“GHz Interview13” 黒電話666

GHz Interview

今回のGHzインタビュー企画は今年1月にEP「Accumulation」を発表した東京の電気音響過激派「黒電話666」が登場!
ノイズからクラブやバンド界隈からも支持されており、東京地下音楽シーンを代表するアーティストの一人である黒電話666氏の音楽的ルーツから活動初期の話、Accumulationの製作に纏わる話などを親交の深いMurder ChannelのUme氏がインタビュアーとしてお聞きしました。


 

黒電話666 | BLACKPHONE666
http://www.geocities.jp/made_in_nakano/index

東京を拠点にオリジナルハーシュサウンドを追求する電気音響過激派。
2001年始動後、自主制作音源を多数発表。”MURDER CHANNEL”のヘルプスタッフとして携わる一方、2007-2012年はイベント”Discord Proving Ground”を運営。
現場で培われた経験値と技術により生み出される獰猛なサウンドは、エクストリームなエレクトロニック・ミュージックの進化を望ませる。
2011年、Drastik Adhesive Forceとのユニット”tesco suicide”を結成。2012年韓国ツアー、2013年UK (TUSK)~フランス~スイス (LUFF)のヨーロッパツアーを敢行。2014-2015年にかけては海外勢との国内共演やDommune、Red Bull Music Academy Tokyo等に出演。

Q.
EP「Accumulation」を発表してから少し立ったけど、発売後で何か変わった事ってある?

特に無いけど、プロモーション展開を通じて目につく機会が多少増えたのかなと。「名前見たこと・聞いたことある」みたいな。

Q.
Accumulationは黒電話666にとって初の正式リリースになるんだよね?EPにはコンセプトだったり、制作において意識した事などは?

ちゃんとした流通にのせるという意味での正式ですね。これといったコンセプトはなくて、制作当初の趣向がそのまま反映されています。ハーシュノイズの醍醐味をキープしつつ電子音楽的アプローチを意識したんだけど、イメージをうまく具現化できずにもやもやした気持ちはありました。

Q.
EPの音源製作ではどういった機材を使って作っていたの?ライブでは電話を使っているけど音源製作でも使ってる?

使っています。ライブと音源でも同じでペダルエフェクターとシンセです。

Q.
EPはどんな人に聴いてほしい?

初心者には入門として、熟練者や海外のノイズファンには2010年代以降の現行日本産ノイズミュージックのひとつとして聴いてもらえるのが理想ですかね。

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Q.
3回に分けたリリース・パーティー(会場:落合soup, 幡ヶ谷Forestlimit, DOMMUNE)も凄い面子だったよね。あのラインナップはどうやって決めたの?

ラインナップに関しては、レーベル側にこういう面子でやりたいと提案して決めました。SoupもForestlimitもありがたいことに大変盛況でしたが、会場が小さく入れなかった人もいてそれは申し訳なかったです。

まずKYOKAさんとENAくんが揃わないと、リリパにならないでしょ(Remixを提供してもらっているので)ってことで、2人のスケジュールが合う時期をずっと探していました。で、最近知り合った中で最も尖っていてこの2人とも親和性が高いKOBAくんにもオファーさせてもらいました。

さらにこれだけだと普通っていうかありそうなイベントだし、ここにENDONをぶっこめるのが自分の持っているネットワークや振り幅の強みかなと。


Photo by Ryo Fujishima

Forestlimitのほうはアフターパーティーだから遊びの意味が強くて、ダブとかベースをメインにしました。本当は自分のライブは無くてもよかったんだけど、レーベル側にそれはだめでしょと。こっちのほうもありそうでなかった組み合わせができたかなと思います。


Photo by Katsuki Mitsuhashit

で、SoupとForestlimitにノイズアーティストは出ていないので、DOMMUNEはノイズ寄りの回にしようと。DJも多かったんですが、ノイズと親和性の高いアーティストの方にあえてDJとしてオファーすることで、その人の音楽的背景や趣向を表現してもらおうと思いました。

Release Party “Accumulation1, 2, 3″の様子
http://www.geocities.jp/made_in_nakano/blackphone666/gallery/accumulation123.html

Q.
DOMMUNEでのUMIKAWA(美川俊治 + 宇川直宏)のライブは面白かったね。

美川さんはさすがとしか言いようがない音のさばき方だったし、宇川さんがモジュラーであんなに美川さんと対峙できるのは驚きました。この組み合わせは僕からレーベルに提案をして、話をつけてもらいました。実は宇川さんは最初はノリ気じゃなかったていうか、美川さんとのコラボは恐れ多いってことだったんですが、美川さんからOKがでたので実現に至りました。今なにやら企みもあるようです。

Q.
なるほどね。それじゃあ、今度は黒電話666のルーツに関して聞かせてください。
Digital Hardcore Recordingsからノイズミュージックに流れたんだよね?やっぱり最初はAtari Teenage Riotが入り口だったの?

そうそう。ATRのライブアルバム(Live At Brixton Academy 1999)。SKYFISHに聞かないほうがいいよって言われて、じゃあ聴いてみようと。

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Q.
DHRとATRはいろんな人にノイズとかジャングル、ガバの面白さを伝えた功績は大きいよね。ATRの政治的な部分にも反応したりしていた?DHRの作品ではどんなのが好き?

政治的影響はないです。政治と芸術がからむことには何ら違和感はないけど、今自分はそういう表現する気はないです。
DHRで好きなのはATRの1st、DEATH FUNK、BOMB20、Christoph de babalon、DJ Mowgly、NTRとか。DHRはアーメンが割れてて音が汚くて全然低音が無い。数少ないレーベル買い対象のひとつでした。

Q.
クラブに遊びに行きだしたのはいつ頃?

クラブミュージックじゃないけど、最初はGrindHouse nightだったかと。夜中に爆音でロックを聴くっていうクラブイベント。有島博志さんのミクスチャー/ヘビーロックタイムが終わったかと思うと、CISCOの店長だったCISCO AOKIさんが爽やかなギターポップとかエモをかける時間、女性DJがグラインドコアばっかりかける時間等があって、最後にまた有島さんで〆ていう。本格的なクラブミュージック体験は新宿リキッドルームに行きだしてJeff MillsとかDRUM & BASS SESSIONSとか。

Q.
最初に行ったノイズのイベントって覚えている?

電子雑音関係のGenocide OrganとCON DOMのジャパンツアーだったと思うけど、KUNT、水谷聖さんも出てたかな。それは違うイベントだったかな…。
初めてのノイズの現場だったし、わいわいした雰囲気とは別世界で緊張した記憶があります。当時は負のパワーが凄かった印象で高円寺20000Vの雰囲気も加味されてたのかもしれないけど、とにかく他を受け付けない感じというか、今まで経験した現場と全然違った。

Q.
電子雑音の影響は大きいんだね。

今見てもレビューが独特すぎるし熱量が凄い雑誌です。インターネットがまだそんなに身近でなかった頃なんで、そこで紹介されている作品を電雑の店舗とかJNR(現 NEdS)、ユニオンで買いました。

Q.
今まで体験した中で忘れられないノイズのライブってある?

いくつかあるけどSLOGUN、BASTATRD NOISE、SUTCLIFFE JUGEND、PAINJERK、INCAPACITANTS、MASONNA、それとLucas Abela。SLOGUNは凄まじかった。ノイズ経験が浅い頃の体験だったので衝撃でした。
その時はステージに立ち入り禁止テープが張られいて、中に演奏者(FIRE IN THE HEAD?)がいて、SLOGUN本人はマイクを持ったままフロアでうろうろしてるんですよ。ノイズウォールが轟く中、しばらくするとアジテーションしだして、客を煽るわけ。顔と顔を突き合わせて「Fuck you」て言ってきたり、手で突き飛ばしたりしてフロアを練り歩く。その場は緊張感で張り詰めていて、皆目を付けられたくない感じでした。ほとんど変化がわからないような轟音の上に威圧的なアジテーションが延延と続いて、だんだんある種のトランス感もつくり上げられていたんではないかと。盛り上がっちゃった人は自らSLOGUNに突っ込んでいったりとかして。実体験として2000年代初頭のシーンが影響強いですね、それ以前は文献でしか知らないから。


Q.
ノイズ・ミュージックってネガティブなイメージもあるじゃない?アートワークでSMとか死体写真使ったりとか、暴力的な表現だったりとか。そういう部分にも惹かれているの?

元々そういうのが好きでした。激しい音楽が好きな人ってだいたい、暴力・残虐・破壊・退廃みたいなネガティブなキーワードに惹かれるじゃないですか。

Q.
それでは実際に自分で音楽を作り始めたキッカケは?

ミナミくん(SKYFISH)と大島くん(Senkawos)がきっかけ。お互いが16-18歳頃に知り合ったんだけど、2人のクリエイティビティと行動力には大いに影響されました。高校生当時、CD-Rに音源を焼くのが簡単になった頃で、自作のコンピCD-Rやカセット、ステッカーのグラフィックなんかをちゃんとDIYで作っていて、企画やフェスもやってた。特にミナミくんとカナトがやっていたMEGADRIVEという、デジタルハードコア/ガバユニットがめちゃくちゃ好きで今でも忘れられないんだけど、2人にとっては忘れたい黒歴史かも知れません。大島くんは今もなお探求心を持って活動していて、フジロックに出演したときはただただ感慨深い思いでステージを眺めました。この2人に感化されて、サンプラーとシーケンサーを手にしたわけ ですが、辿り着いたのが今のスタイルです。


大島タケノリ(Senkawos)

Q.
音源しか知らないけどMEGADRIVEは本当カッコよかったね。今もだけどSKYFISH君のセンスは凄い。

他の人よりも常に二足くらい先にいるよね。最近はビールにも詳しいし。☎︎で初めてライブやる時にSKYFISHに改名したばかりのミナミくんに出てもらって、それでおもしろいやついるからと連れてきたのがCDRくんだった。SKYFISHからの拡がりはめちゃくちゃでかい。MEGADRIVE観に行ってUNURAMENURAと知り合って、19-tやTEMMPERに遊びに行ってROTATORやL?K?Oを知った。

Q.
ノイズを自分で作り始めた頃は最初はどうやって作っていったの?

ノイズを聴いたり作ってる人が周りに居なかったし、自分でやってみてこれはありだなとか試しながら。そのうちucchy(cunts / Napalm Death Is Dead)や酒井さん(AMNESIA-CHANNEL / HAIGAN etc)、くずにゃん(Self-Deconstruction)、平野くん(Shikaku / dotsmark)、クボタくん(Kazuma Kubota)と知り合い少しずつ学んでいきました。ネットでもたいした情報はヒットしなかった頃だし、近しいノイズ先輩がいたわけでもないので、いきなりインキャパとかGovernment Alphaに「この機材なんですか?」とか尋ねる勇気もなかったです。

Q.
黒電話666として始めて音源を発表したのっていつ頃?音源を作ったキッカケは?

2001年にCD-Rを数枚作りました。ライブはやっていなかったし、当時はCD-Rを作るのが新鮮で楽しかったので録音したものをコンパイルしました。

Q.
今の若い世代のノイズシーンはどう見える?

より構築された表現をしようとするのが当たり前になっている印象。ただ知っている限り、自分も含めて斬新な事はこれといって起きていない気がします。Guilty Connectorが現れた時ってジェネレーションインパクトが凄いあったんじゃないですかね。憶測ですけど。Planet Muのコンピに参加したときはすげえって思った。

ハードなノイズミュージックにおいて日本はハーシュの呪縛が色濃いので、パワエレやインダストリアル、アクショニズム等の非ハーシュに特化したアーティストが少ない現状があると思います。混沌を表現するだけじゃない日本産のハードノイズが現れたらおもしろくなると思うんですけど、その点、スクラッチノイズでグルーヴ作り上げていたSKEや、知る限り日本には居なかったノイズウォールスタイルと「無意味」を貫いたP.I.G.S.は素晴らしかったんですが、残念ながら両者とも活動停止しています。PrurientやPuce Mary、EMPTYSET等のように様々なスタイルが日本でももっと盛んになれば、シーンの幅も拡がるんじゃないですかね。

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Q.
日本のノイズは世代によって音が違ったりしているの?

どのジャンルにも言えることだけど、世代によって作り手側が影響受けたものが異なるし違うと思います。勝手に世代分けをしてみましたが、<第1世代:MERZBOW、非常階段 第2世代:C.C.C.C.、KK NULL、K2、MASONNA、ハナタラシ、SOLMANIA、Grim 第3世代:PAINJERK、暴力温泉芸者、AUBE、MSBR、Governmet Alpha、Kazumoto Endo 第4世代:Guilty Connector、Kazuma Kubota、黒電話666>第3世代以降はやっぱり音楽ジャンルとしてのノイズを確実に認識した上で表現しているんじゃないでしょうか。

Q.
黒電話666のスタイルは元々はうるさい音楽が好きだから今のスタイルにたどり着いたんでしょ?今もうるさい音楽を探求している?

うるさい音楽の楽しみ方っていうのを探索している感じ。激しい音楽の中の長所はこういう部分っていうのを外に出していこうっていうか。外っていうのは聴衆やシーン。アウトプットの仕方を考えているというか。うるさいのが基準だから、これ以上うるさくすることが出来るのかっていうのはもちろん意識してます。

Q.
他のシーンにもこの音楽の良さを伝えたいって意識が出てきたってこと?

入り口になればいいんじゃないかとは思います。

Q.
ライブで意識していることってある?黒電話666のライブってインプロを主体としているから決められた楽曲を演奏する形ではない。尺とかってどうやって決めているの?

始まり方は割と決めて臨んでます。ダラダラしないようには気をつけていて、だいたい20分前後。それは体感で、自分の集中力と現場の雰囲気によって左右されます。

Q.
2013年にENDONとヨーロッパツアーにも行ってたけど何か印象に残ったことは?

初めてのヨーロッパだったんで全部楽しかったけど、個人的に良かったのはUK。
到着した翌日、ENDONと会場見に行ってみたら「お前これから出番だよ」って言われて。どうやら主催者が間違ったスケジュールを送ってきていたみたいで、リハ無しでやったんだけど結果めちゃくちゃ盛り上がって。100人くらいのお客さんがいたんだけど、日本じゃこんな光景見れないなっていう歓迎ぷりでこっちが驚いた。全然認知度無いのにライブ後皆声かけてくれるし、良い経験でした。
あと初海外のENDONを見れたのも良かった。同世代のバンドが海外で盛り上げているのは素晴らしい光景でした。LUFFの音響ははんぱなかったです。


Q.
moshimoshi名義でレゲエのDJをやっていたりするけどレゲエの何処に魅力を感じているの?

最初はベースラインのループに惹かれてインストのダブばっかり聴いてたんだけど、だんだん唄モノが好きになりました。

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Q.
レゲエからの影響って黒電話666にも反映されてたりする?

無いとは言えないと思うけど、あまり意識はしてないです。

Q.
黒電話666はフラットに活動出来ることが強みだよね

流れに任せてきたらこうなりました。近頃たまたまニッチな需要があるんだろうとは思ってるけど、ノイズって様々なジャンルに親和性があるかもしれない反面、万人受けしないのは理解してます。

Q.
それでは最後に今後のスケジュールを教えてください

ライブは以下で、リリースはそのうちあります。

☎︎2017 S&S
5/26 ☞ Red Brut, JSCA, Thistle Group来日 at 下北沢Basement Bar
5/27 ☞ Unsustainable Social Condition来日 at 落合soup
6/3 ☞ 16時間4ステージ同時進行イベント at 新宿JAM
6/13 ☞ moshimoshi at 渋谷Organ Bar
6/30 ☞ SUMAC来日 at 小岩Bushbash
7/29 ☞ AKBK企画 at 落合soup

Accumulation取り扱い店舗一覧
日本:
[…]dotsmark
Tower Records
disk union
amazon
iTunes Store(download:remixの収録は無し)
ototoy(download:remixの収録は無し)

海外:
[…]dotsmark
Cold Spring
iTunes Store (download:only original tracks)