Fred Hanak(dDamage)

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ヒップホップとエレクトロにパンクロックを組み合わせたエネルギッシュでファンキーなトラックとロマンティックでエモーショナルな美しいメロディを兼ね揃えた独創性の高い素晴らしい楽曲を生み出していたフランスの兄弟ユニット「dDamage」のメンバーであり、ヒップホップのジャーナリストとしても活動していた「Fred Hanak」が2018年9月6日に永眠されました。

音楽を深く愛していた優しい紳士であり素晴らしいユーモアを持った気さくな人で世界中に多くのファンと友人がおり、GHz/MHzともにFredとは親交があり彼の突然の悲報に大きなショックを受けています。

こういった形で追悼の記事を書くのはとても辛いのですが、Fredが残した素晴らしい作品を後世に残す為にもごく一部ですがdDamageとして彼が発表した作品をご紹介させて頂きます。

パリにて実の弟であるJean-Baptiste HanakことJBとdDamageを結成し、97年にデビューアルバム『Reverbreak this Beat Down』をTsunami-Addictionからリリース。このアルバムではアブストラクト・ヒップホップやブロークン・ビーツにディストーションの掛かったパンキッシュでダウナーなサウンドを鳴らしていてdDamageのコアな部分が現れている様に感じます。アートワークではdDamageの作品を多く手掛けているRaoul Sinierが制作しており、Peace Offの専属マスタリング・エンジニアであったYann Dubによるマスタリングによって彼等の世界観と個性的なローファイ・サウンドが活かされています。
03年にリリースしたアルバム『Harsh Reality of Daily Life』ではタイトル通りのハーシュ要素が強まったダークでドープなブロークン・ビーツにインダストリアル~ニューウェーブのエッセンスも巧みに取り入れた楽曲を収録。当時はScornのインダストリアルにダブとヒップホップを掛け合わせるスタイルやRiow Arai氏のブレイクビーツ・スタイルに影響を受けていたとの事ですが、このアルバムでは既に彼等独自のスタイルを確立しています。


同年には日本のレーベル「Intikrec」からKowatabo(dDamage兄弟とLaurent Lafonとのユニット)とのスプリット・アルバム『 The Missing Link』をリリース。ジャズやファンクなどのサンプリングやカットアップを多用したファンキーなビートが大幅に導入された事によってヒップホップの要素が強まりFredのエッセンスが全面に出たアルバムとなっています。翌年にIntikrecがリリースしたコンピレーション『Remuzik』にはdDamageとFredのソロプロジェクトであるRudDeの貴重な楽曲が収録されていました。

同じくエレクトロとヒップホップを独自に解釈したフランスのエキセントリック・ラップユニット「TTC」とのコラボレーション作『Trop Singe EP』をClapping Musicからリリースした後、04年にPlanet-Muから名盤アルバム『Radio Ape』を発表。彼等が作り出したアブストラクト~ブロークン・ビーツのスタイルにグリッチやエレクトロニカの鋭さとパンクロック~ポストロックのエレメンツを混ぜ込んだ唯一無二の楽曲を作り上げおり、収録曲の「Pressure」や「Aeroplanes」、「Ink」、「Try Again」、「Tsunamiii」といった名曲を完成させています。
Fredのファンキーなグルーブ感とカットアップのセンスにJBのアグレッシブな側面とメロディメイカーとしての才能が開花した結果、様々なジャンルのリスナーやメディアから高評価を受けPlanet-Muの膨大なタイトルの中でセールス面でも上位に輝きdDamageのキャリアを一気にステップアップさせた重要なアルバム。
2005年には初来日し東京、大阪、神戸、金沢をツアー。まだ国内での知名度は高くなかったものの超パワフルなライブパフォーマンスでクラウドを魅了していました。


06年にはTsunami-AddictionからMF Doom、Bigg Jus(Company Flow)、Stacs Of Stamina、Mike Laddといった豪華ラッパーをフューチャリングに迎えたアルバム『Shimmy Shimmy Blade』を発表。Fredらしいマニアックかつスキルが高いラッパーのチョイスとJBの荒々しいボーカルを駆使したエレクトロ・パンクなトラックとが見事にマッチした傑作。ジャケットからも解る通りですが、dDamageの2人が最も影響を受けたアーティストの一人だというBomb The Bassのアルバム『Into The Dragon』へのオマージュとなっていてCD版にはBomb The Bassへの愛情と尊敬の念がギッシリと書かれたJBによる素晴らしいライナーノーツも封入されていました。

その後はKid606のTigerbeat6からダンサンブルなエレクトロ・チューンを纏めた『100% Hate』と、全米で200万枚以上を売り上げたDef Jam所属のギャングスタ・ラッパー「Young Jeezy」、Busta RhymesやKool G. Rapなど数多くの著名アーティスト達のプロデュースや共演で支持を受けるているNYのラッパー/トラックメイカー「Agallah」、アンダーグラウンド・シーンで壮絶な人気を誇るカナダのラッパー「Sin」をフィーチャーした『The Truth』を発表。この間にもFredはヒップホップのジャーナリストとして2冊の本を出版。JUICE Magazinなどのメディアでも活躍していました。

そして、2010年にはAscetic MusicからJon SpencerとBomb The Bass、Radioinactive、Mochipet、Christとのコラボレーションを収録した『Aeroplanes』をリリースし、そのタイミングで2度目となる日本ツアーを決行。前回よりも多くの都市でライブをおこないツアーを大成功させています。




大の親日家であるdDamageは来日する際には毒々しくてユニークのあるプロモーションビデオを公開していました。彼等が好きな日本のゲーム文化や過去に来日した時の日本でのライブ映像もふんだんに使われています。


2011年に中国のShanshuiからエレクトロ色を強めたアルバム『Brother In Death』をリリースし、アートワークはMHzのMatic-Log氏が担当。Murder Chnnelのコンピレーションへの参加や、NHK制作のドキュメンタリー 映画のサントラ『Shinbô (Tu Seras Sumo) – Original Soundtrack』を発表。JBは新たにCobraというバンドを始動させながらdDashとしてもアルバムをリリースし、FredはジャーナリストとしてNoiseyなどで活動をしていました。


2016年には久々となるdDamageの作品を2タイトル発表。Motorhead、Iron Maiden、Judas Priest、Black Sabbathなどのメタル~ハードロック・バンドの代表曲をカバーした『Brother In Death』と全編インストのアルバム『Fat Rules』をフリーダウンロードでリリース。2作ともスタイルは違いますがどちらもdDamageらしさが出ていながらも新境地を感じさせる内容でした。


そしてdDamageのニューアルバムのリリースが待ち望まれる中、Fredは2018年9月6日に46歳という若さで亡くなられました。ジャンルを超えて数多くのアーティスト達が追悼の言葉をFredに送っており、弟であるJBも自身のFacebookにて兄であるFredへの想いを語っていました。
FredがdDamageとして残した作品は常にフレッシュなサウンドと挑戦的なアイディアに満ち満ちており、それらの作品達は時が立っても変わらずに輝き続けるでしょう。