去年、イギリスのブレイクコア/ドラムンベース・アーティストのGore Techが参加してくれた日本文化に関するチャート記事「10 things about Japanese culture」の続編が公開!
今回は、圧倒的な技術と創造力を元に作られた異形のドラムンベース/ニューロ・サウンドで電子音楽シーン全体から支持を集めるボスニアの鬼才Adis KutkutことBillainのチャートを公開!
BillainはBad Taste Recordingsからリリースした『Colossus EP』やCritical Musicからの『Critical Presents: Binary Vol. 03』で当時盛り上がっていたニューロファンク・シーンに新たな方向性を落とし込み、独自のサイバー・ニューロ・スタイルでドラムンベース・シーンのトップ・プロデューサーとして君臨。その後も、RawtekkのリミックスやTeddy Killerzとのコラボレーションなどでもハイクオリティな楽曲を立て続けにリリースし、去年発表されたBillainとしてのフルアルバム『Nomad’s Revenge』では、ニューエイジやアンビエント、テクノやヒップホップの断片も混ぜ込んだストーリー性のあるシネマティックで壮大なサウンドに近未来的なアプローチによるモダンなドラムンベースを組み合わせた唯一無二な楽曲を披露し、ダンスミュージック以外のリスナーやメディアからも絶賛されていました。
芸術的なベースやビートのプログラミングとサウンドデザインは、IDMやグリッチなどの音響派からも高い評価を受けており、グリッチやエクスペリメンタルなスタイルにフォーカスしたサイドプロジェクト「Aethek」としても『1991 VG』という作品を発表し、Billegal BeatsやMethLabのコンピレーションにも参加。最近ではアメリカのレーベル「Renraku」やサイバーニューロ・コレクティブ「METNEM」と共に高度な電子音の技術とフレッシュなアイディアを駆使した新たなムーブメントを牽引しています。
映画『パシフィック・リム: アップライジング』へのサウンドデザイン提供や今後発表されるSFホラーゲーム『Scorn』のサウンドトラックを手掛け、その他にも様々なメディアと積極的に関わっていき、サウンドデザインによる無限の表現方法を提示し続けているBillainは、以前からAkiraや新世紀エヴァンゲリオン、攻殻機動隊のトリュビュート曲をSoundcloudで公開しており、日本のアニメやフィギュアへの思い入れが強く、今回依頼したチャートにはマニアックながらもアーティスティックな視点から日本の文化を分析し、愛情を込めて解説してくれました。
Billainを通して我々が気付かなかった日本の文化の側面も垣間見える非常に読み応えのある内容です!
1.ロボット工学
ロボット工学が、日本で自然に広まった文化的な感覚であるという事実をありがたく思っている。教育から最先端のロボット工学、工業からヒューマノイドとエンターテイメントまで、我々全てに刺激を与える、世界が尊敬すべきものであると思う。その存在感はアートサイエンスに感じられ、相撲や戦闘用ロボットから、アイスクリームロボットまで幅広いロールプレイがある。面白いものでは、藤原麻里菜が作るおかしなマシーン「無駄づくり」、Instagramで見て大笑いしたよ。それと、いつかお台場にある巨大なガンダムを操縦できるのを楽しみにしている(笑)
その他の興味深い発見では、対戦相手の裏をかいて色々な方法で勝つようにプログラムされている、相撲ロボットの試合を見て楽しんでいる。独創的なリサイクル(再生利用)とアップサイクリング(創造的再利用)のアイディアについては、Ikeuchi Productsの作品が大好きだよ。
2.士郎正宗と大友克洋のすべての作品
やはり最高傑作と言えば、1995年の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」だと思う。このタイプの未来的哲学は最高に優れている。我々がとても簡単に体験できそうな、未来世界の知性的な質疑応答を描写しているからだ。Production I.G.の石川光久氏に会うことができて本当にラッキーだったと思う。「Fiber Twist(2012年にRise AudioからリリースされたBillainの楽曲)」はあの当時、
その一方で、AKIRAがアニメーション業界に与えた影響については多くの人が知っている。わずかな希望しかない暗い未来予測、そして人間性がその全ての中心となっている。年齢を重ねるにつれ、もっともっと細かい部分を楽しんでいるよ。
3.芸術的共感覚 - 森本晃司によるKen Ishii「EXTRA」
Ken Ishiiの楽曲は、STUDIO 4℃の森本晃司が監督した彼のシングルPV「EXTRA」で知るようになった。当時、電子音楽にああいうビデオが使われるのはとても珍しいことだった。それは優れた抽象的な方法で音楽と繋げ、
4.ファッションブランド-TEÄTORA(テアトラ)
混沌とした予測と夢想的な効率の良さの間にある、僕をすごく驚かせてくれた日本のファッションブランド。テアトラは将来的に衣服に期待されるもの全てを象徴している。衣服の知的な簡素化は、ありとあらゆる意思決定と素材の筋道に見られる。テアトラの服と彼らのショップでさえ、音楽的な雰囲気が映画「
5.1000 toys と弐瓶勉
彼らのような素晴らしいクリエイターと仕事ができて、
6.日本語
僕はずっと日本語に惹かれていて、今でも真剣に習いたいと思っている。とても効率的で学術的な感覚に惹きつけられていたよ。かなり目に見えて技術的で、さまざまな適合する方法で完璧に配置されているように見える。これは他の語学にはあまり感じないんだ。おそらく、僕自身が専門的な知識を追求する技術者だからだろう。だから、まだ学習してもいないのに、ただメディアでたくさん見ただけで、単語を多く覚えられたのだと思う。初めて東京を訪れた時は、すごく役に立ったよ。
7.アートと仕事への評価
日本では、何かを一生懸命やったら、良い評価が得られると思う。反響があり、フォローされて真剣に受け止められるだろう。僕は日本に住んでいないから間違っているかもしれないけど、ヨーロッパよりも確実に尊重されていると思うよ。全てにおいて60%が尊重されていると言えるかもしれない。仕事に好奇心を持ってくれる人が多いから、異なる分野の人でも色々なコラボレーションに対して、もっとオープンなのだと思う。だから、もっとたくさんのコラボレーションが生まれて、アートの世界の至る所でおもしろい結果をもたらすのだと思う。 僕の日本での最初のリリースはKAIZAN RECORDSからで、僕の友人でもあるMC D2ことMasanori DamaのEP「NEO TOKYO 2019」に参加したんだ。この友情にとても感謝しているよ。
8.自然への理解
自然がどれほど重要で、新しいものを生み出すのにどう作用しているかを理解している都市はあまりないと思う。スタジオから出て、街を見下ろせる丘へ出かけて森の匂いで五感を刺激することがよくある。こうするとスタジオでの複雑な作業に集中することができるんだ。自然の中でよく絵を描くこともあるよ。日本人は何世代にも渡って教育を受け、密集した都市環境の中での自然の重要な役割を分かっているし、日本の公園や神社のあるエリアが大好きなんだ。朝倉文夫のアトリエ兼住居でもあった、台東区にある朝倉彫塑館を訪れたことがあるけど、自然庭園のある環境が、彼の作品にどう影響を与えたかがよく分かるよ。
9.ゲームとゲームクリエイター横尾太郎と小島秀夫
最高のライターが映画からゲームへどう変えたかについて、言うべきことは山ほどあるが、ゲームが原作である映画が増えて、単なる映画というよりも観客にもっと多くのことを与え始めていると思う。驚異的な世界観の「ニーア オートマタ」のクリエイターである横尾太郎は、
小島秀夫もまた、彼の夢を彼自身の制作会社で実現するために、創造性を自由にし、「DEATH STRANDING」というすごいものを作り上げた。ゲームの驚異を映画として書くことに加えて、この2人は音楽の重要性を理解している。これは今まで誰も経験したことがない、驚くべき没入型ゲームになるだろう。
10.コピックのマーカーとピグマ
さまざまなマーカーとアート素材のおかげで、描画からデザインまでの僕の創造的プロセスが容易になったことには、感謝してもしきれない。今でも大量のコピックマーカーの前でうっとりしているよ。前回東京へ行った時、2年分のコピックマーカーを買ったんだ。これで作業場で安心していられるよ。絵筆もいくつか買った。東京を旅する間中、描画への刺激をたくさん受け、色々なレーベルのアートワークの新しい依頼も受けたよ。