“GHz Interview19” deathcount

GHz Interview

2013年にMurder Channelからリリースした1stアルバム「Worldly desires」で日本の地下音楽シーンを中心に海外でも注目を集めた東京のマシーン・グラインドコアバンド「deathcount」のインタビューを公開!

deathcountは2001年の結成以来、グラインドコア~ハードコア~デスメタル等、様々なエクストリームミュージックを独自の視点で融合させた激ブルータルな演奏とガテラル、グロウル、ハイトーンシャウトを巧みに操るツインボーカル、そしてドラムマシンによる無機質なブラストビートを最大限に活かしたオリジナリティ溢れる楽曲でバンド・シーンからノイズやブレイクコアといったジャンルのリスナーも魅了しています。
1stアルバム「Worldly desires」はオリジナル・アルバムとリミックス・アルバムの2部構成になっていてリミックス・アルバムではXanopticon、DJ Skull Vomit、OZIGIRI、SA†AN、Stazma The Junglechrist、Dead Fader、Miiiといったブレイクコア系アーティスト達によるハイレベルなリミックスも話題となりました。

今回のインタビューではdeathcountの結成の経緯から1stアルバムのリリースまでを振り返った彼等の歴史を総括する貴重な内容となりました!
まだ、deathcountの音源を聴いた事が無い方はこの機会に是非チェックしてみてください!



※このインタビューは非常にエモい内容になっておりますので
The GET UP KIDSのFour Minute Mileを流しながら読むことをオススメします。

Q.
皆さんの音楽に関するルーツを教えてください。
どういったバンド/アーティストの作品に影響を受けていますか?

〈murata(vo)〉
中学でメロコア、高校生で日本のハードコアやモダンヘヴィネスを聴き始めてだんだんグラインドコアやデスメタルみたいな激しくて重い音楽にのめり込んでいきました。バンドやってるうちに周りにいろんなエクストリームミュージックに詳しい人が増えてきて、その人たちの影響でブレイクコアやノイズミュージック等にも興味を持つようになりました。

〈takeda(vo)〉
高校の時にメロコア、ニュースクール周辺を聞いていて、deathcountメンバーと会ってからファスト、グラインド、ジャパコア等を聞くことが多くなった感じです。

〈kenji(Ba)〉
バンドというものにのめり込んだきっかけとしてはは中学生の頃に聞いていたLUNA SEAやX JAPANの影響がまずは大きいですね。
僕もその後ミクスチャーやハードコア、スラッシュメタル等を経て、グラインドコアやデスメタルが好きになりました。「とにかく早い」とか「過激」「複雑」というような振り切ったアティチュードが好きでグラインドコアやカオティックハードコアをよく聞き漁っていましたし、極端なことやマニアックなポイントを、自己満足ではなくハイレベルに音楽としてカッコよく追求しているアーティストに特に影響を受けていると思います。
Discordance Axis, Assuck, Brutal Truth, Genghis Tron, Converge, Dillinger Escape Plan, Swarrrm, Mortalizedなど。国内外含め数え上げるとキリがないですが、特にこの辺は影響を強く受けています。ちょっと変わっているとは思いますが、そこからGuilty ConnectorやMerzbowなどのノイズミュージックを入り口にして、電子音楽に興味を持ち、BreakCoreなどにハマっていきました。

〈yao(Gt)〉
14歳まで知らないおじさんに監禁されていたのでニッポン放送の高田文夫のラジオビバリー昼ズしか聞いたことがありませんでした。今はJ-WAVE一択です。

〈sanchi(Gt)〉
………………こ…………す………。

Q.
はい?

〈sanchi(Gt)〉
こ…………ろ…………

す………。

〈murata(vo)〉
さんち!! やめておけ!!

Q.
グラインドコアとの出会いを教えてください。グラインドコアのどういった所に魅力を感じましたか?

パッと思いつくのは高校2年のときに友達に貸してもらったpig destoryerのProwler in the Yardというアルバムです。ジャケと1曲目のSEが恐くて震えました。アルバム1枚でこれだけ嫌な雰囲気を放つ音楽に触れたのは初めてだったのが衝撃でした。でもちゃんと聴いてみたら楽曲はめちゃくちゃカッコよかったんですよね。あとはメキシコdisgorgeのForensickかな。ジャケも音も最低で、こんなの作ってる人がいるんだって思うと意味わかんないけどなんかすごい世界だなって思いました。今考えると得体の知れない感じに惹かれたんだと思います。

Q.
deathcountの結成の流れを教えてください。

元々は高校の終わりぐらいにギターのYAO、ベースのKEN3とBEYOND THE NEGLECTっていう名前でモダンヘヴィネスみたいなバンドをやろうとしてたのがはじまりです。そのバンドはちゃんと活動しなかったんですけど、その後YAOとKEN3が所属していた早稲田大学という非常に偏差値の高い大学のサークルのイベントで演奏することになって、それがきっかけでdeathcountとして活動することになりました。僕が相撲取り専用のビンビールを製造する工場で働いているときに同僚だったtakeda(vo)とKEN3がコロンビアのラ・モデロ刑務所にいた時に同じ雑居房だったsanchi (Gt)を誘って5人になりました。

Q.
deathcountの名前の由来は?

高円寺で遊んでいたときたまたま見つけたディスカウントストアの西川ってお店の看板に「デスカウント西川」って書いてあったんです。deathcountってなんか死の宣告っぽくてカッコよくない?って盛り上がってそのままバンド名にしました。deathcountってなんか死の宣告っぽくてカッコよくないですか?
もう一案としてFear, and Loathing in Las Vegasていうのがあったんですけど、今はそっちにすればよかったと思ってます。


Q.

結成当初からドラム・マシーンを用いたマシーン・グラインドのバンドとして活動していたのですか?
活動初期はどういった場所でライブをされていましたか?当時、ドラム・マシーンを使ったライブは回りからどんな反応がありましたか?

結成当時からマシンドラムです。なぜならドラムをやってくれる人がいなかったからです。そしてどうせドラムマシンでやるなら速い音楽やろうぜっていうことでグラインドコアをやることになりました。編成先行型なんです。

本当に最初のころは高円寺ritz(現在閉店)とか新宿urga(現在閉店)、高円寺GEAR(現在閉店)の平日のブッキングイベントに出てました。今考えるとノルマとかクソ高いし意味わかんない仕組みですね。変なヴィジュアル系バンドとかと対バンしてました。こういうブッキング企画やってたハコは軒並み潰れてしまいましたね。

その後だんだん近しいジャンルで友達が増えて来て、初台WALLや小岩eM7、西荻wattsでよくやるようになりました。em7もwattsもいいハコだったけどなくなっちゃってさみしいです。WALLはたまに企画もやらせてもらってるし店長がいい奴なのでずっと残ってほしいハコです。今考えると僕ら(全員1983年生まれ)が20歳~23歳ぐらいのころってグラインドコアやファストコア、ニュースクール、エモ等の同年代のエクストリームミュージックが盛んだった時期なのかも知れないですね。声かけてくれる友達はたくさんいました。今でも当時と同じテンションでガツガツやってる同年代の仲間は各ジャンルにいるので本当に尊敬しています。

ドラムマシーンについての反応はだいたいの人はなんか速くていいねって感じだけど、たまに冷ややかな人もいました。urgaでリハやってて変なモダンヘヴィネスのバンドの人に「素人の打ち込みじゃん」とか言われたのはよく覚えてます。その日の夜は悔しくて泣きながら手打ちうどんを仕込みました。ちなみに出汁は香川では定番のいりこで取りました。色は薄いんですが塩分は意外と多いので見た目とは裏腹に味が濃いんです。

Q.
日本/海外のマシーン・グラインドで影響を受けた、もしくはシンパシーを感じているバンドはいますか?

最初の方はドラム打ち込み繋がりでagoraphobic nosebleedを引き合いに出されてましたがそんなに好きではないです。皮肉を込めてagoraphobic nosebleed is gayっていうTシャツを作ろうとしたんですがベースのken3に反対されて断念したのをよく覚えています。
個人的に影響を受けたのはマシングラインドではないですがdiscordance axisのボーカルのジョンチャンですね。彼のパフォーマンスは本当にカッコいいと思います。声もセンスも全部好きですね。シンパシーは金沢のedible autopsyと岐阜のnervenotfound(現在活動停止中)に対して勝手に感じていました。日本のドラム打ち込みグラインドってあんまりいないですからね。編成は全然違うけどOZIGIRIくんも大好きです。彼はセンスが最高です。

Q.
曲作りはどういった形で進められていますか?

ベースのkenjiとギターのyaoがドラムパターンを仕込んで来て
リフやボーカルラインをスタジオで考えるというパターンが多いです。

<kenji>
もう完成度95%くらいのドラムの打ち込みを曲のど頭から終わりまで、まず作ります。かっこいい曲ってつまりはドラムの構成や展開で決まると思っていて、変拍子やリテヌートも何分の何小節目に何拍だとか、何% BMPを落とすとかって、ノリではなく頭で考えて作っています。打ち込みが故のことだとは思うんですがロジカルにやっていて、その分ライブが衝動的な感じになっているんだと思います。
そんなのはハードコアじゃない!と言われそうですけど、ハードコアはかくあるべし、という枠に収まっていないことこそがハードコアだなと自負しています。

あとドラムの打ち込みにも自分たちなりのルールがあって、基本的には人間が叩ける譜面になるように意識しています。手が3本ないと叩けないとかっていう不可能がないものになっています。例えば、シンバルとスネアとタムが同時に鳴っているということは実はないんです。ただ実際に人間が叩けるようなBPMは全く意識していませんが。笑

Q.
デスメタルやスラッシュメタル的なフレーズやブレイクビーツの導入など独特な楽曲構成が魅力的ですが、このスタイルになったのはいつ頃からでしょうか?

割と最初の方からごちゃまぜでしたが、2006年にリリースしたenslaveとのスプリット7インチぐらいから音楽性が安定したイメージです。murder channelから出していただいた時はその土台にBREAKCOREやブレイクビーツの要素を多めにすることを意識しました。

Q.
楽曲においてもキャッチーで聴きやすく記憶に残りやすい曲を作られていると思います。曲作りにおいて大事にしていることや特別に意識されている事はありますか?

基本的にみんなキャッチーな音楽が好きなので自然にそうなってる気がします。
ほどほどにキャッチーさがあると演奏してて楽しいです。やってて気持ちいいことが大事なので、そこが聴きやすいという印象に繋がってるのではないでしょうか?

Q.
歌詞はどういった内容を歌われているのでしょうか?

やっぱりアディチュードはハードコアなので基本的には社会への怒りや個人的な怒りを歌ってるんですけど、30代になってからあんまり怒ってないんでどうしたらいいかなと思ってます。会社の営業とか無茶言って来るクライアントや広告代理店への不満とか歌えばいいんですかね?

MVにもなってるIRON RODSっていう曲は「スペースグラインダーという四国から来るおじさんを誰か制御してくれ」っていう歌詞なんですけど5分で書いたわりになかなかよくできてると思います。

Q.
ライブではメンバー同士でのぶつかり合いやフロアへの突入など非常にアグレッシブなパフォーマンスをされていますが、何故こういったパフォーマンスになったのでしょうか?

やっぱりエクストリームミュージックは暴れるイメージがあるので。
deathcountはなにやるかわからないっていう空気があるとどうしても期待に答えたくなってしまいます。ボーカル2人が無茶苦茶にハイテンションなのがdeathcountのアイデンティティだと思ってるフシもあったりします。ただギターのsanchiが僕を蹴るのは個人的な恨みかもしれません。今度聞いてみます。あれは痛いのでやめてほしいです。

Q.
deathcountの自主企画「GRIND SHINTOSHIN」はどういったコンセプトで始められましたか?

元々西荻wattsで「the sun is gone」という企画をやってたのですがwattsが潰れてしまい、WALLで企画をやることにしました。それが「GRIND SHINTOSHIN」です。
企画名はGRIND OSAKAっていう一時期すごく盛んだった大阪グラインドのムーブメントがありまして(ファンジン発祥でコンピ音源やライブイベントにもなっていた)、それがすごく好きだったのでオマージュとしてGRIND SHINTOSHINという名前にしました。GRIND TOKYOとかGRIND SHINJUKUだとダサいしWALLの地理的にも都庁の下だし新都心にしようって思いついてこの名前にしました。

呼ぶバンドは僕が酔っ払ってこの組み合わせでやったら面白いかも!!って思いついたメンツに声をかけてます。ジャンルはバラバラでも1つのイベントで観れたらしっくり来るなっていう組み合わせを心がけてます。
最近は僕がもう1つやってるGATEっていうグラインドコアバンドの企画でもこの名前を使っています。最近はdeathcountで企画やってないのでまたやりたいですね!

Q.
1stアルバム「Worldly desires」の製作期間は?アルバム(楽曲やアートワーク)などにコンセプトはありますか?

2年ぐらいやってましたっけ??半分ぐらいは書き下ろしだったと思います。
アートワークは僕が作ったんですけどパッと思いつく素材をできるだけ見つけてコラージュにしました。理屈はないんですけどdeathcountの音源にハマるイメージで思いつくものをとにかく集めてカッコよく組み合わせた感じです。宇宙飛行士とか銃弾とかガイコツとか鋲とか。ロゴや曲名のデザインは僕の奥さんがグラフィックデザイナーなのでお願いして作ってもらいました。murder channelからのリリースっていうのもあり、洒落た感じにしたかったのは狙いでした。

<kenji>
書き下ろし以外の曲もすべてアレンジを新しくし、再録しました。また途中で「今、MurderChannelというレーベルから俺らが出すアルバムって本当にこういうコンセプトでいいのか?」というところも、梅ヶ谷さんと話して詰めていきましたので、だいぶ時間をかけましたね。
コンパクトながらどの曲にもアイデアと魂を詰め込んでいます。グラインドコアらしさと、普通のドラムセット1式ではできないこと、そしてボーカルのテンションの高い掛け合いが「らしさ」だと思っていて、それがコンセプトといえばコンセプトですね。
グラインドコア好き、ブレイクコア好きの両者にアピールできる音楽にしようと務めた結果、最終的にはこれまでのdeathcountの集大成的なものになりました。

deathcount / Worldly desires
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Q.
Worldly desires収録曲で特に思い入れのある曲は?

beautiful momentかなぁ。3.11の地震の時期に作ったんで、当時のことを思い出しますね。東電の原発事故への怒りについて歌ってます。美しい瞬間っていうのはあの爆発への皮肉です。

Q.
The iron rodsのMVでは最後に「GRINDCORE」という文字が出てきますが、deathcountはグラインドコアに対して何か特別な拘りなどがあるのでしょうか?

映像の締めとして数フレームだけ文字を出したいなと思ってたのですが、それが何か考えたときに一番しっくりくるのがGRINDCOREという単語でした。やはりジャンルとしてはGRINDCOREに属してると思うので。

Q.
長年ドラムマシーン/打ち込みでのライブをされていますが、生ドラムを使ったライブや楽曲製作に興味はありますか?

特にありません。deathcountは打ち込みドラムのままやります!
女優の吉岡里帆さんがドラム叩きたいって言って来たら話は違います。
彼女はすごくいいブラストを叩くと聞きますから。おっぱいも大きいですし。


Q.
今までのライブで最も思い出に残っているのは?

WALLでやったときにフロアの奥の方に突っ込んだら他のバンドを観に来てた女子大生ぐらいの女の子2人組が「キャーーーーーー」って叫びながら逃げていったことです。女の子にすり寄られることはあっても(←ここ太字でお願いします)逃げられることって人生であんまりなかったので。
あとは新潟デスキャンプで灼熱の日中にライブやって熱中症になりかけたこととかwallで壁に体当たりしたときに壁から釘が出ててそこに頭が当たって流血したこととか、小岩eM7で天井にぶら下がったあと落下したらムチウチになって半年ぐらい治らなかったのも覚えています。

グラインドコアってスポーツですよね!!!

Q.
今後の予定を教えてください。

特に決まってません!
ライブ呼んでください!!!

deathcount
https://twitter.com/deathcountgrind
https://soundcloud.com/deathcount