“GHz Interview36” Gorgonn

GHz Interview

Osheyack、Prettybwoy、Gabber Modus Operandi、Howie Lee、Goooooseといった前衛的で挑戦心の強いアーティストが集まる中国のレーベル「SVBKVLT」から先日フルアルバム『Six Paths』を発表したドイツ在住の音楽プロデューサー/ダブミキサー「Gorgonn」のインタビューを公開!

過去には、Kiki Hitomi(King Midas Sound)と共にダブパンクユニット「Dokkebi Q」を結成し、Shigeru Ishihara (DJ Scotch Egg)とのディストーション・ベースユニット「Devilman」としても活動。また、ソロワークとしてGorgonn名義以外にも「Ghengis」や「G36」といったプロジェクトでも作品を発表しており、独自のSci-fiステッパスサウンドを展開。サウンドエンジニアとしてThe Bug, King Midas Sound, Dean Blunt/Hype Williams, Bo Ningen, Seefeel等のツアーのライブダブミックスを担当し、2015年よりThe BugのKevin Martinが所有するPressure Sound Systemのシステムエンジニアリングも務められています。

先日リリースされたアルバム『Six Paths』はダブ、テクノ、ドゥーム、アンビエントの過剰な部分を抽出し、Gorgonn印のSci-fiステッパスサウンドに落とし込んで吐き出された唯一無二の楽曲が収録。2023年という時代を象徴する非常に重要なアルバムであり、今後の電子音楽の歴史においても外すことの出来ない素晴らしいアルバムを作り上げました。

『Six Paths』の背景にあるストーリーから楽曲制作についてなど、興味深いお話をお聞きしています。アルバムを聴きながら是非お読みください!


Q. 『Six Paths』が完成されるまでの流れを教えてください。

曲自体はここ最近作ったものから、4-5年位前のものまであります。アルバムとして形にしようとした時、共通のイメージは何かな?と考えた時、仏教の死後のコンセプトの六道 (アルバムタイトルのSix Paths) が思いつきました。六道は死後に赴かなくてはならない世界で、そこは地獄や畜生道、餓鬼道を含みます。地獄の最下層まで落ちるのだけで2000年かかるようです!苦しみ、生死、激情、無限さ、トランス、シャーマニズム等が表現したいテーマです。

Q. アルバムの発売元であるレーベル「SVBKVLT」とはどのようにして出会いましたか?レーベルから曲に対して何か要望などは受けたりしましたか?

レーベルオーナーのGarethはライブサウンドのミックスをやっているKevin(The Bug)を通して紹介して貰いました。Garethはコンセプトや楽曲、Bo NingenのドラマーでもあるAkihide Monnaのアートワークのイメージを基本的にそのまま受け入れてくれて、二人でアナログ版8曲、デジタル版10曲に絞りました。

Q. 楽曲制作やマスタリングにおいて重視した部分とは?

フォーマットをあまり意識しないで実験したい部分と、フロア向けに成立させたい所のバランスはどこかな、と良く考えてました。後はコンセプトを維持したまま、一曲の中でストーリーを作る事。それと音楽の好きな部分の1つが質感なので、それを音作りからマスタリングまで維持したいと思ってました。

Q. 『Six Paths』の制作で使用した機材は?曲作りはどのようにして進められたのでしょうか?

ElektronのAnalog Rythm2は良く使ったと思います。内蔵されてるアナログのコンプレッサーとディストーションがとても好きで。Kush Audioのサチュレーターのプラグインも凄く好きです。
制作の流れは、散歩中や自転車に乗ってる時に録ったボイスメモが大量にあって、パッって思い付いたリズムやベースラインをビートボックスみたいに喋ったものを、癖で録り溜めてるんです。そこのアイディアから曲の骨格を作り始めることが多いです。

Q. アルバム全体を通して聴けるストロングなベースとノイズはどのようにして作られているのでしょうか?

ベースにオーバードライブなどのサチュレーターでイメージに合う質感を追加して、その後にアタックを際立たせる処理をするのが好きです。歪んでコンプレッションされているのに、粒立っている音が理想です。究極的にはローファイでかつスーパーハイファイにしたい。そういう処理の仕方で好きなディストピア感やサイバーパンクのイメージに、もしかしたら近づけたいのかもしれません。それとピンクノイズと低音を同時に歪めると、音量によって思いがけない音になる事があるので良く試します。

Q. Gorgonnさんは活動当初からベースに対して強い拘りを持たれていますが、その追求心はどこから来るのでしょうか?また、ベースに対する意識は年齢や経験でどう変わられてきましたか?

ベースに注意を向けたのはイギリスに住んていた時のサウンドシステム文化の影響です。Dillinja, Iration Steppas, Jah Shakaなどなど。日本に居た時は、例えばダブやジャングル等を聴く時もリズムやエフェクトに集中して聴いてました。多分身体的な経験で、注意を向ける音の帯域が変わったんだと思います。後、十代の頃はメタルとかが好きだったのでギターのリフを何オクターブか下げたのがサブベースになった、みたいな所もあります。
年齢的には、昔よりも人間が聴こえる下限まで大出力出来るサブウーファーが登場してきたので、さらに低いベースの帯域を意識する様になりました。機械の進歩で、人間の音響的な快楽さが拡張させられるのって面白いなと思います。

Q. 『Six Paths』収録曲で特に思入れ深い曲は?完成までに苦戦した曲や、曲作り中に起きた印象深いことは?映画や本といった音楽以外の芸術作品からの影響などはアルバムに反映されていますか?

「Deadman」って曲は、ある事情で病院の救急に居た時に、同じ病棟にいる人が1時間以上1人で喋り続けてて、それと同時に誰かの心電図の音が混ざって、かなりこれ地獄感あるな、コワッ!と思い、それをボイスメモで録音したんてす。それをこの曲にサンプリングしました。曲のイメージに合うんじゃないかと思って。
映画は、多分そのあたりに見たジョージルーカスの最初の監督作品の『THX1138』は面白かったです。影響を受けたかもしれません。

Q. 2018年からはG36名義でも作品を発表されています。このプロジェクトはどのようにして始まったのでしょうか?

元々Kevinとニュールーツステッパスとノイズやドローンをディストピアなイメージと組み合わせたら面白いんじゃないかって話しをしてて、それで覆面匿名アーティストとして始めたらさらに面白そう、といったノリで始めました。


Q. Gorgonn、Ghengis、G36として作品を発表されていますが、それぞれのプロジェクトで曲作りのモードや意識は変化しているのでしょうか?全てのプロジェクトで共通しているものとは?

G36は、よりフロア志向とステッパスを意識して作ります。Ghengisはサウンドコラージュや音響のコンプレッションの実験に振った感じがあるかも。でも、どの名義でも音楽で正気と狂気みたいな状態の行き来を表現したいなと思っています。

Q. コロナによるパンデミックはGorgonnさんの音楽にもなにかしらの影響を与えましたか?

初期のコロナの非常事態感に、間接的な影響を受けたかもしれません。それこそ急激に政府とか’空気’に行動が支配される異常な感じが。
今のベルリンは交通機関のマスク規制も無くなり、まるでコロナなんて無かったかの様な空気です。個人的に今はウクライナの戦争の行方が気になります。早く終わって欲しい。

Q. Gorgonnさんにとって音楽を作るという行為はどういった意味があるのでしょうか?曲を作る際、DJでの使いやすさ、システムでの鳴り、もしくは売上など、どれくらい他者の存在は音楽制作に影響を与えていますか?

音楽を作る意味は良く考えます。好きなだけで作っているのかと言うと単にそれだけとも言えず、難しい。ただ音楽を使って到達したい、自分の中での真理みたいな状態があります。そこが目標ですね。DJでの使いやすさは制作時は考えていません。システムでの鳴りは凄く考慮します。スタジオでの鳴りと会場のサウンドシステムの鳴りの誤差が完全に無くなるのが理想です。
他者の存在は考えます。ただ制作している時は全く考えないです。自分が好きだと思う状態が誤差無くスピーカーを通して伝わって、その結果聴いた人の心に何かが残る。というのが理想ですね。

Q. 現在注目しているアーティストやレーベルは?

Morphine Recordsの最近のリリースのSlumberland & Sainkho NamtchylakとGordanが好きてす。あと、Nyge Nyge Tapesから出ているアーティストは良く聴いてみてます。

Q. 今後のスケジュールを教えてください。

『Six Paths』リリースのプロモのミックスをいくつか作っています。それと3月18日にThe Bug主催のPRESSUREイベントがGretchenで開催され、そこでPRESSUREのサウンドシステムのセットアップをします。そのシステムで初めて自分のライブもする予定です。かなりエキサイトしてます。
後は5月上旬にオーストリアのDonau Festivalでライブをする予定です。

GHz BlogではGhengis名義でのインタビュー記事も公開中!こちらも是非チェックを!

Ghengis – Exclusive Mix & Interview for “DOROHEDORO original soundtrack”