“GHz Interview20” Dustvoxx

GHz Interview

今回のGHz interviewは実験的かつユニークでダンサンブルな楽曲のリリースで現在の日本のハードコア・シーンの中で人気実力共に若手トップクラスを誇るDustvoxxさんが登場!
細部まで作りこまれたメカニカルなサウンドと圧倒の重低音を武器にフレンチコア~スピードコア~ハードテックを中心に様々なジャンルの要素を取り込んだ新たなハードコア・スタイルの楽曲をPsycho Filth Records、FREAKIN WORKS、CYCLIK CONTROLから発表されています。

このインタビューではDustvoxxさんの音楽的ルーツから名盤1stアルバム「Reprogram The Mind -The Cybercore Experience-」の誕生秘話、そして楽曲製作のプロセスなど興味深いお話を沢山お聞きしました!

そして!インタビューと合わせて特別にDustvoxxさんによるエクスクルーシブMIXもご提供していただきました!
是非MIXを聴きながらインタビューのご必読を!

MIX TRACKLIST
01. The Speed Freak – Planet XTC
02. Maissouille – Darkness
03. Autopsy – Faith In Chaos
04. Hellfish – U Don’t Quit
05. Deathmachine – Tekstep Nightmares
06. Maissouille – Skyzophrenie
07. Hellfish – Toilet Wars
08. Radium – Renegade Returns
09. The Speed Freak – Make Em Die Slowly
10. The Speed Freak – Dj Re-fuck 2006
11. Liquid Blasted – Antihuman Army
12. Psiko – Crank Stuff
13. Pattern J – Human Enhancer
14. Dustboxxxx – Mental Spectrum Hacker
15. The Speed Freak – Make Em Die Slowly (Dustvoxx Remix)
16. Dustboxxxx – Overrun The Signal
17. Pattern J – Twisted My Grandma


Dustvoxx
https://soundcloud.com/dustvoxx
https://www.cyclik.jp/

Q.
Dustvoxxさんが音楽に興味を持ったキッカケを教えてください

小学5年生の時からドラムをやっていて、XJAPANのYOSHIKIに憧れておりました。中学受験のせいか、皆が聞いているようなJ-popを聴いてこなかったと思います。中学に上がって、バンドも始めたのですがそこまでポップミュージックを聞いてこなかった身としては「なんでみんなが聞いているどの曲もギター、ベース、ドラム、ヴォーカルがあるの?」みたいな疑問が改めて沸いていました。部活の先輩の東方が大好きな方に勧められた、ARMさんの「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」に衝撃を受けました。直接的に音楽を作ろうと思ったきっかけもこの曲です。「音楽は自由でいい」という理性を感覚で理解したというか、これでバチっと音楽に心が埋まりました。

Q.
始めて聴かれたHardcoreの作品は?Hardcoreのどういった所に興味を持たれましたか?

おそらく最初に聴いたのがm1dy – Speedcore dandy
https://www.youtube.com/watch?v=ukhd9OBnOZI)です。
その後ニコ動にあったRevengeさんによる「ちょっとこいシリーズ(http://www.nicovideo.jp/watch/sm10728503)」で海外のハッピーハードコア、ガバ、フレンチコア、スピードコアのミックスに出会い、iPodに落として通学中ひたすら聴いていました。暗くて攻撃的な音楽を無意識に求めている状況で、SlipknotやATRを知る前にハードコアテクノにいった形だと思います。特にフレンチコアのBPM200以上の浮遊感に虜になりました。ハードコアの、何か特定の感情を想起させるというよりは、曲の中から新たな世界観を突き付けてくるところが好きですね。サンプリングを多用するジャンルですが、当時はサンプリングという概念すら知らないのですべてスタジオで録音していると思い込んでいて、こういう曲を作るアーティストは全員天才なんだなと思っていました。

Q.
Dustvoxxさんが最も影響を受けた作品を5つ教えてください。

・The Speed Freak – Freakwaves (2006)
・Aphex Twin – Selected Ambient Works Volume II
(1994)
・Alryk – Nightmare (2015)
・DJ Sharpnel – 危ないベースライン (2011)
・音MAD動画全般

Q.
楽曲製作はいつ頃から始められましたか?

始めたのは2010年頃で、中学2年くらいです。中学受験の時の家庭教師の方がバンドをやっていてCubase LEをもらったのが楽曲制作の始まりでした。初めはSpeedcoreを作ってみたいのでサンプリングをひたすら連打して張り付けるだけで、学校にスピーカー持ち込んでフレンチコアをかけるついでに友人に聞かせたりしていました。かなり迷惑だったと思います。

Q.
「Dustboxxxx」名義での活動を始めたのはいつからですか?当初からHardcoreのプロジェクトとして開始されたのでしょうか?Dustboxxxxの名前の由来は?

自分でもよく覚えてないのですが、XJAPANがすきだったので最後にXがつく単語にしようと思って適当につけた感じですね。Dustboxだけだとオリジナリティに欠けると思いxを安直に増やした形です。LOLISTYLE GABBERSというアニメティックなハードコアユニットを2011年春に作って、そこで春M3にてリリースするためにこの名義を使ったのが始まりだと思います。

Q.
2014年にFreakin Worksからアルバム「Reprogram The Mind -The Cybercore Experience-」をリリースされましたが、このアルバムの製作期間は?
どういったコンセプトの元にこのアルバムは作られたのでしょうか?

Psycho Filth RecordsのDJ Myosukeさんから「アルバム出してみない?」という話をいただいたのでやってみようと。
小学生の時から海外SF映画が大好きで、マトリックスやブレードランナーのような荒廃したサイバーパンクな世界観に影響されていましたが、2013年にちょうど弐瓶勉さんの「BLAME!」という作品に出会い、探し求めていた世界観がここにあったということでサイバーパンクをベースにこの世界観の再構築、という意味でタイトルにReprogramと入れました。(Reject Netsphereという曲は同作品に登場するネットスフィアが元ネタです。)
また、前年の2013年にPattern J – Twisted Galaxyというコズミックホラー×フレンチコアなアルバムが出て、ちょうど構想中だったので「やられた!」と思い、ならよりサイバーパンクにシフトしたフレンチコアのアルバムにしようと思いました。
制作中何度もBLAME!を読み返したり、The Third movementやDeathchant, Audiogenicなどの音楽を聴きつつ、SF映画を観て、というスタイルで、話をいただいて4か月くらいで全トラックを制作しました。
機材としてはメインのDAWにCubase、あとはほぼReaktorでの音作りとサンプリングをメインにトラックを構築しました。

Q.
Reprogram The Mind -The Cybercore Experience-でお気に入りの曲は?

Mental Spectrum Hackerは電子音や声ネタカットアップ、怪しいメロディと執拗なフィル、複雑な展開で一番Speed Freakっぽい楽曲なのではと思っているので気に入っています。
Overrun The Signalもキックドラムと裏泊ベースで押し切るような勢いと、Pattern J – Twisted Grandmaに近いカオティックなダイナミクスでフロアでもかけやすい曲になったと思っています。

Q.
Reprogram The Mind -The Cybercore Experience-ではハードコア/フレンチコアにIDM的なグリッチなどの要素が加えられていますが、それらの実験的な電子音楽の影響はどの様にハードコアなどのダンスミュージックに影響を与えていましたか?

元々Planet MuからリリースされているHellfish & Producer – Bastard Sonz Of Rave LPに、Aphex TwinやSquarepusherの影響が色濃く出ていることを知り、そこでコーンウォールを筆頭とするいわゆるIDMシーンを知り、WarpからRichard Devine, XanopticonなどのアーティストからVenetian Snaresを知り・・・という形でブレイクコア方面を知り・・・という形で徐々にIDM/ブレイクコア方面の影響を受けるようになりました。
当時フレンチコアの最大手レーベル(現在はPeacock Recordsと思いますが)であるAudiogenicそのものが2003年頃のIDM全盛期に影響を受けていることがやっとわかり、そこでつながった形でした。
同時にノイズシーンにもかなり影響を受けたので、The Cancelled worldではハーシュノイズっぽい音を使ったりしています。
Xanopticonを追って行って見つけたAtomheadがやっているentity.beというアングラIDMネットレーベルを見つけて、The Outside Agencyらハードコアテクノ周りとの関わりも見つけ、似たような音を再現しようと思ったのもきっかけです。

Q.
ハードコア~フレンチコア~ハードテック/パンプコアといったジャンルの楽曲を作られていますが、楽曲を作る時は最初にジャンルを決めてから曲作りを開始されるのでしょうか?
また、1曲作るのに掛かる平均時間はどれ位ですか?

僕の場合主にドラム隊から制作するので、フレンチコアを作ると決めたらBPMを設定してもうジャンルを変えることは少ないですね。
6時間でできるときもあれば2週間以上かかる時もあるので一概には言えませんが、平均3日くらいだと思います。ただし経験上いろいろなアイデアを捨てて締め切りギリギリに新たに作り始めた時にいい曲ができることが多いです。

Q.
ダンスミュージックを作る時はどれ位ご自身のパーソナルな部分は反映されているのでしょうか?曲を作る時にリスナーやフロアの事はどれ位意識されていますか?

パーソナルなものというよりは映画や漫画、小説や絵画など他の創作物に影響されることが多いです。先ずは衝撃を受けた他人の曲が何かあって、それをベースにマネしつつ、それに創作物単体または何かしらのムーヴメントを取り入れて作っていくうちに方向性が見えてくるので、あとはダンスミュージックというところに脳内を切り替えて仕上げていく感じです。オリジナリティに関してはいくらマネしようがどうしようもなくにじみ出るものだと思っているので、そこまで意識していません。
特にダダとシュールレアリスムの文化はサンプリングの不自然さに通ずるものがあってインスピレーションを得る源になっています。
また、前述したことは曲をストーリーとしてとらえる際には機能するのですが、ダンスミュージックとなるとツナギの部分や、フルでかけることは少ないので何処を一番聞かせたいのか、というある種ルール的な部分を意識的に取り入れています。
自分の曲が実際にフロアでかかった時のことは非常に意識しています。低域が最もフロア鳴りを左右するので気を使っています。

Q.
現在使用している機材を教えてください。
Dustvoxxさんのキック/ベースはとても特徴的ですがキック/ベースの製作において大事にされている事はありますか?

DAW:Cubase9.5 / Ableton Live 10
Plugin:Waves, PluginAlliance, iZotope, AOM社のプラグインをよく使います。
Headphone:Beyerdynamic DT990 PRO
Speaker:YAMAHA HS-05

キックとベースのつながりを大事にすることを一番意識しています。音量バランスはもちろん、まとめてグルーピングしてコンプやディストーションをかけています。
ベースは最低3レイヤーで作っています。100Hz以上をカットしたサブベースをオフビートで入れて、カラーとなるベースは100~250Hzあたりで出して、キックとベースを一体的に見せるために中高域をメインで出すベースをサイドチェインで一拍分まるまる置いています。
パーティーに行くようになって、出演も増えてからは特に低域のふくよかさとシンプルさを重視するようになりました。低域は主に80Hz以下はbx_digitalでモノラルにしています。100~200Hzあたりのキャラクターでキックのカラーが決まるのであまり深く削ることはないです。キーによって50~60Hzが最も出るようにしています。

Q.
ダンスミュージック(ダンスフロア)を意識しない実験的な電子音楽の製作には興味はありますか?
ダンスミュージックのフォーマットに合わせて楽曲を作る事にストレスを感じることはありますか?

これ実はかなりあります(笑)Aphex Twin, Squarepusher周りのコーンウォールなIDMが活発な時期へのあこがれが強いので、実は別名義でこっそり出したりもしているのですが、明確に出してみたい気持ちは強いです。特に、ダンスミュージック内の一部のツールとしてではなく空間的な広がりそのものを体験として聴かせることに興味があります。ダンスミュージックだと究極的にはグルーヴとダイナミクスの移り変わりでの盛り上がりが根本にあるので、ダンスフォーマットである以上そこの逸脱は許されないのかなと思っております。DJでもありますが基本的には表現全般をしたいので、枠を超えていろいろやってみたいです。

Q.
ご自身の作られる楽曲において最も自信のある所は何ですか?

ざっくり、サウンドデザインと低域ですね。低域に関してはやはりフロア鳴りを重視しているので、海外の強い曲にはまだまだ敵わないですがそれなりにミックスできてきているかなと思います。音そのものが好きなので、未知っぽい音を如何に作るかに注力しています。

Q.
Dustvoxxさんが今まででおこなってきた中で最も忘れられないDJ/ライブ体験とは?

昨年4/23に表参道WALL&WALLにて開催したUPSHFTですね。メインフロアでもSHARPNELさんのラストライブ、Far Too Loud, Mat Weasel, Alrykとすさまじく多ジャンルのスペシャリストがパフォーマンスで圧倒したパーティでした。
ラウンジフロアでも、表参道交差点の目の前入ってすぐのところだったのですが、Loctekのライブで非常な熱狂となり通行人が振り返っていたのが最高でした。

Q.
Dustvoxxさんの作品はCDとデジタル・フォーマットで販売されていますが、ストリーミング・サービスに関してはどうお考えでしょうか?

ストリーミングも全然アリだと思いますし、積極的に適応していきたいです。現状、Spotifyでも配信しております。ただ、日本で出す以上はCDというフォーマットを全く捨てることはないのかなと思います。

Q.
現在注目している国内/海外のアーティストは?

当然沢山おりますが、要注目という意味では
The Speed Freak先生は7年前から注目し続けています。最近だとGabberdiscoという新しいフォーマットでのハードテック・フレンチコアベースの高速ダンスミュージックをリリースしています。

国内だとLaur(https://soundcloud.com/laur_10)です。2015年にアップしていたフレンチコア(https://soundcloud.com/laur_10/laur-error-codes-0x0000008e-frenchcore)のクオリティが群を抜いて良く、現役音大生で理論に精通しながらもサンプリングミュージックやクラブミュージック全般を主戦場とする希少なアーティストだと思います。

Q.
Dustvoxxさんはデビューから現在までアグレッシブで高速なダンスミュージックを作り続けられていますが、そういった要素のあるダンスミュージックを作り続けるのは何故ですか?

暗くて激しい音楽が好きというのがやはり根本にあると思います。アグレッシブさというのは、アーティストがリスナーに対してある種突き放しつつ突きつける挑戦状ですし、高速というだけでアーティストのバイブスが伝わってきやすいです。それは明るい曲でも伝わってきますし明るい曲も大好きですが、僕は暗く激しい中に存在するバイブスの方が複雑な感情(無機質な非感情としての表現を含む)を表現できると思っていて、制作しているとそういう方向になりがちです。DJ的な側面でいうとギリギリ踊れるBPMであるフレンチコアやハードテックはグルーヴの移り変わりに陶酔するテクノ的な楽しみ方と緩急をつけたフェス的な盛り上がりが同時に可能なジャンルというのが大きいです。あと単純にフィル(おかず)が好きなので、高BPMだと短時間で多くのフィルが聴ける楽しさもあります。

Q.
これからの音楽活動において挑戦してみたい事や表現したい事はありますか?

速い曲よりもグルーヴのバリエーションが増えていくので、低BPMでの楽曲制作にも注力していきたいです。今はBassline House/Garageのムーヴメントや、またTchamiの運営するレーベルConfessionの楽曲がEDMのフォーマットにIDMっぽい音を取り入れたりと実験的で面白くハマっています。
(https://soundcloud.com/confession/habstrakt-jace-mek-i-wanna) フロアで如何にきれいに音を鳴らすにはどうしたらいいかというところを研究しているので、低BPMだとそれが実現しやすいというのもあります。あともっと多くのアーティストとコラボ楽曲を作っていきたいですね。

Q.
先日リリースされた3rdアルバム「HAUNT」はどういった内容のアルバムとなっていますか?

前作「SUPERNATURAL」よりベース系なハードテック多めの、いわゆるPumpcoreが多めです。ハッピーにしようとしつつスピリチュアリティーな部分がにじみ出ていて面白くなったかなと思っています。
フランスのPumpcoreアーティストAlrykとの合作や、大手ハードテックレーベルAstrofonik主催のNeurokontrolのリミックスもあったりとグローバルな感じになってます。
https://www.cyclik.jp/cycl0002
また、サンプルパックの2もリリース致しました。以前リリースした1よりハードテックにシフトした形で、即戦力的なフィルやハット類を磨き上げて収録しております。またソフトシンセSerumやSpireのパッチなども入る予定です。
http://store.cyclik.jp


Q.
今後のスケジュールを教えてください

直近ですと
5/20に仙台で開催されるNOISE FLOODINGに出演します。
http://twvt.me/NOISE_FLOODING2
5/26にHARDCORE TANO*C 東京Tourにメインフロアにて出演します。
http://tano-c.net/tour2018/
最新情報はTwitter (@dustvoxx)をチェックいただければと思います。