“GHz Interview27” Abort Mastication

GHz Interview

GHzでは御馴染みのデジタル・グラインドコア・アーティスト「OZIGIRI」のZUHO氏がボーカルを務めるデスメタル・グラインドコア・バンド「Abort Mastication」のインタビューを公開!

今年リリースされた待望のニューアルバム「Dogmas」では、デスメタルとグラインドコアを軸に様々なバックグラウンドが反映されたハイクオリティな演奏技術とボーカルによって作り出される唯一無二のエクストリーム・サウンドと、Abort Masticationの独特な世界観で、バンド・シーン以外からも注目を集めました。

今回はAbort Masticationの結成から現在までを中心に、アルバム「Dogmas」の製作に関してなどをお聞きしました。
まだ、Abort Masticationの音源を聴いた事がない方はこの機会に是非チェックしてみてください!


Abort Mastication
https://twitter.com/abort_m
2006年から2009年に活動した東京出身のデスメタル・グラインドコア。
フルアルバム1枚を発表し活動休止。短い活動期間だったにも関わらずTokyo Deathfest、ドイツのLudwigshafen Deathfestに出演するなど国際的にもライブ活動を行い、オリジナリティある楽曲とメンバーの存在感でアンダーグラウンドシーンでカルトな支持を得ていた。休止後、ボーカリストはエレクトログラインド、OZIGIRIを結成。ベーシストはBUTCHER ABCに、ドラマーはCOHOLに加入。ギターリストは爬虫類屋を開業と個々に活動。

2012年に突如、再活動し「本物の苦痛、恐怖を体現する音」を追及するため「Serial Death, Psychopath Grind」というコンセプトを元にセカンドアルバム 「Dogmas」を6年半の歳月をかけて制作。グラインドコアのエクストリームさ、デスメタルのもつブルタリティがABORT MASTICATIONによって新たに再構築され創り上げられた渾身のアルバムを発表した。


Q.
Abort Masticationが結成されたのはいつ頃ですか?どういった経緯でバンドは始まったのでしょうか?

結成は2005年末から2006年頭にかけてで、当時ドラムのKyosukeがデスメタル/グラインドコアバンドをやる為にメンバーに声をかけたところから始まりました。
基本的に皆エクストリームミュージックの枠ではこのバンドが初めてのバンド活動になります。

Q.
メンバーの皆さんの音楽的ルーツを教えてください。

〈kyosuke〉
90’s sデスメタル、00’sのRelapse系Hydrahead系のグラインドコア/カオティックのバンドなどが好きです。

〈ZUHO(Vo)〉
電気グルーヴ→SQUAREPUSHER→SLAYERというルートでバンドに行き着きました。

〈Takaa(Ba)〉
SLAYERとSLAYERとSLAYERです。

〈ometang(Gt)〉
ルーツは吹奏楽部。バンドで言えばMeshuggah。

Q.
Abort Masticationは結成当初から現在の様なデスメタル・グラインドコアだったのでしょうか?当初はデスメタルとグラインドコアの、どちらのジャンルの方が比重が大きかったですか?

〈kyosuke〉
比重について考えたことはないですね。今も変わらずその時に自分が一番カッコいいと思う曲を書くようにしています。

〈ZUHO〉
とにかく好きな要素を突っ込んでいってたら自然と今のバランスに落ち着いていきました。

Q.
結成当時はどういった場所でライブを行われていましたか?デスメタル/グラインドコア以外のシーンとも関わりはありましたか?

〈kyosuke〉
都内を中心に他バンドの企画やイベントなどに呼んでいただいてライブをしていました。
今と比べ、そこまでサブジャンルも細分化されておらず、活発なバンドが多く活気づいていました。当時、他シーンとのクロスオーバーは少なく感じました。

Q.
2006年にデモ音源「Teratogenic Fetal Fury」と、翌年にPatisserieとのスプリットCDを発表されていますが、当時Abort Masticationの楽曲制作はどの様にして行っていましたか?

〈kyosuke〉
当時から今にかけて大きく変わらない部分なのですが、曲は基本的に私(Kyosuke)とKazuho氏の二人で作っています。

〈ZUHO〉
少し補足しておくと、当時はまだ私のDAW環境が貧弱だったのでギター等はほぼ他メンバーに丸投げでした。適当にリードシンセとか入れてましたよ。
現在はDAW環境が当時に比べて充実した事もあり、全パート制作してます。出来上がったデモをKyosukeに投げて、人が演奏できる様に調節して貰っています。あ、当時とあんま変わってないなコレ(笑)

Q.
2008年に発表されたアルバム「Orgs」にはどの様なコンセプト/テーマがありましたか?アルバムを発表して活動に変化はありましたか?

〈kyosuke〉
結成から約2年で一気に走り抜き、その時出来る精一杯を形にしました。このアルバムからメンバーにも作曲してもらいアレンジをするという手法を取り完成させました。
バンド発足者は自分だったのですが、ワンマンバンドで有りたくはなかったので、発表後から明確にどんなサウンドを目指すか洗練させて行こうという方針になりました。

Q.
海外でのライブも経験されているとの事ですが、何処の国でライブを行われましたか?海外でのライブで印象に残った事は?

〈kyosuke〉
ドイツのデスメタルのフェスに出ました。当時地方などに呼ばれる機会も増えてきたので、その延長で爪痕を残す気持ちで挑みました。面白珍しがられてインパクト与えられたかな?と。
今でもFacebookなどで海外の方から「あの時のライブ見たよ!狂ってたね!」なんてメッセージいただきます。ボーカルがひっくり返ってのたうちまわったりギターが裸足だったり珍しかったんでしょうね。

〈ZUHO〉
ギリシャの方に「俺は日本の“ガバマル”ってアニメが好きなんだが知らないか?」と言われメンバー誰も答えられなかったのですが、帰国後に調べてみたら『伊賀野カバ丸』ってアニメでした。ギリシャだと人気らしいです。

Q.
Abort Mastication として活動開始された2006年から休止される2009年までの間、国内のデスメタル/グラインドコア・シーンはどういった状況でしたか?

〈kyosuke〉
とても活発だったと思います。デスメタルでは定期的な企画をするバンド/イベンターがいたり海外バンドを呼んでフェスをやったり。グラインドコアも企画は沢山ありました。
むしろ活動休止後に同じように活動を休止したバンドなどが増えていきシーンが沈静化をしたイメージがありました。私自身、音楽から遠ざかったせいもあるかもせれませんが…

Q.
2012年に再始動されますが、どういったキッカケで活動を再開されたのですか?

〈kyosuke〉
私は新しくバンドを作るつもりでしたが、それはやっぱりこのバンドを続けたい裏返しで。2012年頃にみんな気持ちが合致してる事が分かったので、足並み揃えて再開することにしました。
当時、Kazuho氏はお馴染みOZIGIRIの活動を軌道に乗せ、ベースのTakaaはButcher ABCに加入し、私はCOHOLというバンドで活動していました。

〈ZUHO〉
休止後もぼちぼち連絡をとってたわいもない話などはしていたのですが、皆それぞれ活動が安定してきた頃に「もう1回やってみてえよな」って話が徐々に出てきて、そんじゃいっちょやってみようか….と。

Q.
2ndアルバム「Dogmas」について。制作期間はどれ位掛かりましたか?今作はどういった形で楽曲制作が行われたのでしょうか?

〈kyosuke〉
実は作曲だけのプロセスでいうと再活動から発表までの半分くらいの時間だと思います。3年くらいかな。初めはアルバムを作る計画ではなかったのでスパンが分かれてます。
制作に関して、再活動し出してからは完全にKazuho氏と二人体制でプリプロ段階まで作りこんでます。最終的に私が手を加えることでこのバンドのサウンドになるという意見を貰って、明確に分担しています。

拘った部分…語れば語るほど長くなってしまいますね(笑)。正直、今バンドのコンセプト上、秘匿性を持って活動したいので余り手の内を語るべきでないと思います。
強いて挙げるなら「どんな細かい事、全てに意味があり、血の通っている作品」ですね。「Serial Death, Psychopath Grind.」が言いたいことの全てです。

〈ZUHO〉
皆それぞれの活動があるので、再始動してからずっと掛り切りという訳ではなかったですね。ただ、絶え間無くデモは作っていて、その過程で余計なモノを削ぎ落として行きました。
かなりボツ曲がありますよ。アルバムもう1枚作れるくらい。

ギター&ベースの音作りについて〈Takaa〉

ギター:
今回目指したのは、包丁…そう、白菜というよりキャベツを削ぎ落としていくようなキレのある、研ぎ澄まされた、三徳でも牛刀でもなく中華包丁の様な音。
なんで中華包丁かって?
刻む、潰す、削ぐ、何でもできる中華包丁、それが研ぎ澄まされたら最高にクールじゃないですか?

ベース:
デブと力士の違い、わかります?
筋肉量です。彼らはあれでも体脂肪率20%を下回ります。そんな中でも、勢いがあるのが幕内中堅力士。今回目指したのは幕内中堅力士の様な適度な締まりと太さのある音像です。

Q.
ZUHOさんはソロ・プロジェクトのOZIGIRIとしてもボーカルを担当されていますが、Abort MasticationとOZIGIRIではボーカルスタイルにおいて何か違いなどはありますか?
また、バンドでのライブとソロでのライブにおいて、どういった意識の違いがありますか?

〈ZUHO〉
楽曲内におけるボーカルスタイルに関してはそこまで差異はありません。唯一にして最大の違い….ズバリ、悪ふざけ要素のアリかナシかです!
Abort Masticationに関してはAbort Masticationの世界観というものがありますが故、ここは逸脱しないように意識しています。
逆にOZIGIRIは私の素なのでやりたい放題。ライブにおいても同様ですね。Abort Masticationのライブでは流石にコスプレしないです。

Q.
「Dogmas」の中で特にお気に入りや思い入れのある曲はありますか?

〈kyosuke〉
どれもこれもですが「Jed」が一番思い入れが強いです。唯一のミドルテンポの曲で速いフレーズも一瞬ですが、私の中では過去一番熾烈な曲です。

〈ZUHO〉
「Cold Ground」ですね。「Dogmas」収録曲最古にして、当アルバムの方向性を定めた最初の曲です。

Q.
Abort Masticationのブルータリティの源は何でしょうか?長く活動を続ける事によってブルータルなサウンドを作る事が難しくなったりなどはしませんか?

〈kyosuke〉
楽曲以外にテーマやコンセプトを作る上で一番根底にあるのは 暴力・性衝動・死生観だと思います。
それをどこまで「アート」に落とし込むかだと思っているので。最終的に「ブルータルでいるか否か」は問題ではなく、如何にこの4人でクリエイティブな事をしていけるかを大事に思っています。

Q.
今後の活動予定を教えてください。

12/22に開催される『浅草エクストリーム 52(@ Gold Sounds)』へ出演予定です。
引き続き今後もライブ活動は続けていき、次の作品の明確なイメージもあるのでコンスタントに続けていきます。