“GHz Interview35” Supire

GHz Interview, 未分類

細部まで緻密に作り込まれたサウンドデザインと強靭で表現力豊かなビートとメロディを武器に、Prototypes Recordsからのシングル・リリースやNight On Earth Records、Psycho Filth Records、Fujimi Industry Recordsなどのコンピレーションで圧倒的な存在感を放っているSupireさんのインタビューを公開!

Supire
https://soundcloud.com/nh_supaia
1998年生まれ、大阪在住の音楽家兼芸術家。Hardcore / Breakcore / IDMを軸に活動中。
耽美な作風のイラストレーションを軸に、アートワークやデザイン・ロゴタイプなどの制作を行っている。
Born in 1998, He was the number one musician and artist in Osaka. Active around Hardcore / Breakcore / IDM. With an aesthetic illustration as the axis, He created album artwork and design logotypes.


Q. ご出身はどちらでしょうか?

大阪の北側に生まれ、現在も住んでおります。川沿いに住んでいるのですが、非常に静かで都市と自然が調和したような場所で居心地がとても良いです。

Q. Supireさんの音楽(または世界観)に影響を与えた幼少期の出来事などはありますか?

昔から親兄弟がピアノを弾いたりドラムを叩いたりしていたせいか、しょっちゅう音楽を耳にし続けていたので、自然と音楽のことが好きになりました。またゲームが好きで、その中でも特にメトロイドプライム3・ゆめにっきというゲームに非常にハマりました、今もハマっておりますが・・・
メトロイドシリーズは主人公のバウンティハンター、サムス・アランが広大な宇宙を探検し、様々な惑星の未知のテクノロジーや文明、独自の生態系等を踏破しながら進んでいく探索アクションゲームで、その世界観やBGMに非常に影響されております。
ゆめにっきはWindowsで無料で遊べるフリーゲームで、暗い雰囲気の夢の中を歩いてアイテムを集めるだけのゲームなのですが、雰囲気のダークさに魅了され、よくテーマとして用います。

Q. 音楽に興味を持たれたのはいつ頃からですか?

音楽を本気で好きになったのは中学3年生の頃、バンドをやりたくて誕生日にギターを買ってもらってからです。
高校入学後1年間ギターの練習に励んでいたのですが、その際練習の一環としてJubeatという音楽ゲームを遊んでおりまして、Jubeat内に収録されていた楽曲達からハードコアに目覚めました。
その後はすぐに外国のハードコアテクノに興味を持ち、Tha Playahを初めに聴いてからどんどんとのめり込んでいきました。
ギターはモチベーションがなくなってしまい継続できなかったのですが、その反動かハードコアに対する興味は逆にどんどんと増えていきました。

Q. ご自身で音楽制作を始められたのはいつからですか?

今から7年前の、高校2年生の終わりごろの春です。当時美術大学へ行くために受験勉強をしていたのですが、そのストレス発散として楽曲制作を始めました。
最初は無料で使えるMuToolsのMuLabというDAWを触っておりましたが、このDAWのフリー版は4トラックしか扱うことができず、開始から1年ほどは4トラック縛りで曲を作っていました。

Q. Supireとしての活動がスタートしたのはいつからですか?また、Supire名義以前にも楽曲を公開したり、発表されたりしていたのでしょうか?

Supire名義を始めたのは大学4回生の終わりごろの誕生日です(2月生まれなので)。
元々は「Spire」という名前で趣味程度に活動していたのですが、大学卒業のタイミングで本気で音楽活動をしたくなり、Spireでは音楽方面で名前かぶりが頻発していたこともあって、再スタートの意味を込めて名前をマイナーチェンジしました。なので読みはSpireと同じく「スパイア」と読みます。

Spire名義で且つギリギリ聴けるレベルのクオリティの楽曲は、Supireのbandcampにて「Spire – Old Works」というベストアルバムに収録しております。
さらにもっと古い名で小学校の頃からゲームのハンドルネームなどに使っている「Supaia」という名義でもほんの少しだけ曲をリリースしており、1曲くらいはOld Worksに入れたような気がします。

Q. 音楽活動を始められた時に目標や夢などはありましたか?

完全に趣味スタートだったのですが、最初の目標は「自分が好きなハードコアのキックサウンドをどれだけ再現できるか」でした。なので4トラック縛り時代の始まりから今に至るまでずっとサウンドデザインをし続けております。
現在ではインスパイア元を一切聴かずとも何不自由なく自分の理想のキックをデザインできるようになったので、この目標は達成できたと思います。
またこのころ描いていた夢は、「本場のハードコアを作っている人と交流がしたい」でしたので、おかげさまで今叶えさせてもらっている最中です。

Q. 2020年に『Howling EP』をセルフリリースされましたが、今作が生まれた背景を教えてください。

このアルバムは2020年に出演したSUNCAQ2020というイベントに向けて作ったライブセットを修正、曲の追加等をしてリリースしました。
ライブセットの時点でSupire名義初のEPリリースにする予定だったので、相当曲同士の関係性などを練りました。
また今までのSpire名義とは違うということを伝えたかったので、新しい実験的な試みに挑戦した楽曲ばかりを収録しました。
同時期にOld Worksをリリースし、過去の自分との決別・生まれ変わり・挑戦の意志を込めたリリースでした。
このアルバムを制作するにあたり培った技術や反省点は今のSupireにとても活かされています。

Q. 楽曲制作のプロセスにについて教えてください。メロディ、サンプリングのチョイス、またはキック/ビートから作られていきますか?

基本的に行き当たりばったりで制作しています、一人で何もすることが無いとき等にアイデアが湧いて出ます。
そのアイデアが面白そうならば、まずは言語化してアイデアを補強します。
補強されたアイデアを元に、テーマやジャンルを決めて楽曲を作り始めます。なので曲のテーマジャンルが違えばプロセスや処理も全然違ってくるということです。
それとSupireは代替が効くサウンドは基本的に自作しており、曲を作るたびに何か新しい素材を作っているので、サウンドデザインから曲を思いつくこともあります。

Q. 現在使用されているDAW、スピーカー/ヘッドフォン、お気に入りのプラグインは?

現在DAWはFL Studio 20を使用しております。
サウンドデザインをするときに内部プラグインのEdison等を用いてwav化することがほとんどなのですが、FL StudioはWavの取り回しが非常に便利でとても自分の作風に合っていると思います。
またFL Studionの弱点部分を外部プラグインで補う形をとっているので、当分はこのDAWを使用し続けるだろうと思います。

イヤホンはMDR-EX800stを使用しております。
イヤホン専門店で聴き比べをして決めました。有名なモニターヘッドフォンのMDR-CD900stのイヤホン版だと言われているそうなのですが、個人的にはコレよりいい音だと思っています。
耳の形に合うか合わないかでつけられる人が限られるイヤホンではありますが、この値段帯ならばこのイヤホンは相当良い方の音だと思います。
またiPhoneEar Podsを用いて音源を確認したりもしています。正直そこまでこだわりを持っていないです。

お気に入りのプラグインは、シンセではMassive・Phaseplant・The Mangle、エフェクターではSAUSAGE FATTENER・FL Limiter・KiloHearts製品です。

Massiveは購入してからずっと愛用しており、キック・スネア・ベース・グリッチ・メロディ要素等ほぼすべての音をコレから製作しておりました。
Phaseplantを手に入れてからはより細かいデザインを行えるようになり、少し出番は減りましたがまだまだ主要のシンセサイザーです。
The Mangleはグラニュラーシンセシスで、上記のシンセ等で作った音から新たにノイズ・グリッチを制作したり、特殊なパッドやアンビアンスを作るために重宝しています。

SAUSAGE FATTENERはキックやベース作りで欠かせない存在で、とりあえず使用しています。
FL Limiterも同様の使用法をしておりますが、こちらの方が設定次第では音の変化が少ないので、ボリュームを上げたりコンプ代わりに使ったりなど相当お世話になっています。
KiloHearts製品は最近導入したのですが、どれも出音がとてもよくて尖ったプラグインもあり、音幅がとても増えました。
同社のプレミアムFXシリーズも少しづつ集めており、コンプリートしたいととても思っています。

Q. キックの制作過程について出来る範囲で教えてください。

ディストーションキックを作るにあたり、基音となる普通のキックからアタック音、アタックキャラクター・ベースジョイント・ベース基音・ベースキャラクター等に細分化してサウンドデザインを行い、それぞれを細かく調節しています。
調節の為全部の音を極力wav化しておりますが、ベースのみ時々シンセから直接鳴らしたりします。
また曲を作るたびに、パーツ含み一から自作するように心がけているので、作るたびにブラッシュアップされたり新しい試みに挑戦したりして少しづつ音が変わっていっております。

Supire – Aquaphiliaのキック

Supire – Griffithのキック

Q. 1曲作るのに平均どれくらい掛かりますか?曲の完成はどのようにして決めているのでしょうか?

DAW上の時間ではサウンドデザイン含め20~30時間、現実時間では3~7日ほどです。
やっていることの割には速筆の方だと思います。

Q. 楽曲制作でスランプになった時の対処法などはありますか?

スランプになったことが無いのでありません。
スランプにならないコツはとにかく食わず嫌いをせずにたくさんのジャンルを聴く事、プライドを捨てて人の曲を研究・パクリを率先して行う事だと思います。これによりアイデアの土台が広がり続けるので、基本的に枯渇しません。

作り慣れていないジャンルなどは、制作中にインスパイア元になる曲と聴き比べを行ってとにかく比較します。
新しいアイデアは既存のモノと既存のモノを組み合わせて生まれると思っているので、新しいことを知ること、挑戦し続け変化し続けることはスランプに陥らないための大切なことだと思います。
実際私はまだまだ作りたい曲がたくさんあり、今抱えている企画を全て完了させてもまだ、同量の企画を企てることができます。
また、私の楽曲はサウンドデザインがウリなので現在行っているジャンルの様式にそこまでこだわりが無いからこそ、Supire名義で枯渇せずにたくさんの曲を作ることができていると思います。

Q. 9月にリリースされるニューアルバム『Lustre』のコンセプトは?今作で新たに挑戦した事などはありますか?

Lustreはひたすらにメロディ要素を削ぎ、ビートの音・リズムグルーヴに注目してほしいと思い制作しました。
斬新な音やグルーヴを絶えず求め続け、「人間の内面性の美」という一貫したテーマ性を元に分解再構築をし続けた末に現れた10曲の楽曲たちです。
今回のアルバムを作るにあたり、ルーツであるメトロイドのコズミックホラーライクなエッセンスを理解しなおしたことと、Qebrusの残した楽曲たちに出会ったことがとても重要でした。

このアルバムにおいてメインで行ったことは、4拍子でありながらも4拍子を逸脱した進行を行ったり、小節やグルーヴそのものを大胆に破壊してしまうような進行を意識して曲を構成しました。
ビートにノる地帯と音に圧倒される地帯をリズムで分けて表現した、みたいなイメージです。普通の楽曲の進行よりもサウンドデザインに注目できるような構成になっていると思います。

Q. 近年、シンパシーを感じるアーティストはいますか?また注目しているジャンルやアーティストは?

Dolphinの作るキックサウンドが自分の音に似ていたことや、作る楽曲のダークさ・厳格さにこだわりを感じとてもシンパシーを覚えました。彼のような楽曲をいつか作ってみたいです。

Supireは主にSoundcloudを用いて曲を聴いています。
アーティストにハマって聴くことが多いのですが、最近良いなと思ったアーティストはSIRIUS・Saka・JUSEVA!・Danretsu等です、他にもたくさんいらっしゃいます。
ジャンルについては最近はDrum and Bassに注目しており、Gyrofield・Phace・Mefjus・The Caracal Project等のアーティストの楽曲を追っています。特にGyrofieldのサウンドが本当に大好きで、彼女の新曲はほぼすべてチェックしており、研究・勉強をさせてもらっています。
Critical MusicやNeosignal Recordings等のレーベルもチェックしています。

Q. 音楽制作のモチベーションとなっている事などはありますか?

各SNSでのコメントやいいね、口コミ等を見かけるととてもありがたい気持ちになります。
またSupireはいつか創作活動を主軸に自立していきたいと思っているので、販売されているアルバムを買っていただけたらとても励みになります。

Q. 音楽と並行されてイラスト制作も行われていますが、イラストを描かれている時は音楽を作られている時とは違ったスイッチや視点、感覚があるのでしょうか?

自分の中では音楽脳とイラスト脳はかなり似ていると感じています。
音楽を聴く際に情景が浮かぶことがあれば、逆にイラストを見る際に音が浮かぶこともあります。
絵を描く際、聴いている曲に絵が寄っていくことがあるので、絵を描く際は聴き慣れた曲か絵のテーマに準ずる曲を聴くようにしています。
恐らくですが絵も音楽も私は日ごろからかなり言語化している為、自然に共通項が増えたのではないかと思います。

Q. 今後の予定を教えてください。

現在たくさんのリリース計画や制作プランを進行しています。これから先も良いお知らせをたくさんできるかと思います。
また海外レーベルはもちろんの事、たくさんのお仕事に関わらせていただきたいと思っておりますので、何かありましたらお気軽にお声がけいただきたいです。

これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

Supire
https://soundcloud.com/nh_supaia
https://nhspire.bandcamp.com/
https://twitter.com/NH_supaia