レーベル特集① / Ad Noiseam

レーベル特集

GHz Blogにて毎回一つの海外レーベルをピックアップして紹介するレーベル特集をスタート。
第一弾はブレイクコアからネオクラシック、ダブステップ、ポスト・ジャズ、ダークアンビエント、ハードコア・テクノまで幅広い作品のリリースで世界中のアンダーグラウンド・シーンに影響を与えたドイツのレーベル「Ad Noiseam」を紹介!

Nicolas Chevreuxによって2001年にベルリンを拠点に活動をスタートさせたAd Noiseamは当初リズミック・ノイズやテクノイズ系を中心にTarmvred、Somatic Responses、Combat AstronomyなどのIDMやインダストリアルのテイストを持った電子音楽をリリースしていました。
2003年になるとLarvaeやCdatakillといったブロークン・ビーツやブレイクコア・アーティストもリリースしていくようになり、インダストリアル的なサウンドをベースに先鋭的な作品をリリースしていき、この頃からAd Noiseamのレーベルカラーがハッキリと明確になってきています。


2004~06年にかけてブレイクコアにフォーカスを当てた展開をしていき、Bong-Ra、Cdatakill、Cakebuilder、Curtis Chip 、Enduser、Drumcorpsの名盤アルバム/EPをリリース。特にAd Noiseamからリリースされた「Drumcorps ‎– Grist」、「Bong-Ra ‎– Grindkrusher」、「Enduser ‎– Bollywood Breaks」はブレイクコア・ファンにとっては無視出来ない超名作です。
ブレイクコアと並行してDälek、Detritus、Exillon、Mad EP、Mothboyといったヒップホップ~ブロークン・ビーツやIDM/エクスペリメンタルの作品もリリースしていき、Ad Noiseam独自のレーベルカラーを強めていきました。



2007年以降はドラムンベース/ダークステップやインダストリアルのエッセンスを交えたノイジーなダブステップをメインに、The Kilimanjaro Darkjazz Ensemble/The Mount Fuji Doomjazz CorporationやAaron Spectre、Subheimなどのダークジャズ~アンビエント~ポスト・エレクトロニカの作品も発表。そのどれもが個性的でクオリティが高く、Ad Noiseamはアンダーグラウンドの電子音楽シーンには欠かせない重要なレーベルへとなりました。
この時期で印象的であったのはハード・ドラムンベースにエレクトロニカの要素を交えたダークでメロディアスなドラムンベース・スタイルを提示したDJ Hiddenの1stアルバム「The Later After」やダブステップを独自に解釈した超絶ヘヴィーなインダストリアル・ドゥーム・ダブステップを披露したScornの「Stealth」、Broken Noteのデビューアルバムにして超名盤「Terminal Static」、そしてIgorrrの「Nostril」がAd Noiseamからリリースされていて、これらのアルバムはファンの間でも未だに人気の高い作品です。


ブレイクコアやドラムンベース/ダブステップのリリースが増えていく中でもインダストリアルや実験音楽への新しいアプローチも強くサポートしており、Ad Noiseamがベルリンで運営していたレコードショップやWeb Shopでは世界中の様々なアンダーグラウンドのレーベルの作品を紹介し続けてきた功績は大きいでしょう。

その後は当時次世代のニューカマーであったGore TechやRuby My Dear、Niveau Zero、2methyl、Swarm Intelligence、Techdiffのアルバムやシングル、EPをリリースすると同時にThe Outside Agency、Machinecode、Hecq、Detritusといったベテラン達の作品もリリースしていき、ブレイクコア~インダストリアル~ハードコアだけでは無く初期のAd Noiseamが持っていた実験的な要素もキープしており、Stavros GasparatosやBen Lukas Boysenといったネオクラシカル系の作品も手掛けていました。


そして、2015年には世界中のファンが待ち望んでいたDrumcorpsの2ndアルバム「Falling Forward」やDJ Hiddenの4thアルバム「Directive」、今ではインダストリアル・テクノシーンをリードする存在へとなったOntalの1stアルバム「Entropia」などの素晴らしい作品をリリースしていましたが、突如レーベルオーナーのNicolas ChevreuxがAd Noiseamの活動停止を発表。このニュースはアンダーグラウンドの音楽シーンに非常に大きなショックを与えました。

Nicolas ChevreuxとAd Noiseamが提示した良質な音楽にはジャンルは関係無く、新しいアーティストも昔から活動しているアーティストも同等にリスペクトを持って素晴らしい作品を作り上げていく姿勢には非常に感銘を受けました。
彼等が残した作品は特にブレイクコア・シーンにとって大きな影響力があり、ブレイクコアの名盤とされる作品の多くがAd Noiseamからリリースされています。
その他にもインダストリアルの新たな解釈やノイジーなダブステップなど、Ad Noiseamが押し出していた極端かつ知的な作品達は時代を超えて今も新鮮に聴く事が出来る物ばかりです。

この機会に是非Ad Noiseamの偉大な作品達に触れてみて頂けたら幸いです。