“GHz Interview17” Miii

GHz Interview

先日、3年ぶりとなる作品集『Plateau』を発表したオルタナティブ・ベースミュージック・アーティスト「Miii」さんのインタビューを公開!
音楽的ルーツから最新作『Plateau』の制作秘話までいろいろとお話をお伺い致しました!


Miii

https://soundcloud.com/miii
1992年生まれ、東京在住。アングラ音楽家/DJ。2004年よりパソコンを用いた楽曲制作を開始し、青春時代を宅録、トラックメイクに費やす。BreakcoreやDubstepをバックグラウンドに持つ変幻自在なサウンドと、Post RockやJ-Indie Rockを通過したエモーショナルな展開とメロディを武器にリスナーを圧倒する。東京女子流、夢眠ねむ、DJ TECHNORCH等の公式リミックスや、オルタナティヴラップグループYOCO ORGANとの楽曲制作、NO+CHINの楽曲アレンジ等を手がける他、アーバンギャルドの楽曲の非公式リミックス「傷だらけのマリア (Miii’s Subculture Blood Remix)」が公式に紹介される等、様々な方面において注目を浴びている。2014年2月には〈Maltine Records〉より1年9ヶ月振りのEP『Everything Happens To You』をフリーリリース。2014年6月30日、Miii初のソロCDミニアルバム『Textural Nightmare』を〈Murder Channel〉からリリース。


Q.
Miiiさんが音楽に興味を持ったキッカケを教えてください。

元々は、小学生の時にビートマニア、ポップンミュージックなどの音楽ゲームにハマっていて、テクノ、ハードコア、ドラムンベースなど様々なダンスミュージックのことを音ゲー経由で知りました。

Q.
楽曲制作を始めようと思ったのは何故ですか?ご自身の曲を最初に公開したのはいつ頃ですか?

小5くらいの時から自宅にパソコンがあって、それを触ってFlash動画などを見ていた時期がありました。
そこで創作に興味が出てきたのですが、BMSというパソコンで出来る音楽ゲームフォーマットを同時期に知って、その時初めて「自分にも音楽が作れるかもしれない…」と思い、作り始めました。当初は機材を買えるはずもなく、MODPlug Tracker系列のフリーソフトを駆使して楽曲を作っていました。
当時はmuzieというインディーズ向け音楽配信サービスがあったので、そこで楽曲を配信したり、BMSフォーマットで「音楽ゲーム」として作品をリリースしたりしていました。

Q.
dust.c名義ではブレイクコアなどの楽曲を作られていましたが、どういったキッカケでブレイクコアに興味を持たれたのですか?

HARDCORE TANO*C などのハードコアテクノレーベルの影響を受けていて、そういったテイストの音楽を求めていた時期に、当時の知り合いに教えてもらったVenetian SnaresとSpeedranchの合作アルバム『Making Orange Things』を聴いたことが直接のキッカケだったと思います。とにかく度肝を抜かれました。
dust.cという名前は元々「dustcloth」という名義だったのですが、これはとにかくブレイクコアのダーティでどうしようもない感じを出そうと中学生なりに考えていたんだと思います(笑)。


Q.
国内/海外のブレイクコア・アーティストで影響を受けたアーティストは?

国内だと多分最も影響を受けたのはCDR氏とMaruosa氏だと思います。一時期はCDR氏のアルバムとRenda rec.からリリースされていた『Tsunbosajiki』ばっかり聴いていました。
海外だとDev/Null、Undacova、Toecutterは特に聴き倒していたと思います。Otto Von Schirach、Kid606辺りも好きでした。
ちなみにVenetian Snaresで言うと『Higgins Ultra Low Track Glue Funk Hits 1972-2006』と『Doll Doll Doll』が特に好きで、このあたりの影響は大きいです。

Q.
“Miii”としての活動を始められたのはいつ頃からでしょうか?

2008~9年頃からだったと思います。それまで名義をdust.c含め流動的に使っていたのですが、その頃から意識してMiiiという名前を使うようになりました。

Q.
始めて人前でライブ(もしくはDJ)をされたのはいつですか?

15歳の時だったらしいので、2007年頃だったと思います。早稲田の茶箱というとても音のいい箱で、若さ全開のライブをやらせていただきました(笑)。

Q.
10代の頃に音楽活動において目標とされていた事などはありましたか?その中で現在までに叶った事はありますか?

〈ROMZ〉や〈19-t〉にあこがれている部分がとても大きかったので、とりあえずああいったパッケージングでCDを作って流通に出す、という目標はありました。当時は10代の若手が1人でCDプレスして全国流通まで持っていけるような環境が無く、ましてやBandcampみたいな配信特化のサービスも無かったので。
2014年に〈Murder Channel〉で『Textural Nightmare』をCDリリースすることが出来たので、願いは叶ったと言えると思います。
ちなみに『Textural Nightmare』がリリースされて、タワーレコードで展開された時の様子が、何故か若者の経済にまつわる某新書で紹介されていて、その中で僕は「エバンジェリスト」として名前が載っています(笑)。

Q.
ダブステップをいち早く自身のスタイルに消化させてオリジナリティのある楽曲を発表されていましたが、ダブステップのどんな所に魅力を感じていましたか?
また、近年のダブステップに関してはどう思われていますか?

当時Bassline Houseが流行りだした時期に流れでDubstepを聴き始めたのですが、単純にWobble Bassの造形が凄く好きになって。あの音はシンセシスの最新型だと今でも思っています。
Skrillexが出てきた当初はロック臭さというか、迫力一発勝負みたいなところがフォーカスされていた気がしますが、良い感じにEDMがメインストリームになった現在だと、US系のDubstepシーンもフェス向けに音のグルーヴが洗練されてきて、ずっと飽きずに聴けています。
現在一線で活躍されているアーティストは大体好きなのですが、特にMUST DIE!、Getter、Oolacile辺りが好きです。特にGetterはフェス型Dubstepの最新系という感じがして、楽曲もとてもフレキシブルで面白いです。

Q.
現在までに数多くの作品を発表されてきましたが、ご自身の中でターニングポイントとなった作品はどれですか?

2014年、『Textural Nightmare』をリリースした後に作った「An Invisible Storyteller」という楽曲です。
あるライブの前日に1晩で作り上げた楽曲なのですが、それから現在までライブアクトでも毎回プレイしている楽曲です。
それまでは自分の思想のために音楽を作るのか、それともクラブツールとしての機能のために作るのかについて迷いながら活動をしていたのですが、この曲を出したくらいから徐々に吹っ切れていきました。
https://itunes.apple.com/jp/album/an-invisible-storyteller/id949327052

Q.
楽曲製作のプロセスを教えてください。

常日頃インプットしている音楽や作品の中から、面白そうなアイデアや音を記憶しておいて、PCに向かった時にそれをとっかかりに作っていきます。メロディフレーズや展開などは全部行き当たりばったりにまかせています(笑)。

Q.
Miiiさんの楽曲ではビートのアプローチ(崩し方など)やプログレッシブな展開も特徴的ですが、ビートや楽曲の構成を作る時に大事にしている事はありますか?

常に茨の道を突き進むことです(笑)。特に、優等生っぽいループや展開が出来上がってしまった場合は大抵没にしてしまいます。
あとは、使用している機材やDAW(Ableton Live)の特性に振り回されたり、たまたまクリックしたサンプルを無理やり使ったりなど、自分の手には負えない偶発性をある程度盛り込んでおくのがポイントかな…と思います。

Q.
ニューアルバム「Plateau」の製作が始まったのはいつからですか?アルバム製作で新しく挑戦した事や苦戦した事はありますか?

2016年の秋頃から制作に取り掛かりました。
「長編のアルバムにする」というのが目標の一つとしてあったので、どういった展開を盛り込んでいくか? 全体のバリエーションをどこまで広げるか?ということについては結構考えさせられました。
また、製作のために新たな音源などを大量に導入しているので、正直アルバムがしっかり売れないと元が取れないです(笑)。

Q.
「Plateau」では多摩地区を主題とされているそうですが、多摩地区とはMiiiさんにとってどんな場所なのでしょうか?

僕の生まれ育った場所が東京の三鷹というところなのですが、渋谷や新宿といった都会のイメージにも、かといって郊外的なイメージにも馴染めていない、どこか浮いた感覚というのがこの場所にはずっとありました。
そこで、今回はこの地区の特異性というものにフォーカスを当てよう、と思って製作しました。

Q.
「Plateau」収録曲の中で最も思い入れのある曲は?

「Frail Ghosts」という楽曲は、アルバムの構成としてどうしても不可欠だった曲で、当初収録する予定だった没曲のフレーズを盛り込んだりしているので、とても思い入れがあります。表現技法としても、急展開を入れるクセを出来る限り排除して、10分間ひたすらミニマルに厚みを増しながらラストまで持っていく、という今まであまりやったことのなかった展開に挑戦できたのはよかったと思っています。

また、「Hide & Seek」という楽曲は、自分の技術的な枠を一気に押し広げることができた楽曲だったので、非常に自信があります。

Q.
これからの音楽活動において表現してみたい事や挑戦してみたい事はありますか?

今作が非常に重量のある作品になったので、暫くはもっと「わかりやすい」ものを作れるように頑張りたいと思います(笑)。
あと、最近色々と楽曲を掘っていて、皆さんにご紹介したいアーティストや曲も溜まってきたので、DJとしての活動も精力的に行っていけたらなと思っています。

Q.
今後のリリース/イベントなどのご予定があれば教えてください

3月3日に渋谷VISIONというクラブで「Trackmaker」というイベントに出演させていただきます。これがリリース後最初のライブアクトになる予定です。
http://www.vision-tokyo.com/event/trackmaker?event=club&lang=

次のリリースは、現在進行中の『symbols as mythology』というプロジェクトになると思います。4〜5曲くらいのEPとしてリリースが出来ればと思います。
『Plateau』収録楽曲のほぼ全てを、リリース前からライブでさんざっぱらプレイさせていただいているので、特段ツアーやリリースイベントなどは行わず、次の展開をはやくお見せするための準備に専念したいと思っています(全面的にイベントのお手伝いをしてくださる方がいらっしゃれば別ですが…笑)。