“GHz Interview44” Shimon_Harbig

INTERVIEW

秀逸なスキルとアイディアをもとにUKハードコア~ブレイクコア~インダストリアル・ハードコア~ガバ~ハード・テクノ~リズミックノイズを独自配合させたオルタナティブはハードコア・スタイルで国内外のコア層から注目を集めるプロデューサー/DJ「Shimon_Harbig」のニューアルバム発売を記念したインタビュー記事を公開!

MURDER CHANNELからリリースされた前作『Petty Quarrel』がヨーロッパの次世代オルタナティブ・ハードコア・シーンでサポートされ、最近ではHeatcore Sonicのコンピレーションにも参加されたShimon_Harbig氏。Gabber EleganzaのDJミックスにもトラックが使用されるなど、これから更に大きく世界を舞台に活躍するであろう期待のアーティストであるShimon_Harbig氏にニューアルバム『Filmcode_X』の制作を中心に色々とお話をお聞きしました。

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Shimon_Harbig
https://www.instagram.com/shimon_harbig/
2017年からDJとして活動を開始し、翌年の2018年から楽曲制作を開始。エクスペリメンタルな展開と陰鬱なサウンドを特徴とし、2022年4月にリリースされた「Gimcrack Life Is Enough Is Enough Is Enough !!!」より自身のスタイルを確立。それ以降はハードコアテクノ、ガバ、ハードテクノを中心に制作。東京・渋谷を中心にDJの活動をし、海外アーティスト招致のパーティーにも参加している。


Q. Shimon_Harbig さんの音楽活動歴について改めて教えてください。いつ頃から DJ/プロデューサーとして活動を開始されていますか?

2017年にDJとして活動を開始し、当初はハウスミュージックやベースミュージックのDJとしてイベントに出演していました。翌年から某専門学校で楽曲制作の勉強を始めました。
現在は一貫してCubase Proで制作していますが、右も左も分からなかった頃は無料版の FL Studio、Ableton Liveで練習をしていました。この辺は今でも扱えないし、よく分かりません。勉強しようとは思ってます。
そもそも音楽活動を始めたキッカケは自分でもよくわからないのですが、中学生の頃にEuromastersを知ってしまった事、Electrox2017がちょっと楽しかった事、大学に行きたくなさすぎた事がキッカケだと思います。まぁまぁ不純でした…

Q. 過去にはダブステップなどのベースミュージック系もDJとしてプレイされ、トラックもクリエイトされていたそうですが、それらの要素は現在のハードコア・スタイルにも受け継がれている部分はありますか?

恐らく受け継がれている要素はほとんど無いかと思われます。しょっちゅう作り方を変えたり、プラグインやエフェクトを更新したり、現在もなお模索中だったり…自分の中ではハードコア・スタイルが少々異質なのも関係ありそうです。
ナイト DJ 時代、オランダのBarong Familyというレーベル辺りが大好きで、あのラテン系のアホっぽいリードシンセが堪らなく好きでした。今作以外だと、根幹では「アホっぽさ」「攻撃性を重視していない」部分は受け継がれているかもしれませんね。

Q. Shimon_Harbig さんの音楽にはインダストリアル・ハードコアのエッセンスがあり、ニューアルバム『Filmcode_X』には特に大きく反映されているように思えるのですが、実際にインダストリアル・ハードコアからの影響はありますか?

無くは無い、という感じでしょうか…確かにインダストリアルは大好きですが、それ以上にガバや UKハードコアからの影響の方が大きいと思われます。個人的にはインダストリアル・ハードコアを制作している感覚はありません。
今作に関してはかなり硬派なのでキックのアプローチはインダストリアルに近いかもしれませんが、その他のシンセやサンプルトラックは様々なジャンル(ガバ、メインストリームや BGMなど)を参考に制作しています。総じてマッチョイズムは捨てていますね。

Q. 7月31日に発表されるアルバム『Filmcode_X』のコンセプトを教えてください。

直訳すると「映画の識別番号_X」になります。映倫番号みたいなものですね。その映画(架空の作品)のサウンドトラックというのがコンセプトになります。その映画の内容までお話しすると長くなるので、どこかのタイミングで公開できればと思います。6月17日に発表したティザームービーではその一部が垣間見えますので、そちらも併せてご覧ください!

ちなみに『Filmcode_X』というのは制作途中で路線変更した後の表題であり、初期は『The Orchestra』というアルバムになる予定でした。表題通り「オーケストレーションを組み合わせたハードコアミュージック(仮)」みたいなコンセプトでしたが、自分のサウンドをさらに追及した結果、本作品が生まれました。
「1.Introduction」「9.Trickling Brook」「11.Artemisia」はその名残です。

Q. 『Filmecode_X』がリリースされる前に『Grimdark』『Petty Quarrel』というEPをリリースされていますが、この二つは『Filmcode_X』とコンセプトや世界観は繋がっているのでしょうか?

コンセプトや世界観は繋がっておらず、全く別物になります。前作 2作品はなんと言いますか、元気な時に作ったので、元気がいいです。
今作はこれまでで最もダークで、最も重厚な一作となっており、過去の作品とのつながりを一切感じさせないつくりになっていますが、ただ一つあるとすれば 3 年前にリリースした『LastmeaL EP』はどこかで繋がっているかもしれません。


Q. 『Filmcode_X』には RoughSketch、DOORMOUSE、yumeo、Høbie がコラボレーションで参加されています。彼等とのコラボレーションはどのように進められていったのでしょうか?

まず海外勢のDOORMOUSE、Høbieですが、彼らの制作方法に則ってトラックメイクをしました。DOORMOUSEにはズタズタに切り刻んでもらうために完成したトラックを送り、Høbie には発祥の地オランダのグルーヴを取り入れてもらうため、1分40秒ほどで切り上げ、送りました。返ってきた楽曲からさらにエディットすることはほとんどしませんでしたが、破壊的な雰囲気を持つトラックに仕上がりました。

そして日本勢の RoughSketchさん、yumeoに関しては、トラックメイクではなく作曲・編曲のような進め方になったかと思います。センドリターン式は変わりませんが、コード・メロディを作編曲し合い、最終楽曲にふさわしい重厚なトラックになりました。
余談ですが、先日リリースされた『yumeo – Wild Tale』の作中に出てくる「アルテミシア共和国」と今作のトラック 11.Artemisiaは繋がりがあるとか無いとか。この曲は元々ユニットcodesight.の楽曲としてリリースされる予定でした。

Q. アルバム制作に使用した機材を教えてください。

DAW:Cubase Pro 12
使用機材:KORG-Volca Kick、Pioneer DJ-PLX-500
プラグイン:VIRHARMONIC-Bohemian Violin&Cello、Sonuscore-The Orchestra、UVI Orchestral Suite、Heavyocity-GRAVITY、Strezov Sampling-RHODOPE 2&Choir Essentials、
8dio-Soundpaint(CLANGGG)、Cubase 純正プラグインなど
モニター:Pioneer DJ-VM70、Westone Audio-UM Pro30
マスタリング:Native Instruments-Supercharger GT、iZotope-Ozone 9、Camel Audio CamelCrusher

Q. キックはどのような過程で作られているのでしょうか?『Fimcode_X』の CD-R 版にはアルバムで使われたキックが入手できる DL コードを配布されますが、ご自身で作ったキックを提供することについてどう思われていますか?ご自身もプロデューサーやメーカーが配布されるキックサンプルを使って曲を作られることはありますか?

僕もほとんどの場合、その辺に転がっているサンプルを使用します。909やVolca Kickから作り上げる方が稀です。ただ、サンプルを使用するにしてもそのまま使うことは絶対にありません。EQやモジュレーション系のエフェクトで色を出し、何重にもコンプレッサーを重ねて厚みを作り、爆音にします。
「4.UI(Skeuomorphism)」「6.SUPER-DIE-NAMITE」「8.Imperial Rage」では制作方法を共有していて、一つのモジュレーションエフェクト(Rotary)から多彩なキックサウンドを作っています。が、上手くいくかは運任せです。大体失敗します。

制作したキックサンプルを提供することについては何も問題ありません、むしろ使用してもらえたら光栄です。サウンドを真似されたらシンパシー感じてお喋りしに行くかもです。サンプルはさらに切り刻んだり、エフェクトでズタボロにすると良い音で答えてくれます。

Q. 『Filmcode_X』収録曲で最も印象深い曲はどれですか?

「9.Trickling Brook」です。路線変更前に制作した楽曲ですが、相当オルタナティブだなと思います。というのも、モーリス・ラヴェルの「水の戯れ」という曲のカバーだからかと思います。当時は複雑で不協和音すぎて酷評だったとか。
楽譜を読むところから始め、サウンドメイクはかなりこだわりました。制作する前からイメージを強く持っていたので、それほど時間はかかりませんでした。むしろ、原曲があまりに複雑なので楽譜読んで midi化する時間の方が長かったと思います…

Q. Shimon_Harbigさんはyumeoさんとのユニット「codesight.」では VJ/ビジュアルを担当されていますが、視覚表現にはいつ頃から興味を持たれていましたか?codesight,ではどのようにしてお二人のイメージを視覚化されているのでしょうか?

codesight.は完全分業で、先行でyumeoがトラックを作り、それに合わせた過激なコラージュビデオを僕が制作するといった感じです。共通するイメージは「ゲロい作品」ただ一つ。
興味を持ったというよりは「やらなきゃなぁ」ぐらいの気持ちから始まりました。確か作品としては「Grimdark」のMVが初めてだったと思いますが、その辺りから本格的に取り組み始めました。現在はBlenderを用いた3D作品も手掛けています。codesight.の過去作品「Hello, we are codesight.」「ZEN-SHIN」では制作中イメージの共有
などは全くしませんでした。急にトラックが送られてきて、視覚化してyumeoに返す感じです。仲は良いです。最近は会ったときにイメージの話をしてくれるので、次作からはより「ゲロい作品」になってるかと思われます。


Q. ハード・テクノとの混合や新たな世代によるオルタナティブなハードコアの台頭など、近年のハードコア・テクノ・シーンをShimon_Harbigさんはどのように感じられていますか?

どんどん新しいサウンドが生まれ、新しい手法・展開が生まれ、どんどん進化していくなぁと思う反面、良い意味で根幹は昔から変わらないなぁとも思います。本当に不思議な感じです。DJ として楽曲を掘るときに、2,30 年前の楽曲に衝撃を受けることなんてザラにありますし、こういうところはやはり商業音楽ではありえない面白いところだと思います。近年でも未だに新種のバケモンみたいなプロデューサーが次々に現れるので本当に狂ってるなと思います。

Q. 音楽活動において現在の目標とされていることはありますか?

活動の幅をどんどん広げていきたいです。DJとして、VJとして、コンポーザーとして、ビデオグラファーとして活動していき、マルチクリエイターの肩書を名乗ってみたいですね。

Q. 今後のスケジュールを教えてください。

8/3(土)にTHE DAY OF HARDCORE 2024と、10/5(土)にHARDCORE ASSOCIATIONによるTripped 来日イベントに出演予定です。
初出し情報ですが、年内にもう一つのアルバム「21-24 Psychologic Cultureshock」を自主リリースします。今作以上に何でもアリでカオスな作品となっております。お楽しみに!