10月15日にMurder Channelからリリースされる日本とオランダのハードコア・アーティスト達が集結したコンピレーション『Gabba Summit』の発売を記念し、特別企画として日本のアイドルやゲームといったポップ・フィールドから、メタルやパンクなどのバンド界隈、そしてヒップホップでハードコア・テクノ/ガバを取り入れられた音源をご紹介!日本独自のポップセンスが反映されたユニークな曲が多く、どの曲も非常に素晴らしいクオリティとオリジナリティがあり、近年のモダン・ハードコア・テクノやガバの盛り上がりともリンクする部分も見受けられ、今また新しい感覚で聴き返す事が出来る曲があります。
まだまだ日本にはハードコアを取り入れ独自進化を遂げた楽曲がありますので、興味が沸いた方はここから更に掘り下げていってみてください!
M4 SOPMODⅡ / add ME
上田剛士氏(AA=/THE MAD CAPSULE MARKETS)が手掛けられたスマホゲーム「ドールズフロントライン」のキャラクターソング。一聴しただけで上田氏と解る絶対的なメロディも非常に素晴らしいですが、ガバキックの使い方も特徴的で様々なジャンルや文化を切り貼りしながらも完全なオリジナリティを持った楽曲を完成させる上田氏のプロフェッショナルな姿勢に今回も脱帽です。
BiS / STUPiG(Special Edit)
テンテンコさんやファーストサマーウイカさんがメンバーとして活動されていたBisが2014年にリリースしたシングル。こちらも上田剛士氏が作曲編曲を担当されています。上田氏が手掛けられた楽曲の中ではゲーム「RIDGE RACER V」に提供された曲やMERRYのリミックスと並んでストレートなハードコア・スタイルですが、コーラス部分はTMCMの『PARK』期を思い起こさせる形容出来ない感情が心を埋めていき過ぎ去っていく様な切ないメロディで、もうまさに上田氏にしか作り出せない内容。
AA= / 憎悪は加速して人類は消滅す ~Hatred too go fast, Vanishing all human~
TMCMの「CH(A)OS STEP」、「OUT/DEFINITION」、「MOB TRACK」、「RESTART!」などでガバキックを取り入れられ、ハードコア・テクノのエレメントをバンドサウンドに落とし込み、肉体的なグルーブと電子音をシーケンス上で完璧なバランスで混合させる事を成功させ、ライブではまた違った楽曲の魅力を引き出していたTMCMを経て、現在のメイン・プロジェクトとされているAA=でも上田氏はバンドサウンドと電子音の融合を追求し続けられています。その中でも、この曲はハードコア・パートとバンドのパートが切り替わりながら進んでいく構成で、双方のパートがお互いをおぎあいながらパワフルなグルーブとサウンドを生み出していく名曲。構成もDJプレイにあっていて、是非ハードコア系のDJには試して頂きたいです。
連続で3つ上田氏制作の楽曲を選びましたが、他にもYMOのリミックスやLynchburg Lemonadeの曲など、まだまだ紹介したい曲はありますが、またいつか別の機会に。上田氏は、長年に渡って日本のバンドシーンからポップフィールドにハードコア・テクノのエッセンスを注ぎ込まれている偉大なお方であります。
Def.Master / Are You In
Discordance Axisとのスプリットもリリースしている事から、グラインドコア・ファンにも知られている日本のインダストリアル・メタル・バンド「Def.Master」 の名盤1stアルバムに収録されている1曲。1994年に発表されているので、国内ではかなり早い段階でハードコア・テクノを取り込んでいたのではないでしょうか。海外ではSwamp Terroristsがハードコア・テクノをインダストリアル・メタルとミックスしていましたが、Def.Masterはよりストレートなデスメタルやグラインドコア的なブルータリズムを追求されていて、その勢いと殺傷性は今聴いてもまったく色あせません。アルバムにはDOOMの藤田タカシ氏がギターで参加されている事もあって、高速ながらも重みのある重厚なギターが全面で活かれた最高のインダストリアル・メタル・スタイルを作り上げています。Def.MasterのYoumi氏がリミックスで参加されたCocobatの『Footprints In The Sky』も時代を先取りし過ぎた名盤であります。
ユニコーン / Maybe Blue N2O ’94 Hardcore Maybe Blue Remix
https://www.amazon.co.jp/Maybe-Blue-N2O-Hardcore-Remix/dp/B00FVH9EAY
2009年に発表されたユニコーンのリミックスアルバム『URMX』に収録されたタイトル通りなハードコア・リミックス。N2Oによるリミックスだけあって、ハードコア・ジャングルのマナーに沿っており、90年代のUSハードコア・シーンの息吹も感じさせます。2000年中頃から後半に掛けて、N2OはSlipknotやSkindred、 (Hed) PEなどのバンドのリミックスもリリースしていましたが、そのテイストがこのリミックスにも活かされています。PIZZICATO FIVEとの「これは恋ではない」といい、奥田民生氏の歌声はアーメン・ブレイクと良い相性をみせますね。
TOYBEATS / BRING THE NOISE- FixVersion
ブレイクビーツを大きく取り込んだダンサブルな楽曲とエネルギッシュなライブで人々を魅了するバンド「TOYBEATS」のファースト・ミニアルバム『CHANNEL SURFIN’』に収録されているパンクとガバをバイブス全開でミックスさせた名曲。去年リリースされたアルバム『HeadPop』では、アーメン・ブレイクを多用したポップでハードな楽曲から懐かしさと新しさが混合したパラレルな楽曲が収められており、全年齢対応型の素晴らしい作品でありました。Creative Drug StoreのJUBEE氏にも通じるミクスチャー感であり、いろいろなジャンルのリスナーの方にオススメ出来ます。
Eddy Gordo vs Bryan Fury (DJ Ishii vs 2 Terror Crew Remix)
1998年に発表された格闘ゲーム「鉄拳」のオフィシャル・リミックスCD『鉄拳3 SEVEN REMIXES』に収録された日本のハードコア・シーンの最重要人物であるDJ Ishiiと2 Terror Crewのリミックス。インダストリアルチックでメタリックな関西らしいハードコア・テクノ・スタイルとなっており、高速なだけじゃないグルービーなハードコアの側面が表れています。今作にはKen Ishii、Captain Funk、Akio Milanpaakも参加しています。
大槻ケンヂと木村カエレ / 豚のご飯
https://open.spotify.com/track/3xppKRZhVp04Z5yUzaPoT8
アニメ「さよなら絶望先生」の主題歌とキャラクターソングを集めた『絶望大殺界』に収録されている大槻ケンヂと木村カエレ(小林ゆう)のデュエット。作詞作曲編曲はCOALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI氏。Disciples Of Annihilationを連想させるスピードコア・トラックにハードコア・パンク風の掛け合いと絶叫がスラッシーなギターと一体になった破壊的ながらもキャッチーで爽快感もある1曲。この頃から、NARASAKI氏がアニメやアイドルの楽曲制作を頻繁に担当されるようになり、刺激的な展開が増えていきました。
Co3 / 15BITCHES
https://open.spotify.com/track/7IlG7d3284syflYpthkErO
2015年に惜しまれつつ解散したバンド「FACT」が変名でリリースしたEPに収録されたブレイクコアとハードコアの独自ブレント的な1曲。元々、インタビューでHellfishなどのハードコアやスピードコアがお好きと発言されていただけあって、Co3名義ではバンドでは出来ないバッキバキな打ち込みの楽曲を作られていました。Factのリミックスアルバム『NIVAN RUNDER SOUNDRUGS 』にも、Co3名義でのリミックスが収録されており、Factのアルバムにもチップブレイク的な楽曲が収録されています。
kZm / バグり (feat. MonyHorse)
今年リリースされたkZm氏のアルバム『DISTORTION』に収録されている衝撃作。Euromastersをサンプリングした歪んだパーティーチューンで、Technoheadの「Gabba Hop」を思い起こさせます。他にも、今年はJUBEE「Mass Infection」やLEX「MDMA feat HEZRON」、Minchanbaby「NIZICORE」といったガバやドンク、ハッピーハードコアを取り込んだヒップホップが生まれる最高な状況が続いていて、これからどんなミュータントな曲が生まれるか楽しみです。