“GHz Interview51” Iridium(Prototypes Records)

GHz Interview

インダストリアル・ハードコア~クロスブリードを軸に多彩な次世代型ハードコア・スタイルを打ち出すレーベル「Prototypes Records」をNagazakiと共に運営し、同レーベルの看板アーティストとして新世代シーンを牽引する「Iridium」の来日を記念し、Ghz Blogにて独占インタビューを公開!

メタル~ベース・ミュージックとインダストリアル・ハードコア/クロスブリードを融合させたラウドでフロア直結なスタイルでハードコア・シーンに独自のポジションを築き、ヨーロッパの大規模ハードコア・フェスティバルにも出演。今年4月にリリースしたフルアルバム『Cybervoid』は日本でも話題となりました。
このインタビューでは、彼の音楽的ルーツからハードコアとの出会い、Iridiumが始動した経緯や楽曲制作について率直に語ってくれています。

10月4日に渋谷club asiaで開催される「Gemeinschaft of Hardcore 2025 ~The Lethal Destruction~」にて、Nagazakiと共に待望の初来日を控えています。ハードコア・ヘッズはぜひ遊びに行ってみてください!


Q. あなたの出身地について教えてください。幼少期はどのように過ごし、どのようにして音楽に興味を持つようになったのでしょうか?

フランスの真ん中にある山の小さな村出身だよ。今は28歳。普通のフランスの子ども時代と初等教育を過ごして、12歳の時にエレクトロニック・ミュージックに出会った。16歳か17歳の時に、これを仕事にしようと決めて本気で取り組むようになって、サウンドエンジニアリングを学ぶことにしたんだ。その学士号を取るまでに4年かかった。

物心ついた時からずっと新しい曲やアーティストを聴いたり探したりするのが好きだった。でも、僕は楽器は全く弾けないし、クリエイティブさも得意じゃない。そこで、エレクトロニック・ミュージックは主にテクニックと科学なんだと気づいて、それが僕にはすごく合ってた。それでのめり込むようになって、今に至るってわけさ。

Q. あなたの音楽にはベース・ミュージックやロックなどの要素が色濃く感じられます。特に影響を受けたバンドやアーティストは誰ですか?

正直言うと、自由時間にハードコアとかハードミュージックはあまり聴かないんだ。ハードコアはパーティーで聴くのが好きで、そのエナジーが大好きなんだ。もちろん、家でも少しは聴くけど(主にPrototypesのアーティストや友達のやつ)、そこまで多くはない。ただ、僕はいろんな音楽を幅広く聴いていて、それがすごくインスピレーションになってアイディアをくれる。ベース・ミュージックが大好きで本当に多様で面白いんだ!例えばニューロファンクならBurr Oak、The Clamps、Magnetude、Sinister Souls。あと、サイバーパンクやミッドテンポならF.O.O.L、Extra Terra、We Are Magonia。ニューロブレイクス系ではPluvioやNitepunkも名前を挙げたい。

実際にはもっと幅広く聴いていて、ゲーム音楽のサントラ(『DOOM』『Hollow Knight』『Exp33』『NieRシリーズ』『Hotline Miami』『Souls』…)もアイディアにすごく影響している。もっと落ち着いたエレクトロニック・ミュージックも聴いていて、Senbeï、Animadrop、Arkasiaとかね。ロックやメタルだと、Polyphia、Rise of the Northstar、God is an Astronaut、Andromida、Falling in Reverseが好き。そして、ハードコアに関してはNagazaki、Holly、Berzärk、Zerberuz…挙げきれないけど、みんなうちのレーベルからリリースしていて多くは僕のヒーローで彼らの音が大好きだ。本当にリスペクトしてる。こういう全部の音楽が、僕の音楽に取り組む姿勢や、自分のトラックやセットでどんな要素を聴きたいかに影響を与えてるんだ。


Q. ハードコアとの出会いはいつ頃でしたか?また、そのどのような部分に魅力を感じましたか?

僕がハードコアを知ったのは2010年ごろで、きっかけはハードスタイルだった。その時期は自分の中の熱を発散する必要があって、音楽がそれに完璧に応えてくれたんだ!
暴力的なサウンドなのにきれいに聴こえるところ、そして何よりもたくさんのスタイルやサブスタイル、インスピレーション(時代や国ごとでも)に分かれていて、本当に魅力的なんだ。

新しい音楽を探していた時に、DJ Mad DogがDefqon1でやった昔のセットを見つけたのを覚えてる。そこから「ダークサイド」に行っちゃって(笑)、すぐに同じスタイルのアーティストを次々に知るようになって、それから自分の限界を試すためにテラーを掘り始めた。最終的にインダストリアル/クロスブリードに出会って、そこに落ち着いたんだ。

Q. ご自身で音楽活動を始めたのはいつ頃からですか?最初はDJとして、あるいはバンドでの活動からスタートしたのでしょうか?

そう、僕はDJから始めてすぐに最初のDAW(FL Studio)を入れて、それは今でもずっと使い続けてる。DJを始めたのは2014年から2015年の間だったと思う。最初は趣味だったんだけど、すぐに本気になって僕の人生の大きな時間を占めるものになった。

DJのやり方は、フランスで自分が企画したり参加したレイヴで学んだ。めちゃくちゃアンダーグラウンドで違法なパーティー(たいてい屋外)だった。そういうセットで自分の最初の曲を試して、どう反応されるかを見たりしてた。プロのアーティストの曲と比べて、何を改善できるか理解できたんだ。その時のセットのほとんどはハードドライブに残してある。そのトラックリストは僕にとって大切な思い出で、今でも懐かしい気持ちで聴き返せるよ。もちろん、技術的にはすごく成長したけどね。曲に関しては最初のものは本当にひどくて、全部消えてしまった。でも、別に惜しくはないよ(笑)。だから、2014年から2016年(Iridiumを始めた頃)までは、しっかりした基盤を作って、みんなに高いクオリティのものを届けられるようになるための修行期間だったって言えるね。

Q. Iridiumとしての活動はどのように始まったのでしょうか?メンバーとの出会いやプロジェクト立ち上げの経緯、さらに名前の由来についても教えてください。

このプロジェクトは2016年に始まった。僕はすでにソロで音楽を作ってたけど、Fabien(今のWarfighter)と一緒にデュオとしてこのプロジェクトを立ち上げた。その後、Alexが加わってギターや、曲やライブにもっとメタル要素を入れるようになった。それからまたデュオに戻って、2023年からは僕一人でこのプロジェクトを進めてる。

名前は地球で見つかる隕石(イリジウム)から来ていて、宇宙から来た何かっていう意味を持たせた。僕たちは制作の中でやってきたハイブリッドな要素を正当化するために未来的な方向性を持たせたかったんだ。そのために「Predator」のマスクを選んで、このエイリアンっぽい雰囲気を保つようにしたんだ。

Q. Iridiumはハードコアにさまざまなジャンルを融合させたスタイルを追求しています。その理由は何でしょうか?また、ハードコアとベース・ミュージック、プログラミングと生演奏といった異なる要素を組み合わせるうえで最も難しい点や重要なポイントは何ですか?

僕は違うジャンルの音楽を一つに混ぜて、論理的で“新しい”ものにするっていうアイディアが好きなんだ。ハードコアをやっている以上、キックの部分は常にブルータルなキックで埋まっていて、そこにドラムが多めだったり少なめだったり、ちょっとしたひねりを加える。でも、イントロやアウトロ、ブレイクでは自由でいたい。そこでいろんなスタイルを持ち込んでる。正直言うと、これはその時期に僕が一番聴いているジャンルに大きく左右されてるんだ。今はそこにベース・ミュージックを持ち込みたいと思ってる。前はメタルだったし、たぶん1年か2年後にはまた別のものになるかもしれない。

これはテクニカルな面でチャレンジになるけど、同時にクリエイティブでもある。違うジャンルを取り入れることで、別の種類のサウンドデザインや音を使えるようになる。それがハードコアの部分を、ちょっと革新的にしたり、普通とは違う感じにしてくれるんだ。難しい点で言えば、たいていミックスダウンが全てを左右する。でも、それは僕の制作の中で一番好きな部分だから自分に挑戦を課して楽しんでる。典型的なのは曲やライブにギター録音を入れることや、かなり攻撃的なベース・ミュージックのブレイクを作ることだった。でも結果として基準を満たせてるといいなと思ってる。

Q. これまでにDJセット、マシンや楽器を使ったライブなど、いろんな形のパフォーマンスを行われてきました。そうしたアプローチから学んだことは?

曲でもライブでも僕は新しいことを試して学んで理解して、体験に新しい要素を持ち込みたいんだ。失敗もあったし、野心的すぎたこともあったし、逆に嬉しい驚きもあった。ほとんど全部試してみて気づいたのは、残念ながらDJセットで十分だってこと。ライブと同じくらいみんな満足するし、ライブの準備には何百時間もかかるんだ。準備にかかる労力、全部がちゃんと動くかどうか祈りながらステージに立つ前のストレス、リハーサル…それに対して見返りは十分じゃなくて、現実的じゃない。数年間全力で取り組んで、ベストを尽くしたこと自体には満足してる。

でも、今は小さなバックパックにUSBスティックを入れて、自分の曲のセットをやるだけで済むのが一番嬉しい。少なくとも僕らのシーンや、ヨーロッパやアメリカでは、エレクトロニック・ミュージックにそこまで求められてないと思う。もしやるなら、それはオーディエンスやプロモーターのためじゃなくて、自分のためにやるべきだと思う。

Q. Prototypes Recordsを立ち上げた経緯について教えてください。The Third Movementと密接に関われていたようですが、実際はどのような関係性であったのでしょうか?

この旅は2016年に始まった。Iridiumとして活動していた僕は、自分たちの音楽に合うレーベルを見つけるのに苦労していたんだ。狙っていたレーベルの方向性に合わせるのが難しかった。ヨーロッパでは、スタイルに関して「箱」に収まることが大事なんだ。彼らは僕らにもっとハードコアの制作の基準に沿うようにとか、DJ向きで簡単な音楽にしてハイブリッド要素を減らすようにとか言ってきた。僕らの音楽にぴったり合うレーベルが見つからなかったから、Nagazakiと一緒に自分たちのレーベルを立ち上げたんだ。

でも、僕らのプロジェクトを信じてくれて素晴らしいコラボレーションをしてくれたレーベルもあった。The Third MovementやHeresyはその一部だ。ただ、Prototypesとは直接のつながりはなくて、Nagazakiと一緒にそこでしばらく音楽をリリースしていただけなんだ。このレーベルを立ち上げて、そこにエネルギーを注いできたのは大変で簡単じゃなかったけど、音楽における最高の経験のひとつだと思う。大物アーティストとの関係や自分の作品を共有したい新人との関係、そこで築かれたすべてのつながりを通して、僕らはこのシーンという大きな建物に小さなレンガを積むことができたと思ってる。

Q. Prototypes Recordsはコンピレーション『Industrial Troopers』と『Industrial Engineers』シリーズを通じてインダストリアル・ハードコアを積極的に発信してきました。あなたにとってインダストリアル・ハードコアの魅力とは何ですか?

この2つのコンピレーションは、Prototypesを始めた最初の年に立ち上げたコンセプトなんだ。Various Artistsのリリース(つまりコンピレーション)を作るのはすごく時間とエネルギーがかかる。10人のアーティストを同時にスケジュールに合わせるのは簡単じゃないし、リリースをちゃんとプロモートするためにはマスタリングや映像コンテンツの制作もかなり増える。

そこで「Troopers」は新人に焦点を当てていて、数か月前にSNSで募集をかけたり、1年の間にメールで送られてくる思いがけない傑作を選んだりしてる。このリリースでは統計とかプロモーションとか、そのアーティストのカタログなんかは一切見てない。ただ音楽そのものと、そのアーティストを紹介できる可能性だけを基準にしてる。もちろん、インダストリアル・ハードコア、クロスブリード、ブレイクコア、ハードテクノ寄りのものやUKハードコア寄りのもの…といった具合に、いろんなスタイルやBPMを選ぶようにしてる。このリリースはうまくいっていて、うちのコミュニティは新しい音楽に対して好奇心旺盛でオープンなんだ。ここでリリースしたアーティストが、その後レーベルのレジデントになって、さらにEPを出したりソロリリースを続けたりするのもよくあることだ。

一方で「Industrial Engineers VA」はまったく違う。必ずしも毎年やるわけじゃなくて、目的は自分たちのスタイルやシーンをできるだけ広いオーディエンスに届けることなんだ。そのために有名で権威のあるアーティストをレーベルに迎えつつ、うちのレーベルのDNAとうまく融合させる。The Outside Agency、Negative A、Akira、The Satan、eDUB、DJIPE、Lowroller、Malke…といったアーティストを迎えることができて、このリリースを出せること、そして実績あるアーティストたちが参加を喜んでくれることに本当に満足してる。

Q. 現在のインダストリアル・ハードコア・シーンについてはどう感じていますか?

かなりポジティブだと思う。関わっているレーベルは多くないけど、あるレーベルはしっかり活動していて、小さいけどアクティブなコミュニティがある。それに僕たちもその中で自分たちの居場所を持てていると思う。Prototypesから出している音楽はクラシックなインダストリアルとは少し違っていて、たぶんもう少し“ニュー・スクール”っぽいサウンドなんだ。

もちろん、自分たちの音楽がもっと広く代表されてほしいと思ってる。特にフェスやコンピレーション、大規模なハード・ミュージックのイベント、例えばオランダのフェスティバルなんかでね。でも、それを除けば世界中にこの音楽を愛して、小さなパーティーやフェスを情熱的に企画するコミュニティがあることに僕はとても嬉しく誇りを感じてる。これはレーベルの5周年ワールドツアーで実際に見たことなんだ。それが大事な視点を与えてくれた。

確かにこのスタイルで有名になったり金持ちになったりすることはない。でも、その一方で人との出会いや交流、音楽への情熱、そして世界中に僕らの小さなレーベルを知ってくれている人たちがいるという事実は本当に信じられないくらい素晴らしいことなんだ。

Q. ThunderdomeやMasters of Hardcoreといった名門コンピレーションにIridiumの楽曲が収録されました。それによって活動にどのような変化や影響がありましたか?

正直に言うと、すごく大きな個人的なご褒美だし、こういうメジャーなコンピレーションでこの音楽が求められているのを見ると本当に嬉しい。でも、その一方で、その後のブッキングや統計に関してはほとんど影響はない。確かにそのきっかけで僕を知った人は少しいるけど、基本的にはインダストリアル・シーンが「自分たちの代表がこういうコンピに載った!」って喜んでくれることのほうが大きい。僕らはあまり広く取り上げられないからアーティストが収録されるたびに小さな勝利なんだ。

Q. あなたはオランダのハードコア・フェスや大規模イベントでもプレイしています。オランダのシーンや業界にどのような印象を持っていますか?また、今後オランダと同じ規模で他の国でもハードコアが発展する可能性を感じますか?

オランダではハードコアは巨大な産業だ。みんな情熱的なんだけど、それでもまず第一にビジネスなんだ。僕らの音楽ジャンルはニッチな市場だから、彼らにとって僕らは重要じゃないし、特に興味深い存在でもない。だけど、それで全然いいんだ!僕はハイプや名声を追いかけるレースに参加するためにここにいるわけじゃない。もちろん、ああいうイベントはめちゃくちゃ楽しいし、出演できたのも良い時間だった。でも自分のギグの中で、必ずしも一番上に置くようなものじゃない。

実際、インダストリアル・ハードコアはヨーロッパ中(特に中欧や東欧)の小さなフェスやアンダーグラウンド・クラブに居場所がある。XMassacreやDox’Art Festivalではずっと楽しかったし、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、オーストリア、ベルギーのアンダーグラウンド・クラブでは最高の雰囲気を感じられて、素晴らしい思い出がある。だからといって、大規模なオランダのフェスにまた出られたらすごく嬉しいけど、それを必死に追い求めようとは思わない。僕はこのインダストリアルなスタイルはすごくニッチで、小さくて強くコミットしたコミュニティを持つアンダーグラウンド・シーンにこそ合っていると思ってる。

Q. 楽曲制作のプロセスについて教えてください。現在使用している機材(DAWやスピーカーなど)や、曲作りの際にまず取りかかる工程(サンプリング、キック制作など)は何ですか?

僕はFL Studioでゼロから作って、最終マスターまで仕上げてる。実際にはどんなDAWでも作業できるんだけど、それは勉強の中で学ばなきゃいけなかったことだからね。でも、結局慣れているし、ツールやインターフェースも自分に合っているからFLを使ってる。ライブをやる時はAbletonを使うし、録音が必要な時はProtoolsを使う。モニターはFocal Alpha(ほとんどのPrototypesのアーティストも使ってるやつ)で、その音がすごく気に入ってるんだ。僕が求めているのはまさにこれで、インパクトが強くてベースやサブの存在感もあって、音の広がりもいい。クオリティと価格のバランスを考えると本当におすすめできる。

プロジェクトを始めることに関しては、それが一番の悪夢なんだ。この部分はテクニカルじゃないし、自分がどこに向かってるのか明確なアイディアを持つことは滅多にない。だから、例えば最新アルバムでは自分に小さな挑戦を課して、各トラックを違うやり方で始めてみた。キックから始めたり、イントロから始めたり、ブレイク、ボーカル、メロディから始めたり…。

もし、自分の好みを言うなら、やっぱりキックから始めるのが好きだね。すごくテクニカルな部分で、自分にとってはかなり作りやすい。でも、イントロやブレイクのアイディアとつなげるのが難しいことも多い。だから結局、一番効率がいいのはイントロやブレイクから作って、そこにハードコアの要素を入れていくことなんだ。ハイブリッドなことをやろうとすると(しかも自分があまりクリエイティブじゃないと)、そこが問題になる。でも、僕はそういうやり方が好きだから、やる価値のある努力だと思ってる。

Q 1曲を完成させるまでに平均してどのくらいの時間がかかりますか?

アルバムやその後に出したEPを例にすると、だいたい30〜50時間くらいかな。僕はけっこう時間をかける方で、細かい部分まで突き詰めたいし、何より自分の作ったものに満足することがほとんどないから、納得いくまで何度もやり直さないといけないんだ。もっと効率的にはできると思うんだけど、最大の問題はプロジェクトを始める段階なんだ。僕はあまりクリエイティブじゃないから、最初はよくスランプに陥る。でも、一度始まってしまえば、あとはテクニカルな作業になっていって、自分もやりやすくなって、自然と流れに乗れるようになる。

Q. Prototypes Recordsではサンプルパックも制作されています。サンプルパックを効果的に使うにはどうすれば良いでしょうか?また、プロのプロデューサーもサンプルパックを使用することはあるのでしょうか?

一番良い方法はレイヤーすることだね。うちのパックは量的にかなり充実してるから、それを組み合わせて新しいものを作って自分のものにできる。初心者なら、そのサンプルを使って音楽の作り方を学ぶのもいいと思う。BPMとキーは必ず表示してるから、音楽をパズルみたいに組み立てながらソフトの使い方を学べる。基礎をしっかり学ぶにはいい方法だよ。

もちろん、プロのプロデューサーもサンプルパックやプリセットパックを使うし、当然自分たちのパックも使う。でも、いいサンプルをレイヤーに混ぜたり、トランジェントやFXみたいな簡単な要素として使うのはよくあることだ。僕自身は、ハードミュージックとは関係ないジャンルのサンプルパックを使って、それをハードコアに取り入れるのがすごく好きなんだ。簡単ではないけど、独自の面白いタッチを加えられる。

Q. 今年4月にアルバム『Cybervoid』をリリースされました。今作のコンセプトやコラボレーターの選定について、その背景を教えてください。

『Cybervoid』は僕がソロとして出した最初のプロジェクトなんだ。ほぼ1年かけて作ったけど、16曲を作るには実際そこまで長い時間じゃない。それでもできる限り良いものにしたかった。

多様性を持たせて自分のハードミュージックの趣味を反映させつつ、これまでフォーマットや制作過程の都合でできなかった新しいことを試したかったんだ。自分の中で入れるべきだと思ったインスピレーションやハイブリッド要素を選んで、それを盛り込んだ(もちろん、ベース・ミュージックがかなり入ってる)。一緒にやる相手は、気楽に仕事ができる仲間や友達を選んだ。このプロジェクト自体でかなりプレッシャーを感じていたから、リラックスして取り組めることが必要だったんだ。そして、自分へのご褒美として僕がレジェンドだと思ってる3人にリミックスを頼んだ。Detest、Zardonic、Code:Pandorum。彼らはこのプロジェクトを面白いと思ってくれて、参加してくれたんだ。

Q. 『Cybervoid』収録曲の中で、あなた自身が最も思い入れを持っている曲はどれですか?

正直言うと、このアルバム全体が僕にとって個人的な意味を持っていて、ひとつだけ選ぶのは難しい。どの曲にもサイドストーリーがあるんだ。「Cybervoid」は最初に完成した曲だと思うけど、それは本当に全部を吐き出す必要があった時期に作ったもので、自然にまとまった。僕にとってはすごく当たり前に出てきた曲だった。「Already Dead」は、数少ない自分が結果にすごく満足している曲のひとつで、小さな成功だと思ってる。

もちろん、特別な意味を持つコラボもある。彼らはただのコラボレーターじゃなく、一緒にやってきた友達だからだ。例えばZerberuzはレーベルツアーの時に僕の家に来て、アルバム用に予定していなかったコラボを始めたんだ。それがすごくうまくいって、作曲の上でも現実の生活でもめちゃくちゃ気が合った。そういう瞬間は絶対に忘れない。そして、リミックスもある。自分で作業したわけじゃないけど、自分のお気に入りのアーティストから自分の曲の新しいバージョンを受け取るのは本当に素晴らしい体験だった。

Q. あなたは以前から日本のハードコア・プロデューサーをサポートされています。日本のシーンの存在を知ったのはいつ頃ですか?また、特に注目している日本のプロデューサーはいますか?

多分、2018年ごろだったと思う。僕はその頃パリでサウンドエンジニアリングの勉強を始めたばかりで、隣人の一人(Meggido)がDJで音楽好きだったんだけど、前年に1年間日本に行ってたんだ。彼が大量のリファレンスや音楽を持ち帰ってきて、それで日本のアーティストのプロダクションスタイルに惚れ込んだ。まったく独自のスタイルで、30秒聴けば日本人アーティストの曲だってすぐ分かるし、常にクオリティが高くてクリエイティブなんだ。君たちのシーンは本当に魅力的だと思う。それ以来ずっと追いかけてきた。

2年後に自分のレーベルを始めた時、日本のアーティストがヨーロッパでもっと知られるように手助けしようとしたし、こっちのオーディエンスに日本のスタイルを紹介しようとした。それはかなりうまくいってると思う!Aggression Audioのコンピを繰り返し聴いて、日本で作られているものにどんどん驚かされたのを覚えてる。

もし、一人だけ注目すべき日本のアーティストを挙げるなら迷わずHollyだね。今のところ彼が一番好きなハードコア・プロデューサーだと思う。しかも、ハードコア以外のスタイルもすごくうまく作っていて、僕の好みにドンピシャなんだ。本当にすごいプロデューサーで、僕は彼をとても尊敬してる。なぜ、彼が日本でイベントにもっと呼ばれていないのか理解できないけど、彼の成功を願ってるし、これからもできる限りサポートしていきたいと思ってる。

Q. 10月4日に開催される「Gemeinschaft of Hardcore ~The Lethal Destruction~」で初来日されます。日本のファンへのメッセージ、そして滞在中に楽しみにしていることをぜひ教えてください。

本当に楽しみにしてるよ。イベントまでもう数日だけど、絶対に最高のものになるってもう分かってる。何年もこの日を待ってたんだ。僕の音楽をみんなとシェアするのが待ちきれないし、同時に日本という国を体験して、これまで一緒にやってきたアーティストたちにやっと会えるのが楽しみなんだ。Hollyの名前を挙げたけど、Quark、Sunkt8、Miyuki Omura、Matsui…そしてまだ会ったことはないけど、(ほとんど)全リリースを聴いてきたアーティストたちとも会えるのが待ち遠しい。

君たちの文化や国にはすごくリスペクトを持ってる。東京を訪れるのは今回が初めてだけど、絶対にまた来ると分かってる。いつか数か月間、自分の生活を休んで日本に戻り、もっと深く探索したいと思ってる。日本には文化的にも景観的にも本当にたくさんの魅力があるって知ってるからね。