Peace Off 特集PT.4

Peace Off特集

Peace Off特集の第四弾はレーベルのボスであり、ブレイクコア・シーンにとって欠かせない最重要アーティストである「Rotator」の功績を振り返ります!

フランスを拠点に元々はサイコビリー・バンドでベーシストとして活動していたFrank Tavakoliが、90年代後半にスタートさせたプロジェクトであり、当初は「Rotator Kids」名義でMCとの二人組として活動されていました。
1999年にSlamと共にレーベル「Peace Off」を立ち上げ、記念すべき最初のリリース作品であるスプリット・レコード『Rotator Kids vs Slam』を発表。超高速ブレイクビーツにエネルギッシュなパンクを素材にした硬派で荒々しいブレイクコア・サウンドでUKやアメリカ、ドイツとも違った独自のブレイクコア・スタイルを当時から披露しています。
同時期に始まったPeace Offの人気シリーズ「Kamikaze Club」にも参加し、Peace Offと自身の姿勢を表した強烈な楽曲を発表していました。


2000年になるとジャングルやドラムンベースにダンスホール/ラガの要素を組み込んだダンサブルなブレイクコアに特化したサブレーベル「Damage」をスタートさせ、第一弾リリースとしてRotatorの初単独レコード『He Who Makes A Beast Of Himself Gets Rid Of The Pain Being A Man !』を発表。それまでの勢いのあるパンキッシュなブレイクコアをベースにしつつ、ダンスホールのリディムとハーシュステップを混合させた攻撃的でルーディーなブレイクコア・スタイルを開発。ジャングルやテックステップのマッシブさを土台にハーシュノイズとインダストリアルなサウンドを巧みに操ったネクストレベルな楽曲となっていて未だにプレイされるクラシックです。
翌年にBroklyn Beatsからリリースされた7”インチ『Help Me To Keep Up Destruction!!! / Chicken Boogie ‎』でもアナーキーなブレイクコア・リディムを作り上げており、既にこの頃からRotatorの存在はブレイクコア・シーンの中心にあった様に思えます。
この後、Damageが2001年にリリースしたコンピレーション・カセット『Nightmare In Low-Fi』に参加していた日本人ブレイクコア・アーティスト「Unuramenura」の招待によってRotatorは初来日しており、UnuramenuraやL?K?O、Com.Aといったアーティスト達と共演していました。


Mutant SniperやDeath$ucker Recordsのコンピレーションへの参加を得て、2005年に発表した12″レコード『Dissident Sound Maniak Part 1.0』では、それまでにRotatorが開拓していったハーシュステップやブレイクコアナイズされたダンスホール・スタイルに加えて、更にハードコア・テクノとジャングルのエッセンスを大幅に取り入れ、それらの要素を強靭なパンク・スピリットをもってしてブレイクコアに捻じ込ませた破壊力満点の楽曲を披露し、Rotatorはブレイクコア・シーンにて人気実力共にトップの座へと上り詰めました。
同時期にハードコアに特化した別名義であるMr Killとして12″レコード『Haters Want War』を発表。リリースのインフォメーションに記載されていた”THIS IS NOT A FIGHT TONIGHT … THIS IS A WAR” という言葉がぴったりな闘争心に満ち満ちた凄まじいハードコア・トラックを収録しており、Rotator/Mr Killの存在はハードコア・シーンでも注目を集めていく事になります。


そして、2007年5月に2度目となる日本ツアーに合わせてリリースされた正式には初となるアルバム『Choose Your Poison, Mine Is Hardcore!!!』を発表。ブレイクコアとハードコアのハイブリッド・トラックにメタルとラガをマッシュアップさせた凄まじくパワフルな楽曲は多くのリスナーから絶賛され、口コミだけで都内のレコードショップを中心に驚きべきセールス枚数を記録しました。このアルバム以降、Rotatorはハードコアとブレイクコアのハイブリッド・スタイルを極めていき、ハードコア・シーンにおいても人気を獲得し、PRSPCTやQOREといったハードコア・フェスティバルやイベントにも度々出演していく様になります。

Rotatorはラガやダンスホールのダーティーでセクシーなバイブスと、メタル、パンクの鋭さと勢い、そしてハードコア・テクノの機能性といった要素をブレイクコアに落とし込んだマッシブで迫力のあるスタイルで人気でありますが、彼の特徴的なスタイルの一つに他のブレイクコア・アーティストのブレイクビーツやシンセをサンプリングして見事に自分の物にするという、まさにブレイクコアの真髄とも言える手法があります。
『Dissident Sound Maniak Part 1.0』収録の「Fight Back !!!」では、Shitmatの「Badman Ballad」の骨を砕くようなパワフルなアーメン・ブレイクを拝借しており、『Choose Your Poison, Mine Is Hardcore!!!』収録の「Black Flag」ではKnifehandchopの「Tizzy Tixbown Riddim」で使われているガバキックのダンスホール・リディムをそのままメインのビートの使用するというアナーキーな荒業をやり遂げています。その他にも、日本の某ハードコア・テクノ・アーティストのキックをサンプリングしてたり、過去には日本のノイズミュージックをサンプリングしていたりと、素材の魅力を更に引きだす使い方をしていてサンプリング元にも敬意を表した使い方で素晴らしい楽曲をクリエイトしていっています。

そして、2008年以降は少しの沈黙期間を挟み、2012年に活動を再スタートさせ、日本のMurder ChannelとPeace OffとのWネームにてRotatorとMr Killの音源を纏めたアルバム『Disaster Must Come』をリリース。その後も、HomicideからLe Troisième Doigtとのスプリット『Homicide Volume 11』やStazma、DJ Skull Vomit、Gore Tech、Scrubber Foxのリミックスでブレイクコアの王者としての貫禄と実力を見せ付けてくれました。




近年は表立った活動をしていなかったものの、今年のPeace Off 20周年記念に合わせて何かしらの作品を発表するとの噂もあり、Rotatorによるストイックなパンク精神を持ったブレイクコア・サウンドが鳴り響く日も遠くは無さそうです。