダストリアル、テクノ、パワーエレクトロニクス、ドローン、ダブの要素が幾重にも重なり合い、ジャンルが無効化した剥き出しの音の塊がここにあります。
アカデミックな文脈から論じられることが多い作品ですが、その根底には体にダイレクトに作用する原始的な衝動が貫かれています。クラブとライブハウス、テクノとノイズ、メタルとダブ、一見すると交わることのない音楽や文化を結びつけてきたJustin K Broadrickの長い音楽遍歴がOrphxという最高のパートナーとのセッションに凝縮された作品です。