オランダのブレイクコア/ジャングル・シーンを長年に渡って先導して来たBong-RaとDeformerによるユニット「VOODOOM」の2枚組ベスト・アルバム『Sacrificial Artefacts』の発売を記念した特集記事を公開!
Bong-RaとDeformerは90年代からオランダでジャングルの制作を行っており、彼等はオランダのジャングル・シーン並びにブレイクコアやハードコア・ドラムンベースのシーンにとって非常に重要な存在であります。両者の楽曲ではジャングルがコアなパートとなっていて、そこにメタルやジャズ、レゲエ、ヒップホップ、ハードコア・テクノ、ドゥーム、トリップホップ、ドラムンベースといった要素が絡みながら生まれた独自のハイブリッド・スタイルが人気であり、彼等に影響を受けたアーティストは非常に多く、今もフォロワーを生み出しています。
今回は彼等が発表して来たジャングル・トラックをメインに過去の名作をピックアップしていきます。
1998年にBong-Raはデビュー・シングルをMiss Djaxのレーベル「Djax-X-Beats」からリリース。テックステップとジャングルを混合させたダークでレイビーなトラックとなっており、この時点で既にBong-Ra独自のスタイルを確立しています。ちなみに、今作のマスタリングはJunkie XLことTom Holkenborgが担当していました。
Deformerは1994年からジャングル・トラックを制作しており、UKジャングルからの影響をベースにしたハードなジャングルを作っていました。2014年にリリースされたDeformerの『Killer Jungle』というカセッテ・テープには90年代に作っていた未発表のジャングル・トラックが多数収録されており、彼も当時から非常に個性的なスタイルを持っていたのが解ります。
Bong-Raは2002年からラガジャングル/ラガコア専門レーベル「Clash Records」をスタートさせ、Killahman Machine(Bong-Raの別名義)、FFF、Parasite、DJ Frankus、KGB Kid、Murderbot、I:gor、Soundmurderer、Bong Selecta、Deformerのレコードを発表。アメリカやイギリス、オランダのジャングル~ブレイクコア~ハードコア系アーティスト達によるハイクオリティなレコードはジャングルのDJもブレイクコアのDJもプレイし、ジャングルとブレイクコアの架け橋的なレーベルとして活躍しました。現在、Clash RecordsのカタログはBandcampにてデジタルで購入可能となっていますので是非チェックを。
2003年にリリースされたBong-Raの名盤アルバム『Bikini Bandits, Kill! Kill! Kill!』にMike Redman(Deformer)が「Can You Dig It ?」と「Catholic High School Girls In Trouble」にラップで参加。これが彼等の始めてのコラボレーションとなりました。名曲揃いの『Bikini Bandits, Kill! Kill! Kill!』の中でも、「Can You Dig It ?」はリリース当時から人気が高く、Bong-Raの数ある代表曲の中でも愛されており、2013年には自身によるリメイクとSinister Soulsによるリミックスが作られました。
同時期にDeformerは自主レーベル「Redrum Recordz」からジャングルにメタル、ヒップホップ、ハードコアを掛け合わせたソリッドなハイブリッド・スタイルのレコードをリリースし続けており、近年のハードコア・ドラムンベースやブレイクコアを先取りした楽曲を残しています。2001年にリリースされた『Slasher』は伝統的なハードコアの要素をジャングルやドラムンベースとミックスしたトラックに、ホラー映画からのサンプルを付け加えたアグレッシブでレイビーな作風で、ガバキックとブレイクビーツの合わせ技はクロスブリードの原型とも言える内容。その他にも、攻撃的でメタル色の強い『Meatcleaver EP』やScapu Loxをフィーチャーし、ダブステップやレゲエにハードコアをミックスしたベース増し増しな『Defsteppah EP』でも圧倒的なオリジナル・スタイルをリスナーに突き付けています。
2003年以降、Bong-Raの『I Am The God Of Hellfire』と『Soldaat Van Oranje』、Deformerの『Diabolical EP』といった作品で両者はコラボレーションを続け、抜群の相性を見せていました。彼等のコラボレーション・ワークの中でも、後にVOODOOMのボーカルとなるScapu LoxをフィーチャーしたDeformerのクラシック・チューン「Ori Ede」とそのBong-Raのリミックスはオランダのクラブでヒット。最近でも両者のライブ/DJセットでは頻繁にプレイされており、オランダのジャングル・シーンに大きな影響を与えた楽曲となっています。
その後も、2011年にはBong-RaとMike RedmanとBalázs Pándiによるメタル~ヒップホップ~ドラムンベース~ドゥームをバンドで表現した「Wormskull」としてのアルバムも発表し、Scapu Loxも2曲でゲスト参加していました。
そして、2014年にVOODOOMとしての活動がスタートし、翌年にLPアルバム『VOODOOM』をPRSPCTから発表。UKジャングルとダークコアに呪術的なトライバル・ビートとホラー映画のサンプルを混ざ合わせ、そこに彼等がそれまでに作り上げてきたブレイクコアやダーク・ジャズ、ホラーコアといった様々な要素も組み込ませた他には無いハードでダークなジャングル・サウンドは爆発的な人気と高い評価を受け、LPはすぐに完売。PRSPCTでのライブパフォーマンスが話題を呼び、オランダのフェスティバルやイギリスでのライブも成功させました。
2017年にリリースしたEP『Tribesmen』では、VOODOOMの邪悪なジャングル・スタイルをアップデートさせ、テックステップやスロウ・ジャングル的な要素も取り込んだ力作でしたが、残念ながら今作以降VOODOOMは活動を休止してしまいます。
そして、今回リリースされたベスト・アルバム『Sacrificial Artefacts』にはVOODOOMとしてリリースした全ての作品が纏められており、未発表であったBizzy Bのリミックスとダブ・ヴァージョンも収録。Bong-RaとDeformerが20年以上に渡って追求していたハードでダークなジャングル・サウンドの完成形とも言える作品です。ジャングルのファンだけではなく、ブレイクコアやドラムンベース、ブレイクビーツ・ハードコアなど、全ダンスミュージック好き必見の内容となっています。
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Deformerのニューシングルが4月に発売される事がアナウンスされ、今後のリリースも多くの人を驚かせる作品が待機中との事。Bong-Raはまだ活動休止中ですが、いつかまた彼等がVOODOOMを再始動させる日を願って、まずは『Sacrificial Artefacts』を存分に堪能しましょう!