GHz対談VOL.2 – 林田球 x Ume(Murder Channel) – 



GHz Interview, Murder Channel

先日公開した「林田球 x Ume」の対談後半!
今回は2016年を振り返りつつ、映画や漫画などのコアな部分を掘り下げる貴重な話が満載です!

GHz対談VOL.1 – 林田球 x Ume(Murder Channel) –
http://ghz.tokyo/2016/12/26/ghz_taidan_pt1/



Ume
:2016年も残り僅かですが、今年はどんな年でしたか?

林打球(以下・球):速かったですねー。ただひたすら仕事してました(笑)。プライベートでは箱根に行ったくらいですかね。

Ume:いや~、本当に一年が速かった、。まさに疾走の年でしたね。今年は音楽だったり映画だと、どんな作品が良かったですか?

:音楽だったら、DJ Khalab & Baba SissokoとRuelle、あとは昔のですけど「地獄の黙示録」のサントラはよく聴いてましたね。
映画だと、「シビル・ウォー」にハマりました。4DMXとIMAXとで2回見に行きましたし、ブルーレイを買ってまた2回見て(笑)。たくさんスーパーヒーローが出ているのに、みんなそれぞれ見せ場があって、ユーモアさとシリアスさのバランスが絶妙でストーリーも面白かったので。あとスパイダーマンが良くて。スパイダーマンの映画は全般好きなんですけど、シビル・ウォーのスパイダーマンはガキンチョでベラベラおしゃべりで、あんまり悩んでなさそうで。それが個人的には好みでしたね。
「死霊館 エンフィールド事件」も面白かったかなー。前作よりも良かったです。ジェームズ・ワン監督の作品だと「デッド・サイレンス」と「インシディアス」も好きです。古典的なホラーの要素があって上品でちゃんとオチもあるのが良いですね。
あとは、今年「X-ファイル」のブルーレイBOXが出たのでずっと見てましたね。今見ても話の内容が古びないなーって。

Ume:サム・ライミ監督のスパイダーマンはどうですか?

:すごく好きですよ。サム・ライミ自体も好きですし。シビル・ウォーのスパイダーマンはノリが軽い感じで良いなって。ひたすら悩んでいるスパイダーマンよりも軽い感じのが好きっていう。恋人とか仕事とかプライベートなことで悩んでいるのは好きじゃなくて。軽いノリで悪人を倒していたっていうのが良かったです。

Ume:僕は、音楽だったら自分のレーベル以外だとRoly Porter/Third lawとSir Spyro/Topper Topは発売日に買ってからずっと聴いてます。この2作は傑作中の傑作。あと、Raimeの2ndとMoody GoodのMTGFYT…シリーズやAlix Perez関連、StorminやDetestの作品も素晴らしかったですね。
今年は映画は旧作ばかりチェックしていて新作はあんまり見れていないんですけど、コーエン兄弟の「ヘイル、シーザー!」は最高でしたよ。去年やってたドラマ版の「ファーゴ」も良かった。

:ファーゴのドラマは良かったですねー。サントラも買いました。あとドラマで使われている楽曲が良いセレクトだったのでShazamでメモして曲単位で買ったりもしてました。
悪役も謎めいていて良かったですね。コーエン兄弟の作品に出てくる悪役って自分達なりのルールがあって、その中で夢中になって楽しんでやっているのが素晴らしいですね。


Ume:林田さんはサントラをよく聴かれているんですね。

:いろんな映画のサントラをシャッフルして聴いてます。誰もが知ってる名曲揃いのJohn Williamsとか。あと、エイリアン2の「Bishop’s Countdown」って曲がすごく元気が出ます。元気が無いときは聴いてます。

Ume:他にはどんな映画監督が好きなんですか?

:最近はブライアン・デ・パルマの作品を見直してますよ。たまたま久しぶりに、「レイジング・ケイン」を見たのがキッカケでいろいろと見直していて、ドラマチックな演出が好きです。

Ume:デビットリンチもお好きなんですよね?最初に見た作品ってどれですか?

:親がWOWOWで「ツイン・ピークス」を毎週見ていて、それを一緒に見てました。本格的に好きになったのは「ロストハイウェイ」からですかね。「ブルーベルベット」や「マルホランドドライブ」、「インランドエンパイア」も大好きですし、全部好きですね。音と映像の雰囲気に入りたいというか、ストーリーとかを自分なりに好きに解釈したり、そういうのもまた楽しいというか。画集もたくさん持っていますし、リンチの音楽作品も好きです。

Ume:「ロストハイウェイ」はサントラも素晴らしかったですからね。リンチ監督の「デューン/砂の惑星」はいかがですか?

:デューンは、、好きですよ(笑)。多くの映画の中でも好きですけど、リンチの中ではそんなに(笑)。


Ume:邦画も見られてたりするんですか?

:邦画だと、ここ数年だと「八甲田山」が好きです。10年くらい前にやっと見たんですよ。あの映画はとてもいい画が多いです。本当の雪山で撮影しているので描写が美しいんですよ。美しさっていうのは自然とかじゃなくて、とにかく暗い。音楽的というか絵画的というか、そういう好みもあって好きなんです。
映画のシーンの中で、皆が暗い所で夜中寒さを凌ぐ為にポツンポツンとただ突っ立って固まってるシーンがあるんですけど、それが暗い音楽のCDのジャケみたいで。

Ume:それでは、漫画ですと何が好きだったんですか?

:「うる星やつら」、「ドラゴンボール」とか、スポーツ漫画だと「わたるがぴゅん」が好きでした。あとは世代的に当たり前に影響を受けているのは「AKIRA」とか「ジョジョ」、士郎正宗さんの漫画とかです。あとけっこうギャグ漫画が好きですね。あとは楳図かずおさんとか伊藤潤二さん、ますむらひろしさんとかが好きです。

Ume:そういえばWhite ZombieのボーカルだったROB ZOMBIEの映画作品は林田さんの好みに近そうですが、どうですか?

:ああ~、実はROB ZOMBIEの映画はちょいと苦手なのです。微妙にキャラクターの性格が合わないというか、、本当にうまく説明できないんですけど。
ホラー映画だと、感情移入できるまともな人が必要なんですよね。全員が狂っているとメリハリが無くて楽しめないというか。下品なのと、ただ痛そうなだけというのはあまり好みじゃなくて。戦いの中での流血とかはいいんですけど。
一応、ROB ZOMBIEの映画は全作品見たんですけど、どれも今ひとつ入り込めず…。それが、一番言い得て妙。ROB ZOMBIEの映画が合わないのが、私の好みを説明するのに合っているかな。もちろん、ROB ZOMBIEの音楽やブックレットなどのアートワークは好きですよ。

Ume:なるほどー。結構皆が思っている林田さんのイメージとは違うかもしれませんね。

:多分そうなんだと思います。本人と会うと印象が違うとも言われますから。全身真っ黒な危なっかしい人が描いてると思われてるのかな(笑)。

Ume:ホラー映画からの影響はご自身の作品にありますか?

:意図的には全然しないんですけど。私は好きな物は繰り返し何回も見るので、脳の中に刻まれていて自然に出ているような気がしますね。
そもそもホラーが好きなのは、私が小学校低学年の時にMTVでマイケル・ジャクソンのスリラーがよく流れていて。その時始めてゾンビの存在を知って驚いて、アメリカって死体をそのまま埋めるんだ!とか。
母がスリラーのビデオを持っていたんですけど、その中にメイキングが入っていて、ゾンビの特殊メイクを見て面白いなって感じたのがキッカケだったんじゃないかな。なので、リアルな殺人鬼よりもジャイソンとかITのペニーワイズみたいなファンタジーな要素があるほうが好みですね。あと映像が美しいイタリアンホラーも好きですよ。

Ume:林田さんが漫画を描かれる時にスプラッター的な表現とかの要素は意識してたりするんですか?

:無いですね。ただ痛くしよう、とかなくて。多分、精神的に暗すぎるものはあまり描けないんですよね。暗い絵は好きなんですけど。戦っている描写が好きなのと、ゾンビの特殊メイクの流れもあって。趣味的に言ったら半々なんです。海外ゲームのPV、最近だと「Scorn」とか「Agony」とかのPVを見るとテンションがあがりますね。

Ume:デザイン的な視点として暗さの部分が好きなんですよね。

:そうですね。暗いゲームやっててもスキップしながらやっている感じに近いかも。

Ume:ドロヘドロってなんとなく都会的な雰囲気を感じるんですが、林田さんから見て東京ってどんな所ですか?

:東京は好きです。性格にも合ってる気がします。
町もすっごいきれいな所とぐちゃぐちゃした所もあって。それがパズルのように組み合わさっていて。生理的には清潔なところが好きなんですけど、描くのは汚いゴチャゴチャしたのとか、狭くて小さい空間を描くのが好きなんですけど、そういう場所が東京には沢山あるなと。あと、つぎはぎのアスファルトの道とかも良いですね。まあ、これは日本中どこにでもありますけど(笑)

Ume:ドロヘドロは今迄にアパレルからフィギュア、サントラなど、いろんなフォーマットの作品を発表してきましたけど、他に見てみたいフォーマットって何がありますか?

:フィギュアが一番やりたかったことだったので、他には思いつかないんですが、まあいつかは自分の絵が動いているのを見てみたいっていうのはありますね。映像で。

Ume:それでは、最後になりますが来年の抱負とかはありますか?

:もっと一杯描こうかなと(笑)。あとは映画と音楽をもっと色々と探したいですね。


林田球
http://q-hayashida.com/
1997年、月刊アフタヌーン(講談社)の四季賞で準入賞を獲得した「ソファーちゃん」でデビュー。ダーク&グロテスクな独特の世界観にコミカルなキャラクター表現が熱狂的な支持を得ている。荒々しく躍動感溢れる線による細かい作画が特徴。2000年にIKKIにて「ドロヘドロ」の連載をスタートし、雑誌休刊後はヒバナ(どちらも小学館)に発表の場を移し掲載中。

MURDER CHANNEL
https://soundcloud.com/murder-channel
2004年、都内のクラブにてイベントをスタート。恵比寿MILKや中野HEAVY SICK ZERO、吉祥寺STAR PINE’S CAFE、難波ROCKETS、名古屋Cafe Domina、金沢MANIER等、様々なクラブで回を重ね、国内を代表するアーティストや16bit、Drop The Lime、Bong-Ra、Drumcorps、Chrissy Murderbot、Broken Note、Teknoist、Enduser、Filastineなどの海外アーティストも積極的にブッキングし、多くのアーティストの初来日を成功させた。
2007年からはレーベルとしても本格始動。幅広くストイックな音源リリースを展開しており、The Bug、Kuedo、Starkey、King Cannibalなどの海外のアーティスト達からも賛同を得ている。
PS3のゲームソフト「Savage Moon」のサウンドトラックのリミックス・コンピレーションの監修や、Hyperdub(イギリス)、Ad Noiseam(ドイツ)、Lo Dubs(アメリカ)などのレーベルよりMURDER CHANNELの作品がライセンスされレコードでもリリースされる。