年に一度のハードコア・テクノの祝祭「THE DAY OF HARDCORE」特集の第二弾!ハイクオリティで独創性の高いマキナ~UKハードコア~シュランツ~ガバ/アーリー・ハードコアをリリースし、海外にも熱狂的なファンが多い「M-Project」のインタビューを公開!
このインタビューではM-Project氏の音楽的ルーツからマキナの歴史、海外でのプレイやTHE DAY OF HARDOCREの立ち上げについてなど、全ハードコア・ファン必読なお話を沢山聞かせてくれました!開催まであと少しとなったTHE DAY OF HARDCOREの予習を兼ねて是非チェックを!
THE DAY OF HARDCORE 2024 #TDOH2024
2024/08/03(土)@CIRCUS TOKYO
https://twipla.jp/events/609364
M-Project (Off Me Nut Records / Mokum Records)
https://x.com/mproject
2000年より活動をスタート。
国内外様々なパーティーやレーベルからのリリースを経て、現在Kutskiが主宰する「Keeping The Rave Alive」
英ベースラインレーベル「Off Me Nut Records」、オランダの老舗ハードコアレーベル「Mokum Records」を中心に活動。
UK HardcoreからEarly Hardcore、Bounceを主軸に「レイヴサウンド」を重点に置いたトラックをリリースし続けている。
Q. M-Projectさんの音楽的ルーツを教えてください。
スラッシュメタル、グラインドコア、メロコア、グランジ等々その当時の流れで聴いてました。
Pearl JamやStone Temple Pilots、NOFX等は今でもたまに聴いてますし、NOFXは新譜買ったりもしてます
Q. メタル~メロコア~グランジの要素はM-Projectさんのハードコア・スタイルにどういった影響を与えていると思われますか?
メロディーや構成等の引き出しの中の1つとしてある感じかな?
元々趣味でバンドやってたりしたんだけど、右肘に軽い障害があって泣く泣く打ち込みに移行したと言う過去があって、バンド的なサウンドには憧れと言うかなんとも言えない感情があります。
2022年に作った”Over The Top”は自分がサンプリングで構成したギターをVau Boyが弾き直してくれて良い感じにバンドっぽい音とガバを融合できました。最近のかなりお気に入りの曲の1つです。
Q. ハードコア・テクノとはどのようにして出会いましたか?
元々、BPMが速い音楽やキックが沢山鳴ってる音楽が好きだったので普通のテクノに物足りなさを感じてた中で出会ったのがハードコアでした。
スピードコア・ハードコアから入ってガバ、ハッピーハードコア、マキナ、初期ハードスタイル・・・とその時代で流行った物を貪欲に聴いてきた気がします。特にThe SpeedfreakのShockwave Recordingsと、Neophyte、Ruffneck、Bit Music(Makina)の出会いは自分の中で大きかったです。ハードコアに出会う前はSurgeonとかJoey Beltramとか聴いてました。
Q. ハードコア・テクノを聴き始めたとき、海外/日本のハードコア・シーンはどのような状況でしたか?
クイックジャパンの影響でデジタルハードコアやガバのイベントが盛んだったのと、ハッピーハードコアが全盛期の頃だったので色んな所で大きいパーティーが開催されてましたね。
海外の現場の様子はビデオ(笑)とか日本の雑誌とかでチェックするしかなかったんだけど、日本の雑誌はハードコアに関してはほぼ無視している状況でしたね。当時その状況に苛立ちを感じていました。
良く遊びに行っていたパーティーは、下北の屋根裏で開催されていた”Hyper Rich Pulse”と、恵比寿のミルクで開催されていた”Murder House”ですかね。”Murder House”はミルクの雰囲気と客層が凄い好きでした。
Q. SNSが発展する以前はどうやってハードコアの情報を得ていましたか?
10代の頃は新宿で働いていて、毎日レコード屋巡りしてました。そのころはまだインターネットも黎明期でBBS等でリリース情報や音源の入荷情報を拾うか、足で探すかという感じで。今と比べるとかなり面倒だったけど面白い経験でした。
良く行ってたレコード屋はシスコアルタ店、ディスクユニオン(新宿店、厚木店)、VINYL、ナットレコード等ですかね。パンクのレコードを扱う店でガバやハードコアのレコードが置いてあったりしたんだけど、自分が掘ってた店は他の人に荒らされないために秘密にしてました。
Q. M-ProjectさんがDJ/楽曲製作を開始されたのはいつ頃でしょうか?最初に購入した機材と作っていたジャンルは?
2000年頃です。当時ハードウェアの機材も所持してたんだけど、細かい所が気になって完成まで至らずと言う事が多かったです。
PropellerheadのReasonに乗り換えてそこから本格始動という感じでした。ハード機材全部売り払ってゼロからスタートと言う感じで。その後Cubaseに乗り換えて今もCubase使ってます。
最近はプリセットの販売やチュートリアル動画などで音の作り方を知る機会が大分増えて、プロデューサーにとってはかなり良い環境になってきたと思います。自分らが音楽制作始めた時期(90年代後半)は海外から取り寄せた音楽雑誌やビデオ、ネットで出てきた画像等で使ってる機材を調べてそれを買う、みたいな手探りな感じでした。
勿論音の作り方とか全然調べても出てこないので自力でしたね・・・。
Q. M-Projectの名前の由来とは?活動当初に目標としていたことはありましたか?
Makina-Projectとして発足しましたが、今は何でも屋になりつつあります。
(M-BeatとScot Projectをニコイチにしただけというのは秘密。)
活動当初目標にしていたBit MusicやスペインのMakinaレーベルからリリースすると言うのは2007年ごろ叶ったし、その後海外ツアーや海外リリース等を連発した事で大体は目標達成した感があります。
最近は昔好きだったレーベルからリリースすると言うのを目標にしていて、MokumやH2OHからのリリース等がその結果ですかね。昔好きだったテクノのレーベルから出すとかもやってみたいです。
Q. 日本のハードコア・イベントの特徴として一つのスタイルに特化したものより、メインストリーム~UKハードコア~テラーコア~クロスブリード~ガバなど様々なタイプのハードコアが共演するクロスオーバーなイベントが多いように思えます。M-Projectさんがハードコア・シーンに参入されたときからこのようなクロスオーバーなイベントがあったのでしょうか?
恐らくDJ Kawashimaが主催していたハードコアメジャーリーグがオールジャンルハードコアパーティーの先駆けだったと思います。
自分が主催するパーティーもジャンルをクロスオーバーするような内容になってますが、ハードコアメジャーリーグの存在が大きいと思います。
Q. M-Projectさんといえばマキナの歴史においても非常に重要な人物であると思います。M-Projectさんの視点からマキナの歴史と定義について教えてください。
Makinaの定義と言うのは時代で変わっていったので凄い難しいんです。
元々は3デッキで早回しで繋いでいたテクノの事を指していたのですが、徐々に速いスペイン産ハードコアテクノと言う今一般的にイメージしている様なジャンルを指す様に変わってきました。TeknoからHardtekに変わってった流れと少し似ている気がします。なので、2000年初頭ぐらいまではMakinaのコンピにはトランスやジャンプスタイル、リバースベース系のテクノ等色んな楽曲が入っていました。
最初に聴いたMakinaは友達からたまたま借りたProfessional DJ’s Volumen 2 (Tempo Music/1999年リリース)の
ディスク4のTechno Session。随分後に気がついたんだけどPastis & Buenriのミックスでした。
Q. M-Projectさんがマキナのプロデューサーで特に影響を受けたのは?
Dj Konik、DJ Ruboy、Raul Lokuraあたりかな。
Q. M-Projectさんはマキナを日本のハードコア・シーンに定着させた大きな功績があります。どういった戦略のもとにマキナを日本に紹介していったのでしょうか?定着させるまでに苦労したことは?
特に戦略を持って始めた訳ではないんだけど、スペインのBIT MUSICからリリースした時あたりから流れが大きく変わった気がします。
後、コンピシリーズ”UNDERGROUND MAKINA CONNECTIONZ”を始めた頃から日本人のMakinaリスナーが増えてきた実感があります。このシリーズを始めたきっかけが「現地のリリースが無くなってきたので自分らでリリース始めよう」「SUPER EUROBEATのやり方を見習って現地人に曲を作ってもらおう」
みたいな感じだったんですが、日本人だけでなく世界的にもMakinaを聴く人が増えたのが嬉しかったです。
Underground Makina Connectionz – The Complete Edition (UMC 01-21) – Digital Album
https://m-project-jpn.bandcamp.com/merch/underground-makina-connectionz-the-complete-edition-umc-01-21-digital-album-dl-link-in-the-message
Q. スペインでマキナのリリースが減ってしまった理由はなんだったと思われますか?近年、マキナはどういった状況になっているのでしょうか?
所謂職業プロデューサーみたいな人達が曲を書いてた部分もあって、シーン自体が下火になると一気にやめて他のジャンルに行ってしまう、みたいな海外では良くあるやつだったと思います。近頃は一時期UKでMakinaが流行ってて、また徐々に曲のリリースも世界的に増えてきていると思います。
Q. ご自身がリリースしたマキナ・トラックで最も気に入っているものとは?
M-Project feat. MC Steal – Million Miles
Q. M-Projectさんは常に若い世代のプロデューサー/DJにイベントへの出演やリリースのチャンスを与えられていますが、こういったフックアップにはどういった想いがあるのでしょうか?
通ってきたジャンルがジャンルだけにさっぱりブッキング貰えなかった時期が長くて、しょうがなく自分でパーティーをオーガナイズしてました。
そういう経験から、なるべく色んな人にチャンスを、と言うのは大袈裟だけど、頑張ってる人はちゃんと評価されるべきだなと思います。
Q. 今まで見てきたプロデューサーの中で最初から特別だと感じた方は?
DJ TECHNORCH、Tanuki、Akira Complexかな。
Q. 海外でも頻繁にプレイされていますが、最初の海外ギグはどこでしたか?それはどういった経験となりましたか?
最初に出演したのがシカゴのアニメフェス、ANIME CENTRALの会場で行われた室内レイヴです。2000人ぐらいの人がフロアに居たんだけど、消防法の関係とかで外にさらに500人ぐらい並んでて。そういう規模のパーティーで回す機会がそれまで無かったのでとても新鮮でした。
Q. 去年はBANG FACE WEEKENDERにご出演されましたが、どういったフェスティバルでしたか?特に印象の残った他の出演者は?
BANG FACEの1週間ぐらい前にタイムテーブル送られてきて初めてメインステージでプレイするのを知って(笑)
あんまり期待してなかったのにメインアクトじゃん!って。
出番まで異様に長くて、宿まで遠かったのもあってパーティー会場に居るしかなかったんだけど、飲み過ぎてしまって・・・。楽しかったなぁ、てのだけ覚えてます(笑)。会場のPAが異常に良くて、何かかっててもカッコイイし、結構ストイックなドラムンベースとかも良く聴こえて。戻ってきてから音に対する接し方が大分変わりました。
あまり他のDJのセットはじっくり聴かなかったんだけど、DJ SCOTCH EGGは行く前から観るの決めてて最初から
最後まで堪能してきました。本人には会えずで残念。
そう言えばBANG FACEの出番前にヘッドフォンが壊れて、前半ヘッドフォンから音出ない状態
でやってました(汗) なんでこのタイミング???って。
Q. 2010年代後半からアーリー・ハードコアにフォーカスされていますが、M-Projectさんにとってアーリー・ハードコアの魅力とはなんでしょうか?
自分の中で原点であり、今のスタイルの骨格を形成したであろう偉大なジャンルです。昨今909ガバキックが再評価されつつあるのがとても嬉しいです。
Q. アーリー・ハードコアのプロダクションにおいて重要視されていることはなんでしょうか?
新しい要素を必ず入れる、現代のマスタリング基準で音をブラッシングする、かな。
Q. M-Projectさんが近年アルバム/シングルをリリースしているオランダのハードコア・ガバ・レーベル「Mokum Records」とは、どのようにして繋がり所属することになったのでしょうか?
丁度A&Rが変わったタイミングでこちらから連絡入れたら即EPを出す話になりました。
『Fucking Hardcore Tokyo』は向こうからフランチャイズでコンピ作らないか?と言う話を受けて始めました。
1枚目のコンピ出した辺りでMokum RecordsのWebsiteを更新するタイミングがあったんだけど、アーティストとして所属と言う事になった次第です。
Q. 去年リリースされたアルバム『Over The Top』でリメイクをされたM-Projectさんの代表曲である「After World」について教えてください。この曲はどういった背景があり生れたのでしょうか?
「死んだ後も聴きたい曲」みたいなテーマで作った気がします。
NirvanaのPennyroyal Teって曲の中で”Give me a Leonard Cohen afterworld / So I can sigh eternally”って
歌詞があって、そこから着想を得た感じですね。
Q. AIの存在はハードコア・シーンにおいてどういった影響を与えると思いますか?ご自身のプロダクションにAIを用いることは将来的にありそうでしょうか?
色々なサンプルパックやプリセットを既に多用してるのもあって、AIである程度作るのはあまり抵抗が無い気がします。ただ、部分的な要素としてAIを使うのはアリだと思うけど、曲全体に対して使うのは無しですね。
Q. M-Projectさんは20年以上に渡ってプロデューサー/DJ/レーベル・オーナーとしてハードコア・シーンに関わっています。シーンに長く関わることでハードコアへの情熱や愛情はどのように変化していますか?
ハードコアや自分のやってる音楽を広めたい、みたいな初期衝動はシーンとリスナーが大分成熟していった中で消えていってて、最近は作りたい物を作り続ける欲求みたいなのが大きいです。
Q. 日本のハードコア・シーンを客観的に見たとき、海外にはない日本独自のものとはなんだと思われますか?
お酒で盛り上がってるとか、ちゃんと音楽を聴きに来てるとか?国やイベントの規模で全然違うのでなんとも言えないけど、アメリカの小規模なレイブ系のパーティーはノリが凄い日本に近い感じがしました。
Q. M-ProjectさんはTHE DAY OF HARDCORE(以降TDOH)の運営に関われていますが、TDOHを立ち上げた経緯について教えてください。
なんか思いついた勢いで記念日協会に申請したのは覚えているんですが、詳細は失念しました!
ただ、記念日に合わせて大きいパーティーをしたらハードコア的に目立つんじゃね?って初期衝動だけ覚えてます(笑)
何せ始めた当初(2006年)は今と比べるとハードコアテクノの認知度はそこまで高くなかったので・・・・。
Q. TDOHは入場無料で開催されていますが、なぜ入場無料での開催を続けられているのでしょうか?
若い頃お金が無くて行けなかったパーティーが多くて悔しかったと言うのと、きっかけがあればハードコア好きになってくれる人がもっと居るはずだ、と言う謎の信念から。実際TDOHでハードコアに出会ったって人の話をここ最近良く聴くので間違ってなかったのかもと。
そもそも万人受けするジャンルでは無いので色々なきっかけを作りたいと言うのが一番の本音です。
Q. これまでのTDOHで最も印象に残っている出来事とは?今年のTDOHの見どころはなんでしょうか?
全部の回が最高だったのでどれってのは難しいですが、2016年のAlex Prospect来日回かな。Alex Prospectが凄い楽しそうにDJしているのが印象的でした。今年はAKIRADEATHが6年ぶりに復活と言う事で個人的に凄い楽しみです。
Q. 現在、M-Projectさんが注目しているプロデューサー/レーベル、またはサブジャンルは?
Slugnoid、Former Hero、The Resonant Squad、Death Punchあたりかな。サブジャンルと言うかRWCがやってるFunkoTempoが凄い良いです。最近良く聴いてるのはUnprocessed。
Q. 今後のスケジュールを教えてください。
TDOH2024合わせでシュランツのアルバムを1枚出すのと、年内中にもう1枚アルバムリリースを
考えています。
Q. 最後に読者の方にメッセージを
読んでる方が何かやってるとは限らないのは分かった上でお話します。
自分は何か特別に才能があると言う訳ではなくて、「やり続けられる」と言う才能があっただけだと思ってます。そのおかげで活動初期の頃の目標は大体達成しました。皆さんも生きていく中で色々な壁に向き合う事があると思いますが、是非負けずに挑み続けてみて下さい。(ある程度で損切りするのも大事ですが!(笑))