『ドロヘドロ』オリジナル・サウンドトラックの発売を記念して、参加アーティストのインタビュー&MIXを公開中!
第四回目は、Toki Takumi氏によるゴルジェ・プロジェクト「hanali」による貴重なMIXとロングインタビューをお届け致します!
前半のインタビューでは音楽的なルーツから即興時代の話、そして「山」と「ゴルジェ」との運命的な出会いなど、非常にディープで面白いお話をお聞きしました!
そして、提供してくださったMIXではドロヘドロ・サントラに収録されているhanaliさんの楽曲「She is a devil」やリリース前の新曲、日本のゴルジェ・アーティスト達の楽曲からClipse、坂本龍一までミックスされたhanaliさん、そして、ゴルジェの世界観が一気に楽しめる素晴らしい音源となっています!是非、ミックスを聴きながらインタビューを読んでみてください!
Toki Takumiによるソロ・ルーツGorge(ゴルジェ)・プロジェクト。また国内唯一のGorge専門レーベル「GORGE.IN」の運営の中心メンバーの一人。
2000年頃より音楽活動を開始後、しばらくテント泊縦走、沢登り、フリークライミング、クラッククライミングなど山に関わる活動に軸を移していたが、タムによる呪術的なリズムワークを特徴とするビート&クライミング・ミュージック「Gorge」の思想とダイナミズムに衝撃を受け、2012年頃よりルーツGorgeスタイルでの音楽活動を開始。様々な名義で多数のトラックリリースを行うと共に、ライブハウスやクラブ、野外イベントなどでライブ活動を重ね、そのダイナミックなタム連打サウンドによって日本に「ゴルい」という価値を浸透させるのに貢献する。2013年7月に幕張メッセで行われた音楽フェス”FREEDOMMUNE One Thousand 2013”に参加し、9月にフルCDアルバム『ROCK MUSIC』リリース。その後UKのFlamebaitより『End Gorge EP』、GORGE.INより『[▲kiletto1]』をリリースし、現在4thアルバムを制作している。
hanali – Dorohedoro, Gorge, World and the Hole mix
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Track List
1 Fanfare Ciocarlia “Crayfish Hora”
2 hanali “RFC of Gorge Public License”
3 Muay Thai Music “Round Five”
4 Goerge Jukemura “Panty”
5 Clipse “Gridin'”
6 SOMA奏間&Shacky “Break the S”
7 Tony Allen “Afro Pusherman”
8 Indusbonze “Kochi(高地)
9 Indusbonze “地団駄”
10 Skelton Crew “The Washington Post”
11 Kazuki Koga “Jug”
12 坂本龍一 “Differencia”
13 Drastik Adhesive Forve “Pig”
14 Elephantronica “Electronic Gorge Tronica”
15 hanali “She is a devil”
16 Loose Joint “Tell You”
Q.
音楽を作り始めたのはいつくらいからですか?
h:中学生くらいの頃から、兄の影響でギターを弾き始めたりとかはやってました。出身は福岡県北九州市の小倉っていうところで、住んでいるところは山の麓の田んぼに囲まれたド田舎で。まあ、田舎の中学生らしく普通にBOOWYとかをコピーしたり。聴くのも流行っているバンドものだったり。
今に通じるエレクトロニックな音楽という意味で言うと、その頃BUCK-TICKが『シェイプレス』っていうリミックスアルバムを出したんですよね。それにAphex Twinとかも酷いリミックスを提供していて(笑)。最初はまったく良さが分からなかったんですけど、「なんなんだコレ?」って気になって、だんだんそういうのを聴き出すようになって。
Q.
Aphex Twinは『Polygon Window』の頃とかですよね、確か。
h:そうそう。すごく個人的な話なんですけど、自分は高校に行ってないので、友達が全然いなかったんですよ、高校生の年の三年間。だから雑誌が情報源のすべてで。それで雑誌を読んでみて、テクノっていうのがどうやら流行ってるらしい、絶賛されていたAphex Twinの『…I Care Because You Do』を聴いてみたらすごいカッコイイ!とかいろいろ知ってきて。音響派っていうのがシカゴから出てきたところで、そういうの聴いてみたりとか。
そうした中で、オールインワンシンセをバイトして買って自分で作り出したりしました。YAMAHAのXP-50っていうやつなんですけど。それでAphex Twinぽいやつをひたすら作ったりしてましたね。
Q.
なんでシンセを使って自分で音源を作ろうと思ったんですか?
h:一人で全部できるから、自分でもできそうって思ったっていうのは大きいですね。何といっても友達が居ないので(笑)、バンドを組むという選択肢が封じられていましたからね。
Q.
なるほど、hanaliさんて今おいくつなんですか?
h:今、36(才)ですね。
Q.
てことは、中高生の頃は95年あたりですよね?
h:そうですね、大学進学で東京に出てきたのが98年なので、中高生の頃は一般的にはBlurやOasisみたいなブリットポップが流行ったりとか、あとはトリップホップとかがありましたね。
Q.
その頃、小倉ってどんな環境だったんですか?
h:ホントに友達がゼロだったんで、コミュニティもあったかもしれないけど俺は全く知らなかったんですよね。ラフォーレ原宿小倉っていう謎のビルがあって、その中にタワーレコードがあって、そこに一人でひたすら試聴しに行ってたり。インターネットもまだ無かったんで、情報源は雑誌しかなかったですね。
Q.
地元にも音楽シーンはあったかもしれないけど、参入はしなかったと。
h:そう。もちろん参入は死ぬほどしたかったんですけど、気が弱くて友達も居ないから情報も無くて、どこから入り込めば良いのかわからなくて。
Q.
福岡と小倉では地域的な情報格差とかってけっこうあるんですか?
h:当時はありましたね。小倉から福岡まで電車で1時間以上かかるんですけど、頑張って福岡の天神にCDを買いに行ったりもしてました。
当時雑誌でBeckが自分の好きなアルバムトップ10みたいなのを挙げてたんですよ。「これは聴かなきゃ!」とか思って、Stereolabとか入ってたんですけど、「ステレオラブってなんなんだ?」って本当に名前しか分からないので、天神のレコード屋行って「ステレオラブってありますか」みたいに探しに行ったり。
あとGastr del solとかが当時出てきたりしてて、それをやっぱり地元だと売ってないからって買いに行ったりとかしてましたね。
Q.
話を戻すと、最初の音楽活動はコピーバンドから始められたということですか?
h:BUCK-TICKのコピーバンドやって。そして気が弱いから一番人がやらなそうなベースをやって。
その後にいろいろ聴きだしてからはBeckとかもすごい好きだったし、あの頃のグランド・ロイヤル一派も聴いたり、ローファイブームがあって、そういうのを結構雑多に聴いてて、そんな中で一人でシンセで作れるって意味でテクノが選択肢に上がってきた。
でもテクノって言っても4つ打ちじゃなくて、それこそAphex Twinみたいな変なやつを作ったりとかしてて。でも作ったところで、特に誰に聴かせるわけでもなくテープに録ったりして、いつかどこかからリリースできればいいなーとか夢見てるだけで。
Q.
そういう嗜好が今の活動にも繋がってると思いますか?
h:そうかもしれないですね。極端なもの、ハードコアなものに憧れるっていうのはあるんですよね。いろんなハードコアな在り方があるし。山が好きなのもそういうところがあるんですけど。
Q.
影響を受けたアーティストではAphex Twinが大きいですか?
h:その頃だとホントにAphex Twinの衝撃は大きかったですね。あとBeckもすごく聴いてました。『Loser』が収録されてる『Mellow Gold』で最初に聴いて、『Odelay』が出た頃。『Odelay』を聴いた時はすごくかっこいいなと思いましたね。なんなんだろうこの音楽、みたいな衝撃が結構あって。すごいポップだし。
Beck – Loser
https://www.youtube.com/watch?v=YgSPaXgAdzE
Q.
hanaliさんを形成したアルバムを軽く挙げてもらうとしたら例えばどんな感じになりますか?
h:何かな~、まあパッと思いつくのを挙げると、1個はAphex Twinの『I Care Because You Do』……あとはThis Heatの1stの『This Heat』でしょ。あと『No New York』かな。
Aphex Twin – Alberto Balsalm
https://www.youtube.com/watch?v=mUT3KoxVzQg
This Heat – The Fall of Saigon
https://www.youtube.com/watch?v=Lrfz9pULvm8
Q.
コンピの?
h:1979年に出た、ニューヨークのノーウェイブのバンドのコンピですね。ブライアン・イーノが監修してて。『No New York』は大学はいった頃に再販されて、初めて聴いて「なんじゃこら」ってなって。すごいかっこよくて。
Q.
アート・リンゼイとか入ってますよね。
h:DNAですね。あとコントーションズ。特にコントーションズはすっごいかっこよくて衝撃を受けましたね。その辺のノーウェーブ、ニューウェーブ……ニューウェーブてよりはやっぱノーウェーブっぽいもの、ポップ・グループとか、ああいうのは影響を受けてすごく聴きましたね。
The Contortions – Dish It Out
https://www.youtube.com/watch?v=V58z8foFu7M
Q.
hanaliさんの音楽を聴くと、ちょっとインダストリアル~ノイズ的な要素を感じていたのですが、マーク・スチュワートやポップ・グループなどの影響もありますか?
h:あるのかもなーとも思うんですけどね。でもそう言われることも多いんでそうなのかもなーってくらいで、あんまり意識して無いんですよね。
Q.
高校に全然行かなかったっていうのは、学校の環境が合わなかったとかですか?
h:中高一貫の高校に行ってて、中3の頃から先生や友達と合わなかったり色々あって。今考えると自分もすごいマセて、イキってたんで(笑)。「あんなくだらない先生に教えられることない」みたいな感じで高校1年生の早めの時期に辞めて、その後大検を取って東京の大学に入り上京した感じです。
Q.
東京に来てみてどんな印象がありましたか?
h:やっぱり出会う人たちが今までとまったく違うタイプなので、カルチャーショックがありましたね~。今まで自分しか知らないと思っていた音楽を知ってる人がたくさん居るし、さらに知らない音楽にもすごく詳しいし、という。あとタワーレコードが本当にタワーな事に衝撃を受けましたね(笑)。
Q.
住みづらいみたいなことは無かったですか?
h:それは全くなかったですね。むしろ楽しいことばっかりで。今まで友達がいない人生だったので「俺にも友達ができたんだ……」と嬉しさでいっぱいでした(笑)。
Q.
大学生時代の音楽活動はどんな感じだったんでしょうか?
h:大学入ってしばらくは先輩に教えてもらった音楽をいろいろ聴いたりしてて、大友良英さんとかを知って即興っていう表現手段があるんだってことを知って、ギターを買ってギターの即興みたいなのをなんとなく手探りで始めたんですよね。
今思い出したんですけど、東京で最初にライブをやったのが、ヒカシューの巻上公一さんがやった『誰でも参加できるCOBRA』っていう企画の参加なんですよね。ジョン・ゾーンのCOBRAってわかります?
Q.
カードを使って集団で即興するやつですよね。
h:そうそう。一般参加の人を公募してやるCOBRAっていうのがあって。ジョン・ゾーンみたいなカットアップ的な即興を、ゲーム的なインプロヴィゼーションの中でやっていくっていう。
それが2000年くらいかな。
Q.
その後はどうされたんですか?
h:そこで知り合った人たちと即興のライブをやったり、徐々にライブ活動をし始めて知り合いも広がってきて。その頃に代々木に
OFFSITEができてそこでライブやったりして。最初ギターだったんですけど、テープMTRを使うようになってきて。
MTRをテープを入れずに、磁石を直接ヘッドに当てて、それで内部フィードバックをコントロールするっていうスタイルでした。
Q.
MTRってレコーダーですよね?
h:レコーダーなんですけど、テープを入れてないから録音・再生はしてないんですよね。ヘッドに磁石を当てて拾った音と、MTGのミキサーの内部フィードバックと相互干渉でパルスっぽい音が出るんですよ、ピピピピ、ガガガガって。色々MTRで試行錯誤してそういうスタイルになりました。しばらくはそれでライブをやってたんですよね。
Q.
MTRへのこだわりがあったんですか?
h:機材的なこだわりというのはあまり無くて、「家にあったから」っていうのが一番大きかったんですよね。音楽的な話でいうとピピピピってパルス音が面白くて。それでちょっとリズムっぽくなる。その脱臼したリズムみたいなのを磁石の位置とかを変えるとリズムも変わっていくし、それがコントロールできたりできなかったりする、ていうのがすごく面白くて。そういうパルス的なリズムと、今やっているトラック作りはちょっとつながってるところもあるかな、と思います。
Toki Takumi Live @ Sendagaya Loop-Line 200801 -1
https://www.youtube.com/watch?v=s_RjZf6hrdY
Q.
これをインプロの人たちに聞くのもアレだし音楽の定義も難しいですけど、当時やってたことを音楽だと思います? みんな音楽と思ってやってるのか、それとも音そのものを楽しもうと思ってるのか。
h:他の方がどうかは自分は言えないんですが、個人的には音楽でも音でもどっちでもいいや、って思ってましたね。
Q.
表現をしたかったみたいな?
h:表現ですらなくて……これは今でも変わらないですけど、例えば何か面白い話を聞いて、「こんな面白い話あったんだよ」っていうのを誰かに話したい、っていうのに似たモチベーションで、「こういう面白い音が出るんだけどどう?」って誰かに聴かせたかったっていう。それが音楽か音かは関係なくて。
Q.
その頃の音源はリリースされてるんですか?
h:最初のアルバムが即興とトラックの二枚組で出したんですよ。即興やってた時期とトラック作ってた時期は被ってて。
それと平行してhanali名義でも活動してて。元々hanaliは2人組で。DJやってた大学の友達と一緒に、「トラック作ろうよ」みたいな感じで始めて、そのうち一人になったっていう。
Spesial musicu (Toki Takumi Side)
http://www.amazon.co.jp/Spesial-musicu-Disc2-Toki-Takumi/dp/B0044BP81W/ref=sr_1_1?s=dmusic&ie=UTF8&qid=1458759876&sr=1-1-mp3-albums-bar-strip-0&keywords=Toki+Takumi
Q.
二人組の頃のhanaliはどういう音楽を作ってたんですか?
h:すっごい模索してましたけどね。ハウスっぽいのにチャレンジしたりとか、ずーっとどういうの作ればいいのか悩んでいて。模索しているのは今でもそれは変わらないんですけど。
Q.
その後、hanaliさんがゴルジェ(GORGE)になるまでの期間ていうのはどうされてたんですか?
h:仕事をしながら音楽は続けてたんですけど、1stアルバムを出した28才くらいの頃に山にハマりだして。
『神々の山嶺』っていうマンガがあって、それの影響で。夢枕獏原作で谷口ジローが絵を描いていて、今映画になってますね。それを読んで「山ヤバい!」って思っちゃったんですよ。
Q.
どういうマンガなんですか?
h:説明が難しいんですけど、エベレストの冬季単独南西壁登頂をやる男の話で、その凄さをすごく緻密に描いてるんですよ。それにトライするためにどれだけ人生を失わなきゃいけないかって話とかがあって。
Q.
マンガがキッカケの山ってことですか。山に行きながら読んでたわけではなくて、読んでから行った?
h:完全に読んでからですね。それまでまったく興味が無かったのに影響を受けちゃって。一人で高尾山から始めて、北アルプスとかに行って。その内に登山にも色々な世界があることが判ってきたんですよね、フリークライミングであったり、沢登りであったり。
で、そっちの方にいくとロープを使わないといけないってのがあって、そうなるとちゃんと技術を学ばないといけない。それで社会人山岳会に入ったんですよね。そこでロープを使ったクライミングから、沢登りから色々教えてもらって。それがもう面白すぎて・・・クラブで一晩過ごしたりするのが勿体なくなってきて、音楽から完全に離れてしまいましたね。
Q.
何かしら性に合ってたってことですよね。
h:山に登るって行為が「誰かに向けてやる」っていう要素がまったく無いのが楽しかったんですよね。自分にとって音楽は「誰か聴く人に向けて作る」っていうもので、もっとアーティストっぽく自分のために作れれば良かったんですけど、気の弱さもあって「どういう風に聴かれるか」みたいなことをずっと気にしていて。山に登るって行為がまったくそういうのがないのが楽しくて。
登山とかクライミングは、もちろんプロとかだと違うんでしょうけど、基本的に登る当事者でない誰かのためにやるっていう要素が最初から全くない。ただ、ある地点から別の地点に移動する。しかも難しいところをわざわざ移動して、それをどう完遂するか、みたいなのしかないっていう。
Q.
最初の頃は高尾山とかに行かれてたってことですよね。最初の登山ってどんな感じでした?
h:最初はもうキツくて。ハァハァ言いながらひたすらしんどいなって。
Q.
面白みはあったんですか?
h:それはありましたね。達成感がすごくあるし。
Q.
最初の登山を終えて。山に行くペースがどんどん増えていったんですか?
h:大体土日はどこか行って。一番長いので5泊6日、一人で縦走した事がありましたね。それは遠くはないんですけど、雲取山っていう東京都で一番高い山から、金峰山ていう山梨の山までずっと尾根を歩いていけるんですよ。テントを担いでずっと一人で歩いていくっていうのをやってみました。
Q.
それは6日かかるっていうのは事前にわかるんですか?
h:そこはもう完全に計画立てて。どこでテント張って、食料がこのくらいで、みたいなの全部登山計画書にしてますね。
Q.
その6日の間で一番「帰りたい」みたいなポイントってあるんですか?
h:それは2日目ですね。すっごい寂しい気持ちになって……寂しいっていうんじゃないな。何やってんだろう感が半端ないんですよ。超えたらパカーンとなって超楽しいみたいな感じになりましたけどね。
Q.
もう木々の揺れる音しかないって感じですか?普通に音楽聴きながらとか。
h:全然聴かないですね。ただひたすら歩くっていう。登山中って全然何も聴かないんですよね。その余裕がないっていう、そういう余計な要素をあまり持ち込みたくないっていうか。
山歩くってすごく情報量が多いんですよ。その場の風景とか、どういうコース、どういうペースで行くかとか。その情報を処理していくのでいっぱいいっぱいって感じで、あんまり他の要素を持ち込む余裕がないっていう。それがいいところなんですけどね。なんか街の情報量とは違う情報量の多さがすごくあって。
Q.
山での行動サイクルはどういう感じなんですか。朝起きて夜寝る、みたいな?
h:だんだん朝起きる時間が早くなってくるんですよ。最終的には夜の2時起きになって。2時に起きてテントを撤収して4時くらいにはもう出発するっていう。朝日がちょっとでもあればもうヘッドランプで動けるので。 最後の金峰山は雪山なんですけど、雪の中頂上まで行ってもう午前中には下山したっていう。
Q.
登山中、テントの中ではマンガも何も読まずに?
h:読もうっていう気も起きなかったですね。
Q.
すっごいミニマルですね。どんなもの食べるんですか?レトルトとか?
h:レトルトのカレーとか。ガスバーナーを持って行って温めて。いちおう酒も持って行って。一応山小屋とかがあるんでビールとかはその場で買えたりして、ボーッとビール飲んで、寝るか……みたいな。
Q.
6日間で何人くらいと出会うんですか?
h:山に行ってる最中はポイントポイントで人がいっぱいいるところはあるんですけど、山と山の間では人は全然いなかったりして。それで一人でポツンと歩いていって。テント場に行くと大体人がいますね。
Q.
そこでやっと人と話せる!みたいな?
h:だれとも話してないから4日目くらいで日本語が話せなくなってきて、すごい不思議な感じになってきましたね。長く全く一人でいるっていうのは面白いですよ。
Q.
疲労感はどんな感じなんですか?
h:すっごい疲れますよ。荷物も多いので初日がやっぱり一番疲れて、2日目でドッとくるんですけど。でも段々その疲れも含めて楽しくなってくるんですよね。ちょっと違うモードに入るというか、頭おかしくなってくるっていうのはありますね。
Q.
ロッククライミングもされたりするんですか?クライミングはまたいわゆる登山とは違った楽しさがあるんでしょうか?
h:似てるんですけどまた違うおもしろさがありますね。説明するのは難しいんですけど、クライミングのルートって大体名前がついてて、「ここからここまでこう登る」みたいな感じであって。その中でやっぱりかっこいい壁っていうのがあるんですよ。「あっ、これ登りたい!」みたいなのが。 難しいから大体登れないんですけど、難しさも色々あって、ここからここのホールドにどうやって手を届かせるか、みたいな。一度それに取り憑かれると、ずーっとそのことばっかり考えちゃうんですよね。
Q.
ゴルジェを始められたのはその頃位からですか?
h:そうですね。そんな感じで山はずっとやってて、2012年にGORGE.INがスタートしてゴルジェ関連の活動を始めたんですけど、その前の2011年の冬に怪我したんですよ。自分のミスなんですけど、ロープにぶら下がってるときにロープの長さが足りなくなって落ちるという怪我で。最初は打撲かなーと思って2,3日後に病院行ったら「結構大怪我なんで全治6ヶ月ね~」って感じで言われて。それでその冬にやることは白紙になったので、音楽を再開しようという気になって。
Q.
その時は一切やってなかったんですか?
h:全然やってなかったですね。やってる暇もなくて。すごく登山とかクライミングが面白いので、音楽はもういいかなって頃でもあったので。3,4年かな。ほんと全く作ってなかったですね。
Q.
そこでゴルジェを始めたのは?
h:その前に八ヶ岳を登ってる時にたまたま一緒になったネパール人とちょっと仲良くなったんですけど、ソイツからテープを貰ったんです。ゴルジェっていう音楽だって言って。「これは何なんだろう」って思ってたら、その後に海外の音源を集めた『Separate Realty』っていうコンピの中でDJ Nangaっていう人の曲があって「これがアイツが言ってたやつだ」ってなって繋がって。それを日本でもやろう、と思ったんですよね。
Q.
ゴルジェの定義ってあるんですか?
h:ゴルジェの定義は、ゴルジェのオリジネーターのDJ Nangaが定めた3箇条があって。1つ目が「Use Toms(タムを使え)」、次が「Say it “Gorge”(それをゴルジェと言え)」、最後が「Don’t say it “Art”(それをアートと言うな)」。この3箇条を適用した物をゴルジェと名乗っていいっていう。
Q.
ゴルジェはどういった過程で誕生したんでしょうか?
h:ヒマラヤの麓にあるクラブ「シェルパ」でDJ Nangaがやり始めたっていうのが定説ですね。一応ざっというと、クライマーだったDJ Nangaが自分のDJに飽々してて、手に入れたリズムマシーンのキックが壊れてて、キック抜きでタムで作ってみたら「コレだ!」ってなってゴルジェが始まったという話で。
いろいろ謎が多いので、本当かどうかは分からないですけど(笑)。
「Gorgeはただ、そこにある ~DJ Nangaインタビュー」
http://gorge.in/2010/12/gorge%E3%81%AF%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%93%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B-%E3%80%9Cdj-nanga%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC/
Q.
ゴルジェ(GORGE)っていう単語はどういう意味なんですか?
h:沢登りっていうジャンルが登山の中にあって、その用語なんですよね。川、山に流れてる沢ですね。それをひたすら源流に向かって登っていくっていうのが沢登り。その中で、谷がすごく狭まった峡谷を「ゴルジュ」っていう用語で言うんですよ。岩が両方から迫った廊下みたいになっているところで、すごく見た目もカッコいいし、通過も困難だったりする。
「ゴルジュ」っていうのはフランス語読みで、英語では「ゴージ」っていう発音があるんですけど、日本では「ゴルジェ」っていう発音がジャンルの名前として定着してますね。
Q.
濁音が多い感じですね。
h:なんかゴツゴツした感じですよね。
Q.
元々音楽聴き始めた頃からタムとか、いわゆるドラムに耳がいったっていうのはあったんですか?
h:あとで振り返るとああ、そうだったっていうのもあって。
ヤキ・リーベツァイトっていうCANの人とか。ドラマーを意識して聴いてたっていうのは当時は特になかったんですけど。
あとメビウス・ブランク&ノイマイヤーの『ZERO SET』っていう作品があって。それがシンセとノイズとドラムで構成されててテクノのルーツとされてるんですけど、それがやたらタムを使った曲で。今考えると完全にゴルジェの源流ですね。
「FREEDOMMUNE 0<ZERO>ONE THOUSAND 2013」のときのボアドラムとかを見て思ったんですけど、ひたすら太鼓がドンドコドンドコ鳴ってるのって、なんか楽しい気持ちになるんですよね。お祭りの大太鼓とかにも近い感じで、リズム・メロディ・ハーモニーじゃなくて、そういうドコドコ感で成り立っている楽しさ。「ゴルジェってどういうものか」って聴かれたら、そういうドラムがドコドコした感じを中心にした音楽っていう切り口が一番わかりやすいかもしれない。
Moebius-Plank-Neumeier “Speed Display”
https://www.youtube.com/watch?v=qJEcx2H6xkY
Q.
ゴルジェはトライバルではない?
h:どう捉えるかは聴く人次第なので全然そう捉えてもらっても構わないんですけど、自分はトライバルっていう風には思ってなくて。
それはまったくリアルじゃないんですよね。例えばまったく知らない地域のトライバルな音楽とか、聴くのはすごく好きなんですけど、自分はそこのカルチャーに関わったりルーツがあるわけじゃないのに、トライバルな音楽をやる、っていう風に考えるのは自分にとってリアルじゃないなーっていうのがあり。
そういう意味だと、ゴルジェは音楽的には単純に「タムを使う」っていうテクニカルな問題だけで、それが定義になっていて。それがすごくしっくりきたところがあります。
あとそれによって、トラックを作ることも気持ちが楽になったんですよ。キックとかスネア、ハットをどういう音でどう配置するか、っていうリズムの組み方によって凄くジャンルの要素が滲みでるんですけど、タムだとリズムを参照にできるジャンルがほとんど無いんですよね。それはそれで大変なんですけど、すごく発想的に自由になれた、ということはあります。
hanali
http://soundcloud.com/hanali
http://gorge.in/
https://twitter.com/tokita93
インタビュー/文:GHz Staff
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