“GHz Interview21” Laxenanchaos

GHz Interview

Virgin Babylon Recordsからニューアルバム『Transform Ordinary Events Into Miracles』を発表したばかりのアノニマス・アーティスト「Laxenanchaos」のインタビューを公開!

ブレイクコア~IDM~フットワーク~テクノといったエレクトロニック・ダンスミュージックからポストロック~アンビエント~エクスペリメンタルといったジャンルまでもを巧みに取り込み深みのあるエモーショナルで妖艶な電子音楽を作り出し、様々なジャンルのリスナーから注目を集めていながらも未だに謎の多いアーティストであるLaxenanchaosが自身のルーツから楽曲製作、アノニマスという立ち居地に関してまでも話をしてくれており彼の本質が垣間見れる貴重なインタビューとなりました。

そしてなんと!!!インタビューと合わせてLaxenanchaosの過去作品・未発表音源を纏めた作品集『Ghost Habitable Zone』をMHz Bandcampにて公開!!!
美しい暴力性を感じさせるメロディアスなアンビエント+ブレイクコアを中心にした素晴らしい作品集となっています!
インタビューを読みながらこの作品集を聴けばLaxenanchaosの世界観を更に深く理解出来る内容です!

Laxenanchaos
https://soundcloud.com/laxenanchaos
https://twitter.com/laxenanchaos
2014年の活動開始以来、国内外のアンダーグラウンド・エレクトロニック・ダンスミュージックシーンの中で最も注目を集めるアーティストの一人。
2015年に1stアルバム『I’m Laxenanchaos』を発表し、同年にレーベル「anybody universe」を設立、Booty Tune、GORGE.IN、Deep Space Objectsとの4レーベルコンピや、スプリットなど、コラボ作品を複数リリース。
楽曲制作やアーティストとのコラボレーションに加え、Ragga Terror Front、Future Disorder、Tek-Obsessed-Audio-Recordings、Otherman Recordsaなどへの楽曲提供も行なう。
2017年にはUK最大級の音RAVE『Bangface Weekender 2017』に出演を果たす。同年、Deep Space Objectsからソロ・カセットテープをリリース。2018年Virgin Babylon Recordsより「Transform Ordinary Events Into Miracles」をリリース。世界を舞台に精力的に活動中。


Q.
Laxenanchaosの活動を開始した経緯を教えてください。何故アノニマスという形を取られたのでしょうか?

この名義での活動を始めたのは、その時期に様々な転機が訪れたからです。
ちなみにLaxenanchaosという名に意味はありません。
以前からAutechreの様な意味の無い造語の名前に憧れがあったので、いつかそういう言葉を使いたいと思ってました。
マスクを被って匿名で活動を始めたのは、余分な情報を削いで、より音楽を純粋に発信したい思ったからです。

Q.
どんな音楽/芸術作品に影響を受けていらっしゃいますか?

音楽で言うとゲームミュージックの影響が強いです。
特に、植松伸夫さんのFinalFantasy4「BossBattle」やFinalFantasy6「Tina」は不屈の名曲だと思っています。
後、J-POP/ROCKのプロデューサー、小林武史さんの編曲にも強く影響を受けていて、音楽を始めたのもMr.Childrenがきっかけでした。
音楽以外だと手塚治虫さん、宮崎駿さん、今敏さんを筆頭に、アニメ・漫画文化の影響も大きいです。
また、ファッションに費やした時間も長く、特にミクスチャーな表現を好みます。
例えば、高橋盾さんのUNDERCOVERのコンセプト「We make noise not clothes」に強く共感しますし、中でもBut BeautifulⅡが好きで、アート作家Jan Švankmajerへのオマージュが込められたりと、服と縁遠い独自の切り口に唯一無二の魅力を感じます。
その他Walter Van Beirendonck、Patrik Söderstamといったデザイナーが好きです。

傾向で言うと、極端なもの、前衛的・独創的なものに惹かれやすいのですが、古典的なもの、あるいは大衆的なものにも影響を受けています。
年々、物事の普遍性に焦点を当てることが多くなったことが理由だと思います。

Q.
Laxenanchaosとしての最初のリリースは?ライブ活動はいつ頃から始められていますか?

最初のリリースはベルギーのRagga Terror FrontからリリースされたYabaiKore!に収録の「I Agonize Myself」という楽曲です。
現在はほぼハードウェアのみで製作していますが、この楽曲は全てソフトウェアで製作しました。
リズムパート以外は生演奏を意識して作っていた楽曲なので、いつかバンドアレンジで再現できたらなと思ってます。こちらはVirgin Babylon RecordsからFree EPとしてリリースさせて頂いた「MEMORIES」にも収録されています。

ライブ活動を開始したのは2014年7月頃で、初リリースとなったRagga Terror Front主催のWanBushiとの出会いと重なっています。
結構急な形で出演したのですが、RTFでのリリースに繋がったのもこの出会いがあったからですし、そういった縁の積み重ねで今があることに感謝しています。

Q.
Laxenanchaosの音楽にはブレイクコアの要素が重要な役割を果たしているかと思いますが、ご自身をブレイクコア・アーティストだと思いますか?

ブレイクコアは非常に重要な要素であり影響も感じますが、それほど強くは思いません。
ノンビートのアンビエントだったり、スロウでチルなビート物だったり、フットワークだったり、これからも色々なスタイルで表現すると思います。
ただ、ブレイクコアではないと断言もしないですし、できないです。そもそもブレイクコアに対して、何でもありなところに面白さを感じているからです。

Q.
楽曲製作のプロセスを教えてください。現在メインで使用されている機材は?

好んで行う方法としては、ピアノやパッド系の音でメロディから作るのが好みです。
上手に弾きたいというより、感情表現をしたいと思っている為、 ミスだとかはあまり気にしません。
いびつさも含め、感情そのもの・表現そのものだと思うからです。
また、ビートも含め、ほとんどの楽曲に即興で生み出されたパートが存在します。

現在のメイン機材はRolandのMC-909で、主にシーケンサー・エフェクター付のサンプラーとして使っていて、
MIDIでアナログ機材など他の機器を連動させています。後はKORGのMS-2000を、音源としてもMIDIキーボードとしても良く使います。それ以外だとフィールドレコーディングも多用します。
サンプリングに関しては基本的に殆どがワンショット素材です。また、ソフトウェア関連は録音スタジオ的に使用しており、仕上げとしてのみ用いる事が殆どです。DAWはCubaseです。

Q.
アナログ機材をメインに使用されていますがアナログに対して何か拘りがあるのでしょうか?

僕は元々ギターから楽器を始めたんですが、その延長でサンプラーを操作していて、
次第に電子楽器に傾倒しったという経緯があり、単純に慣れているのと、楽器を扱っている感覚が欲しいからです。
PCに楽器の役割をさせているのではなくて、音楽の為だけの「専用機」と言うところにグッと来ます。
その為、物としての愛着も感じます。セッティングを機器の組み合わせでカスタムしていくような、男心をくすぐる気もします。
また、ハードウェアは各々個性が強く、異なる機器のレイヤーが音にウネリ(GROOVE)を生むと感じています。
全容を一目で把握できない点は不便だなと思うことはあります。段階的に曲の展開を作るとき特にそれを感じますね。ただ、DAWが嫌いだって事は無いです。
アナログ機材は時間的な変化で例えミニマルなループでも必ず微細な変化が加わるので自分の作風ではとても重要ですが、ソフトウェアも曲作りに欠かせませんし、無いよりも絶対あったほうがいいと思っています。

Q.
ニューアルバム「Transform Ordinary Events Into Miracles」のリリース元であるVirgin Babylon Recordsとはどういったキッカケで出会ったのでしょうか?

僕自身は、リリースするならどのレーベルが自分の表現にマッチングするだろうかと模索していた際に知りました。
主催のworld’s end girlfriendさん側に知られたのは、ばいを般若さんのBioAwards2015で取り上げて頂いていたのを通じて、と伺っています。それ以降、東京のCircusというクラブでライブする機会があり、直接お会いしました。

Q.
「Transform Ordinary Events Into Miracles」の制作期間は?アルバムのコンセプト/テーマなどはあるのでしょうか?
アノニマスという形式においてご自身の作家性やパーソナルな部分はどれ位反映されていますか?

リリースの話を頂いてからのスパンで言うと約一年位で、楽曲自体は数年間の集大成的な内容になっています。
コンセプトやテーマについてはタイトル通りです。日本語訳で「普通の出来事を奇跡に変える」という意味です。
音楽も人生も、自分の中で「感受性」ということがキーワードになっていて。
毎日太陽が昇って沈んでいくことも、ご飯にありつけることも、好きな人と過ごせることも、健康なことも、
ごく普通で当たり前のようでいて、突然全てが無くなるかもしれません。
実際にそれが当たり前じゃない人も、当たり前じゃないと経験した人もいると思います。
自分を取り巻く全てが奇跡と感じて生きていきたいと思っていて、音楽製作に対してもそういう気持ちで接しています。
音楽に作家性やパーソナルな部分は大いに反映されていますが、作風をある程度絞っているので7~8割くらいだと思います。

Q.
アルバムの中で最も思い入れのある曲は?

Harlequinです。
普段は情景やプライベートな出来事が作品に反映されることが多いのですが、この曲に関しては、その時に読んでいた鈴木央さんの「七つの大罪」という漫画作品からインスピレーションを得ました。
曲タイトルは作品の登場人物名で、愛する人を守ろうとする勇猛果敢な姿に熱くなりました。作品自体は王道な冒険物の少年漫画で、その潔さが刺さりました。
ああだこうだ思い悩んでいても、人が突き動かされるのはシンプルでパワフルなものなのかもしれないなと感じました。

Q.
2014年の活動開始から4年が経過されましたが今後もLaxenanchaosはアノニマスという形で活動されるのでしょうか?アノニマスにおいてプラスの面とマイナスな面はありますか?

正体を明かすほうが面白いと自分で思えることが無い限り、同じスタンスで続ける構想です。
それ以前に「俺が本物のラクセナンだ」というような人が出てきたら、もっと面白いですね。

Q.
Laxenanchaosとしては之までに数多くの作品を発表していてリリースペースも速い方だと思うのですが、リリースペースは意識されていますか?

特に意識していないです。ただ、曲を作ることは日常的に考えています。
急がずにのびのび作っていますが、大体何をしていても音楽としてどう昇華するかを考えます。
何かまとまったアルバムや構想が先にある訳じゃなく、単にその時の意識が反映されていることが多いので
今後、コンセプチュアルな製作にも挑戦してみたいです。

Q.
これからの活動において表現してみたい事や挑戦してみたい事はありますか?

作家性的な方向で言うと、少年性を孕んでいながらも達観しているような作品を追及したいと思っています。
また、シカゴフットワークのダンサーに踊ってもらえるようなトラックは是非作りたいです。
後は生楽器・生演奏だとか・・・節操が無い感じですが本当に何でも興味あります。映画音楽やゲーム音楽等も大きく影響を受けているので、いつか表現してみたい分野です。
それと、コラボやセッションには常に興味があって、レーベルを始めたきっかけの一つでもあります。
最近だとNorfikというアーティストのObliterateと言う曲に共感を覚えました。
XLR8Rでもアンビエント×ジャングルと称され、自分と通ずるような紹介のされ方をしていて、注目しています。
身近なアーティストだと、MetomeさんやKafukaさんとはいつか何かやりたいなと考えています。

Q.
現在注目しているアーティストはいらっしゃいますか?
また、現在までに数多くのアーティスト/DJ達と共演されていますが、最もライブが印象深かったアーティストは?

注目しているアーティストは鬼畜生さんです。
感情表現の精度が非常に高いと思っていて、特に緻密なビートが特徴的なのですが、
単なるリズム隊で終わるのではなく、全てのレイヤーの音が渾然一体となり、多大なエモーションを感じさせられます。これからも注目していきたいアーティストです。

共演した中で最も印象深かったLIVEに関しては、Bangface2017で見たClarkのLiveに神々しいほどの印象を受けました。
特にPeak Magneticの後半のシンセベースのパートは、シューゲイザーの様な美しい轟音の洪水が押し寄せ、
自身が解放されることに抗えない気持ちでした。

日本国内のアーティストで言うと、RP BOO来日公演の際に共演したオオルタイチさんです。
オリジナリティとクオリティが高い次元で両立されていて、胸を打たれました。
FUTURELINAやBeshabyなど、大好きな楽曲も生で聴けてとても感動しました。
日本のアーティストを語る上で外せない方だと思っています。

Q.
自身の音楽に対する世間の評価は創作意欲にどういった影響を与えますか?

人に評価されるのは嬉しいですし否定されたら悲しいですが、どんなリアクションも無駄ならず、燃料になります。
併せて、自分の表現は伝わるのか、通用するのか、ということも考えますが、どういう感情になっても最終的には自分と向き合うところに帰ってきます。

Q.
今後の予定を教えてください。

この記事が掲載される頃には既に発売されていますが、「Transform Ordinary Events Into Miracles」リリースの少し前、5/29にCock Rock DiscoからCaramel Brain Ideasとのスプリットアルバム「Bipolar Order」をリリースしました。
RAVEな雰囲気のフットワークジャングルが中心になっています。

LIVEの予定としては、6/22に大阪TRIANGLEでSUNCAQというイベントの2周年に出演します。
僕のレーベルのextremeOBSNや福岡の健康胎児さん、
UKのBalter Festival 2018帰り直後となるBiohannyaさん、Numb’n’dubさん、Savage Statesさん、浦飯幽子さん達も出演するのでかなり盛り上がると思います。
「Transform Ordinary Events Into Miracles」 のジャケットを担当して頂いたmiezeさんもライブペインティングで参加します。

6月末からは1ヶ月以上ベルリンを中心にドイツに滞在する予定で、7/4-7/9はベルリン近郊で開催するFreqs of Nature Festival 2018に出演します。
滞在中の予定はまだ未定ですが、帰国後は東京で9月上旬にレコ発ライブを予定しています。
いずれかの予定が合いそうなら是非遊びに来てください。

訳:ばいを般若