“GHz Interview04” THRASHER (PRSPCT Recordings)

GHz Interview

今回のGHzインタビューはハード・ドラムンベース/クロスブリード・シーンの最重要レーベルである「PRSPCT」のオーナーであり、今年10月には待望の来日ツアーもおこなったハード・ドラムンベース・シーンのトップDJである「THRASHER」のインタビューを本邦初公開!

PRSPCTは2005年から作品リリースを始め、DJ Hidden、Limewax、Counterstrike、Cooh、Donnyといったハード・ドラムンベース、ダークステップシーンのトップアーティスト達の作品をリリースしており、長年に渡ってシーンを引っ張っているレーベルです。リリースされるトラックは全てオリジナリティー溢れる強力な楽曲ばかりで常にDJ達にヘヴィープレイされ続けているクラシックを多数発表しています。
2011年からはハードコアをメインにリリースする「PRSPCT XTRM」をスタートさせ、The Outside Agency、Hellfish、Detest、I:Gor、Delta 9 & Fiend、The DJ Producerの作品をリリース。更に、Bong-Ra、FFF、Deformer、DJ Skull Vomit、Gore Techなどのブレイクコア系アーティストの作品を発表する「PRSPCT RVLT」というレーベルも設立し、エクストリームなダンスミュージック好きやDJ達までも虜にしており、PRSPCTの存在は現在のダンスミュージック・シーンに大きな影響を与えています。

そして、この巨大なレーベルのボスであるTHRASHERはハード・ドラムンベースを軸にクロスブリードからインダストリアル、ハードコア、スピードコアまでもをスキルフルかつタイトにミックスするパンキッシュなスタイルで世界中で人気のDJでもあります。
2013年にはLimewaxとBong-Raとのユニット「The Hard Way」のボーカル&ギターとして活動を開始し、パンク~ドラムンベース~ブレイクコア~ハードコアを混ぜ合わせた邪悪な高次元ミクスチャーサウンドは多方面で話題となり、The Hard Wayの作品やライブはジャンルを超えて圧倒的な人気を得ました。

今回のインタビューではPRSPCTの誕生秘話やハード・ドラムンベースの歴史、Limewaxとの出会いやDJプレイに関してなど興味深いお話がたくさん聞けました!

THRASHERはPRSPCTのレーベル運営は勿論、毎週何処かの国でのDJやライブ、さらにPRSPCTのブッキングエージェントの仕事までこなしており、超多忙なスケジュールの為にインタビューを引き受けて頂いてから回答を貰うまでに半年ほどの時間がかかりました。そんな超多才な人気アーティストによる貴重なインタビューはドラムンベースやPRSPCTのファン以外にも、音楽シーンに興味がある方には一見の価値有りの内容となっています!

先日リリースされたThe Hard Wayの新作EP「Deathkicks EP 」と合わせて是非チェックを!


 

TH2

 

Q1.
ー 出身地を教えてください。生まれも育ちもオランダですか?

A. ロッテルダム出身。生まれたのはイギリスだけど、ロッテルダムで育った。

Q2.
ー 音楽的なルーツを教えてください。いつ頃から音楽に興味を持ちましたか? 貴方はThe Hard Wayではギタリストとしても活動されていますが、ギターはいつ頃から始めていますか? 影響を受けたギタリストや作品があれば教えてください。

A. バンドは14歳頃に始めた。パンクとハードコアが俺の音楽のルーツで、そこから学んだDIY精神は、今でも俺の生き方の基本だ。
若い頃からツアーを沢山やってて、数多くのレコードをリリースしてきて、10年近くもそんなことを続けた後、新しい方向性が必要だと感じ始めて、ヘビーなエレクトロニックミュージックを始めた。それがPRSPCTとThrasherを始めたきっかけだった。俺はそもそもパンクやハードコアからエネルギーを得てきた。それにごく近いダンスミュージックが、hardcore drum & Bassであって、The Hard Wayからの流れで、俺は自然と導かれてきた。

Q3.
ー Drum ‘n’ BassやHardcore(Gabba)とはいつ出会いましたか? ダンスミュージックに興味を持ったきっかけは?オランダはMID-TOWNなどのレコードSHOPが有名ですが、貴方が育った地元にはどんな音楽シーンやレコードShopがありましたか?

A. 俺が最初に聞いたdrum & Bass(当時でいうJungle) はGoldieのtimelessだったんだけど、この曲を聴いた俺は驚愕した。15、6歳の頃はロッテルダム•ハードコア•ガバ系の音楽が好きだった。
これらのシーンは、俺がいたパンクシーンとは切り離されていたから、ロッテルダム•ハードコア•ガバ系のジャンルに深くはまるようになるまでに年月を要した。(実際、俺が21か22歳くらいの頃だった)。
ドラムンベースとハードコアのレコードを買うようになって、ロッテルダムの『Triple Vision』(後のPRSPCTのディストリビューター)に足繁く通った。もちろん『Midtown』でもハードコア系のレコードを買った。

Q4.
ー 貴方の音楽キャリアを教えてください。Thrasherでの活動を始める前はどんな音楽活動をされていましたか?

A. 14歳頃から、色んなバンドで演奏してた。ロッテルダムのパンクロックのシーンは当時盛んで、まだ子供だった俺にとっては、もの凄いエネルギーだったよ。18歳になったときロッテルダムで一番流行っていたクラブ『Nighttown』と地元の『Velvet』というレコードショップで仕事をするようになった。

ー 「The Apers」というバンドでギターをプレイされていたそうですが、バンドに参加したキッカケは?

A. 俺は『The Apers』のメンバーでは無かったんだけど、アメリカのツアー(6週間の)でギタリストとして飛び入り参加して、7インチのレコーディングにも参加した。

Q5.
ー 「Thrasher」としてDJを始めたきっかけを教えてください。当初からDrum ‘n’ BassやHardcoreをミックスしたスタイルで活動していたのでしょうか?

A. 前述したように、10年もの間バンド活動をしているうちに新しい音楽の中の目的みたいなものが必要だと思うようになったんだ。当時『nighttown』のブッキングの仕事をしていた。ドラムンベースのレギュラーイベントをよくやっていたけれどもそのスタイルは俺には生温いものだった。そのうちにもっとハードでダークなイベントをやりたいと思うようになった。そして、不平不満を言う前に行動を起こそうというわけでPRSPCTをスタートさせた。初めてのパーティーが終わった後、もっとハードでダークな音楽をDJ達に聞かせる為に、自分でDJを始めようと思った。ターンテーブルを買った3ヶ月後にThrasherとして、生まれてはじめてのDJセットをプレイした。俺はただドラムンベースシーンの中で一番ハードな音楽をプレイしたかったからhardcore & drum & bassを最初からミックスした。とにかく速くてハードなやつをね!

Q6.
ー 「PRSPCT」を始めたきっかけは?どんなコンセプトを持ってパーティーとレーベルを始めましたか?2005年にリリースした最初の作品である「DJ Hidden / Limewax – The Resonators / Pain」がリリースされた経緯を教えてください。

A. パーティーをはじめたきっかけは前回の質問で既に説明した通り。パーティーとレーベルのコンセプトだけどね、俺はそもそもHard drum & Bass のイベントをやりたかった。そして何かを欲するなら自分で作らなきゃ駄目だと思ってる。それがパンク精神だからさ!で、何年間か、イベントをやってるうちにレーベルをスタートすることが必然的になってきた。このシーンのアーティストたちとのコネクションはしっかりと持ってたし、『triple vision』もいい条件を提案してくれたから、俺は脇目も振らずにレーベルをスタートした。
LimewaxとDJ Hiddenともその頃から仲が良かった。だから、(Limewaxは当時まだ16歳だった頃)一番最初のリリースを頼んだ時、彼らは2つ返事で引き受けてくれた。

Q7.
ー 貴方はLimewaxとは頻繁にB2Bセットをされていたり、「The Hard Way」や「Limewax&Thrasher」名義で楽曲も一緒に作っていたりとPRSPCTにとってLimewaxは欠かせないアーティストの一人だと思います。彼と最初に出会ったのはいつ頃ですか?

A. Limewaxにはじめて出会ったのは彼が14歳の時。年齢制限を満たしてないうちから、PRSPCTのイべントに忍び込んできてた(笑)。
彼は自分で作ったデモのCDを渡してくるようになった。最初は、『ガキがデモを渡してくるぜ。』くらいにしか思っていなかった。でも、そのCDを聞いた時、『このガキすげぇ!』となった訳だよ。

ー 貴方にとってLimewaxはどんなDJ/アーティストですか?

A. LimewaxはHard drum & Bass シーンの中で一番重要なプロデューサーだと思う。彼の最初のリリースはハード•ドラムンベースシーンを変えた。彼のインプットなしでは今日のHard drum & Bass はまた別の姿をしていていただろう。

Q8.
ー  PRSPCTからリリースする作品に関して、貴方はレーベルオーナーとしてどれ位作品をディレクションしているのですか?作品をリリースするうえで一番大事にしている事は?

A. PRSPCTのレーベルオーナーとしてベストの中のベストをリリースしたかった。周りのアーティストは皆そのことを知ってる。だからPRSPCTから曲をリリースするアーティストは最高のトラックを提供してくる。品質管理はばっちりだ!
尚かつ、トラックは最高にハードじゃなきゃならない。そこが判断基準。

PRSPCT LOGO

ー PRSPCTのビジュアルイメージはメタルっぽいイメージの物からSFっぽいメカニカルなデザインなど、良い意味でカジュアルな物が多いかと思います。これは意図的に?

A. アートワークも同じ。常に、ダークなアートワークを好んできた。これは俺のパンクやハードコア、メタルにルーツがある。性格上、挑発したがってるフシもある。PRSPCTは俺のレーベルだから、自分がしたいことは何でも出来る。そのことが、レーベル運営を楽しくする。

Q9.
ー 現在のHardcore Drum ‘n’ Bassシーンを形成したオリジネーターは誰だと思いますか?個人的にはTechnical Itch、The Panacea、Ed Rush、Evol Intent、The Enemy、Raiden、DJ Hiddenなどのアーティスト達やRuff-Teck、Killing Sheep Records、Outbreak Recordsといったレーベルの作品だと思うのですが、貴方はどう思いますか?貴方が始めてHardcore Drum ‘n’ Bassを認識した楽曲(もしくはアーティスト)は何ですか?

A. 初期のTechnical Itch は amen drum & bassの中では俺の中ではベストだ。Ed Rushはダークでテッキーなdrum & bassの中で重要度が高い。Panaceaのクレイジーなレイヴスタイルは最高だし、質問に挙ったアーティスト達は、皆色んな意味で重要だ。Hardcore drum & Bass / crossbreedに関して言えば、DJ Hidden は重要なアーティストのひとりだが、DJ producer & Hellfishも外せない。彼らが、全スタイルとdrum & Bass、Hardcoreやbreak coreの組み合わせのパイオニアとなるアーティストの集合体だろう。

Q10.
ー PRSPCTはCrossbreedの名曲を沢山リリースしていますが、Hardcore(Mainstream/Gabba)とDrum ‘n’ Bass界隈からはどんなリアクションがありますか?PRSPCTが主催するパーティーやフェスティバルではDrum ‘n’ Bass以外にも様々なジャンルのアーティストが出演されています。Prspct crew、Ed Rush、Black Sun Empire、AudioなどのDrum ‘n’ BassのファンはHellfish、Bong-Ra、Munchiのセットでも踊っていますか?

A. 俺らはこの手の混合スタイルを14年も前からサポートしてきた。当時はCrossbreedは始まったばかりで、多くの人々には過激すぎたようだが、数年後に俺らは自分達でシーンを作ってそれがかなり広まった。多くの人間がCrossbreed自体をPRSPCTと呼ぶようになった。PRSPCTがスペシャルな理由は、オーディエンスが多種多様なスタイルの音楽を、それぞれ感動を持って楽しんでくれてる事なんだ。Ed Rushでフロアが盛り上がっていたと思えば、次の瞬間には、同じオーディエンスがDrokz & Akiraで盛り上がってる。これがPRSPCTなんだ!

Q11.
ー PRSPCTはレコードとデジタルを一緒にリリースする事が多いですが、今の時代にレコードをリリースし続けているのは何故ですか?

A. 現時点でも、全作品をヴァイナルとしてリリースしている。MP3だけのフォーマットで音楽をリリースするのは、空気を売っているようなものだ。美しい本当の製品を売りたいし、MP3からはその満足感は得られない。しかも、ヴァイナルリリースは品質管理も兼ねてる。生産コストがかからないという利点によって、数多くの紙くずのようなデジタルレーベルが、紙くずのような作品をリリースしている。『そんなに良い作品じゃないけどまぁ良いか。仮に1曲しか売れなくても、問題ないし。』といった考えだ。それは大間違いだよ。俺にとって、作品をリリースするということは、生産コストを投資するだけの価値がある作品じゃなくちゃいけないんだ。PRSPCTのヴァイナルの売れ行きは良い。理由は、音楽が良く、アートワークも素晴らしく、ヴァイナルとしてのサウンドの鳴りも最高だからだ。レーベルを運営することの本質は、こういう部分だ。良い音楽をリリースするってこと。

Q12.
ー 貴方がDJプレイで大事にしている事を教えてください。これからDJを目指す(もしくは目指している)若いDJ達にアドバイスがあれば教えてください。

A. 自分が好きで、人に聞いてほしいと思う音楽をプレイする事。オーディエンスが期待しているからという理由でヒット曲をDJしない事。音楽を聞かせたいと思っている相手に、音楽のエネルギーを与える事。タイトにミックスする事。ハードにプレイして、自分がやっていることを楽しむ事。あ、あともうひとつ。自分が得意なことではトップを目指す事。良いDJはフロアを感じる能力があるし、DJブースの中でのDJテクニックにおいて、何らかの得意技を持っているものだからね。

Q13.
ー PRSPCTの活動によってHardcore Drum ‘n’ Bassは非常に人気のあるジャンルとなりました。PRSPCT自体もオランダ(そしてヨーロッパ全土)の音楽シーンには欠かせない存在になっています。貴方が当初思い描いていた理想であったり野望はどれ位叶ってきていますか?レーベルとしての最終的な目標はありますか?

A. PRSPCTを立ち上げた当初は、色んな意味で自分が何をやっているかわからなかったし、未だに自分が何をやっているかわかってない。ただ、自分の気持ちに従って感じることが正しいんだと思ってやっているだけなんだ。ただ重要なことは『真似をするのでは無く、革新する』事だ。自分は、音楽で生計をたててるし、ボスも居ない。俺自身がボスだ。世界を見渡して、俺が愛して尊敬するアーティストや友人に出会い、一緒に仕事をする。人生には非常に大きな価値がある。

Q14.
ー 今後のPRSPCTと貴方の展開を教えてください。

A. これからも最高のリリースを続けていく。世界中でどんどんレーベルナイトを開催して、人々にPRSPCTパワーを与えていく。で、皆にはそれを楽しみまくってほしいな。:-)

THRASHER
https://www.facebook.com/thrasherprspct/?ref=ts&fref=ts
PRSPCT Recordings
http://prspct.nl/
http://prspctrecordings.bandcamp.com/
http://prspctrecordings.bigcartel.com/

インタビュー/文:Hz Staff 翻訳:Kyoka
※このインタビューは2015年9月27日に行われました。