Hardcore / Techno

Hardcore Techno

近年、テクノ・シーンの中でハードコア・テクノとガバの要素を取り込んだ高速でアグレッシブなトラックが世界中のレーベルからリリースされて来ています。
特に、2019年はハードコア・テクノ/ガバのリバイバルとも言える程、ベテラン勢から若手まで様々な世代のアーティスト達が良質な作品を届けてくれました。

2020年もこの勢いが続いて欲しいとの願いを込め、今回は近年のテクノ/ハードコア・シーンのクロスオーバー化によって注目を集めているアーティストを10組ピックアップしてご紹介します。テクノ/ハードコアに限らず、老若男女全てのダンスミュージック・ファンにオススメ出来る素晴らしいアーティストばかりですので、気になった物があれば是非チェックしてみてください。

Tripped

オールドスクールなハードコア・テクノやインダストリアル・ハードコア、テラーコア、UKハードコアをミックスしたハイブリッドなハードコア・トラックで人気を集めるベルギーのTripped。自主レーベルMadBack Recordsやイタリアのテクノ・レーベルScuderiaからリリースされたEPでは、90年代のアンダーグラウンドなテクノやベルギー産のアシッドコア系を現代的に解釈した独自のテクノ・トラックを披露し、クロスオーバー化していくハードコア/テクノ・シーンで唯一無二の存在感を放っています。

[KRTM]

PRSPCTが去年立ち上げたサブレーベルSSSPCRからテクノ~ハードコア~インダストリアル~シンセウェイヴを独自配合させたカラフルでパラレルな楽曲でテクノ・シーンでも注目を集める鬼才アーティスト。日本でも人気の高いベルリンのテクノ・レーベル「Arts」から2019年に2枚のレコードをリリースしており、Toxic Waste BuriedからのEPやObscuur Recordsのコンピレーションにも参加。エクスペリメンタルやニューエイジ系ともシンクロする作家性の強い作品は必聴の価値ありです。

Slave To Society / AnD

Electric DeluxeやSamurai Horo、そして自主レーベル「AnD」からのリリースで高い評価を受けるイギリスのテクノ・ユニット。メンバーのAndrew Bowenが2019年にDJ SpeedsickやE-Saggilaの作品をリリースしているBANK Records NYCからSlave To Society名義でリリースしたシングルでは、ハードコア・テクノにインダストリアル、ノイズ、ブレイクコアの要素を混ぜ合わせた攻撃的なトラックで非常に大きなインパクトを与えました。AnDとしても、2017年にBandcampでリリースした『CLOSING TRAX』では、Drop Bass NetworkやCold Rush Records周辺のハードコア・テクノ~アシッドコアを彷彿とさせるアグレッシブなトラックを披露しています。

Clouds

テクノをベースにブロークン・ビーツのエッセンスも絶妙に交えたインダストリアルチックな硬く尖ったクールなトラックで日本でも人気の高いイギリスのCloudsも去年はハードコアな作風を披露し、好き物達を悶絶させました。Headstrong Recordsからリリースされた『Sharp Like A Razor』では、ガバ、トランス、ブレイクビーツ・ハードコア、インダストリアル・テクノの美味しい所を組み合わせた超絶RAVEな万能トラックを生み出し、フランスのCasual Gabberzからリリースされた『Until We Come』では、どことなくフレンチコア的な雰囲気も感じさせるアッパーなトラックで我々を驚かせました。Cloudsにはこの路線を今後も突き進んで欲しいです!

Ghost In The Machine

インダストリアル・ハードコア・シーンの重鎮アーティスト/DJであるFrank Nitzinsky(The Outside Agency/Eye-D)とNils van Lingen(Mindustries)によるユニット。Genosha Basicから数枚のEPをリリースし、2017年に名門Perc Traxから『One Louder EP』を発表。インダストリアル・ハードコアの重みと歪みをテクノのグルーブと鳴りに組み合わせたヘヴィーウェイトなトラックは、ハードコア・ファンもテクノ・ファンも魅了させています。2018年には『King Dead EP』とPerc & Trussのリミックス・シングルに参加し、Perc Traxがハードコア・シーンでも注目されるキッカケを作りました。

Tymon

卓越したプロダクション・スキルによってハードコア、テクノ、シュランツをブレンドさせた迫力のあるノイジーなトラックでハードコア・シーンのアーティスト/DJ達から熱い信頼を寄せられているオーストラリアのTymonも2019年にPerc TraxからEPをリリース。Tymonがデビュー当為から追求していたハードコアとテクノの混合スタイルの完成系とも言える素晴らしい作品となっており、今後のハードコア・テクノ・シーンの方向性を指示した重要な1枚になったと思われます。

Technoist

Deathchant、Rebelscum、Industrial Strength Records、そしてPlanet-MuやAd NoiseamからのEPやアルバムでハードコア・シーン以外にも多くのファンを持つUKハードコア・アーティストのThe Teknoistのテクノ・プロジェクト。元々はFyerhammer名義でインダストリアル・テクノを制作していましたが、2019年に名義をTechnoistに改名。ブリープの要素を強め、エレクトロやインダストリアル・テクノの要素を混ぜ合わせた伝統的なUKテクノを土台に独自のテクノ・サウンドを開拓しています。今後の活躍も非常に楽しみな存在です。

Minimal Violence

Samuel、Peggy GOU、Yu Su、Legoweltの作品をリリースしているNinja Tuneのサブレーベル「Technicolour」から2019年にアルバム『InDreams』をリリースしたカナダのMinimal Violence。アナログ機材の厚みと質感を用いてハードコア・テクノ、ガバ、EBM、インダストリアル、アシッド・ハウス、ブレイクビーツをミックスした退廃的ながらもメロディアスな楽曲が収録された『InDreams』は近年のクロスオーバー化していくテクノ・シーンを象徴している様にも感じられます。80’s的な要素もありながら非常に現代的な音に仕上がっていて様々な世代から共感を得られるのではないでしょうか。

Luke McMillan

ここからはベテラン勢をピックアップ。
UKハードコアのパイオニアとして数多くのマスターピースを残してきたThe DJ Producerのテクノ・プロジェクトであるLuke McMillanが、2018年にBubblejam Goldからリリースしたシングル。The DJ ProducerのUKハードコア・トラックにも、テクノやブリープのエッセンスはふんだんに使われていた事もあり、テクノの機能性を理解しきった説得力のある内容。The DJ Producerには『A Journey Of Force』や『XTC 1992 – 2002』では、テクノやエレクトロ、ブリープの要素をハードコアに落とし込んだイギリスらしいハードコア・テクノ・トラックの名曲があります。

W.LV.S

ハードコアとテクノのクロスオーバーを90年代中頃から行っていたフランスのManu Le MalinがElectric Rescueと結成したユニットであるW.LV.Sも、独特な世界観とサウンドを持ったユニークなテクノ・トラックを作っており、Manu Le Malinのエクスペリメンタルなハードコア作品に通じる物があります。欲情してしまう様な凄まじい色気を持った怪しくダークなテクノ・トラックは、IST RecordsやBloc 46からリリースしていたManu Le Malinのインダストリアル・ハードコアの進化版とも言えると思います。

ここで紹介しているのはほんの一部ですので、また機会があれば特集記事を公開致します。